抗血小板薬2剤併用療法後のアスピリンまたはクロピドグレル単剤服用の比較

現在日本でのおもな死因は、がんに続いて心臓病が2位となっていて、今なお増加傾向にあります。

とくに冠動脈疾患は、心臓病のなかでも患者さんの数が多い疾患です。80万人以上のかたが治療を受けているといわれており、効果的な治療法が必要とされています。

冠動脈疾患とは

冠動脈疾患は、動脈硬化により、心臓に酸素やエネルギーを送る役割をしている冠動脈の血流が流れにくくなる(狭窄)または流れなくなる(閉塞)ことで栄養が上手く運搬されず、心筋が虚血状態に陥る疾患です。

狭窄することにより、胸の痛みなどの症状を生じる疾患を狭心症とよび、さらに狭窄がすすみ詰まりがひどくなると、心臓の一部が壊死してしまう心筋梗塞を引き起こします。

冠動脈疾患の治療は主に薬物治療、経皮的冠動脈形成術(PCI)、冠動脈バイパス手術が行われます。

PCIはさらにいくつかの方法に分けられますが、狭窄した血管をバルーンでひろげ、薬剤が塗布されたステントを留置する治療法がよくもちいられます。ステントにより血管を機械的に保持し、細胞増殖を抑える薬剤により、再狭窄が起こるのを防ぐ治療法です。

薬剤溶出ステントの問題点


薬剤溶出性ステント photo by WIKIMEDIACOMMONS

冠動脈疾患の治療に大活躍している薬剤溶出ステントですが、問題もあり、留置したステント内に血栓が形成されるリスクが高いことが懸念されています。血栓症が発生するのはまれなケースと言われていますが、血栓症は命に関わるため、ステント留置後、薬により予防することが一般的です。

薬はおもに、血液を固まりにくくする作用のある抗血小板薬が処方されます。抗血小板剤2剤併用療法(DAPT)がおこなわれることもあり、代表的なものでクロピドグレル(商品名;プラビックス)とアスピリン(商品名;バイアスピリン)の組み合わせがあります。

ただ、DAPTも出血性リスクが上昇するなどの問題から、継続期間やDAPT終了後の薬物療法についてなど、現在にいたってもさまざまな議論が続いています。

そのなかで、2016年に発表された論文「Clopidogrel Versus Aspirin as an Antiplatelet Monotherapy After 12-Month Dual-Antiplatelet Therapy in the Era of Drug-Eluting Stents」では、推奨されている期間である12カ月間のDAPT施行後のアスピリンまたはクロピドグレル単剤服用の有効性と安全性を比較しています。

アスピリンとクロピドグレルの有効性と安全性の比較

薬剤溶出ステントを留置後、12カ月におよぶDAPT(アスピリン+クロピドグレル)をうけた患者さんを対象に、アスピリン服用群とクロピドグレル服用群に分け、36か月間の心臓死、心筋梗塞、脳卒中などの発生数を比較しています。

その結果、心臓死、心筋梗塞、脳卒中を合わせた発生率は、アスピリン服用群で3.8%、クロピドグレル服用群で2.6%でした。心筋梗塞の発生率のみに着目すると、アスピリン服用群で1.4%、クロピドグレル服用群にて0.5%となりました。出血のリスクについては両群とも同等の結果となりました。

まとめると、DAPT後の抗血小板薬単剤投与はアスピリンに比べて、クロピドグレルのほうが冠動脈疾患の再発を抑制することが示唆されました。

調査結果のまとめ


写真はイメージです。 photo by Wikipedia

冠動脈疾患は、命につながる危険な疾患のひとつであり、症状の改善および再発を防止する有効な治療法が求められています。

今回の論文により、DAPT後の抗血小板薬の単剤服用はアスピリンよりもクロピドグレルのほうが、2次予防としてすぐれることが報告されました。

今後、他の抗血小板薬についても報告されることが見込まれます。いまだ議論の多い分野ですが、効果的で安全な治療法が確立されることが期待されます。

 

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