胸の痛みは心配になりますよね
みなさんは、いきなり、胸が痛くなったことありませんか。
頭の中で「心臓や肺の病気なの」と不安になるのではないでしょうか。ましてや、子供が「胸が痛い」というと、お母さんは心配でしょうがないですよね。
ここで、胸が痛いと来院した子供の、問診風景を覗いてみましょう。
写真はイメージです。 photo by isakarakus
元気そうな12歳の男の子が心配そうな母親と一緒に来院。
症状は、「半年ぐらい前から、突然、胸が刺すように痛くなる」と
の訴えです。
先生:「今も痛いのかな」 子供:「痛くないよ。先生」 先生:「胸のどのあたりが痛くなるのかな。指でさせるかな」 子供:「左の胸のこのあたりだよ」と左胸のやや下を指でさしました。 先生:「痛いのはここかな。痛かったら言ってね」と子供が指した場所を指先で軽く押します。 子供:「そこ!」と痛がるそぶりは見せません。痛む場所は指先程度の大きさのようです。 先生:「いつ、痛くなるの」 子供:「何もしてない時」 先生:「痛くなるとずっと痛いのが続くのかな」 子供:「少し、ガマンしていると、すぐに、痛くなくなるよ」とニコッと笑います。 先生:「毎日、痛くなるのかな。それとも、週に何回ぐらい痛くなるのかな」 子供:「毎日じゃないよ。週1回・・・くらいかな」と考えながら答えました。 先生:「胸が痛い以外に、息がくるしいとか、倒れたりしたことあるのかな」 子供:「う~ん。痛いだけだよ。息を強く吸うと痛みが強くなるかも・・・」 |
お母さんに聞いたところ、いままで、大きな病気はありません。
聴診器による聴診では異常所見なし。体温は36.5度、脈拍は正常範囲、血液の酸素飽和度は99%で問題なし。心電図も正常な波形です。「痛み」以外の異常な所見は見られませんでした。
ここまで読んで、みなさんはどのような病名を思い浮かべましたか。
医師の診断は「Precordial Catch Syndrome-前胸部キャッチ症候群」でした。
Precordial Catch Syndromeとは
「Precordial Catch Syndrome」を御存知でしょうか。あまり聞いたことがない病気ですよね。
発症年齢・性別
・6歳ごろ~19歳ごろまでの小児期や青年期に多くみられます。
・男女で性差はありません。
症状
症状が起きるのは
・多くは安静時や軽くからだを動かし時に起こります。就眠中はありません
どのような症状か
・痛みは突然起こり、突然におさまります。
・刺すような鋭い痛みです。押しても痛くありません。
・痛みは長く続かず「30秒~3分」程度です。
・痛みの範囲は左胸の乳頭部下部が多く、はっきりと指でさすことができる狭い範囲です。
・深吸気すると痛みが強くなる傾向があります。
写真はイメージです。 photo by pixabay
・毎日、痛くなることはありません。人によって異なりますが、週1~2回程度が多いです。
・痛み以外に、これといった症状はみられません。
・心電図や胸部レントゲンで異常な所見は見られません。
原因
・はっきりとした原因はわかっていません。姿勢の悪さや肋間筋由来の痛みとも言われています。
予後
・予後は良好です。痛みは自然に消失します。とくに、治療は必要ありません。
ただし、以下の場合には、他の病気の可能性があります。さらに詳しい検査が必要になります。
・痛みが長く続く、痛みの範囲が広い。
・失神、動悸、息切れなどがある 。
・今までに、喘息や心疾患にかかったことがある。
・発熱を認めたり、呼吸音が異常である。
・痛む場所に発疹ができている。
なるべく早い診察を
いかがだったでしょうか。「胸の痛み」をひきおこす病気を紹介しました。
今回の病気は、特に治療のいらない良性の病気でしたが、「胸の痛み」を生じる病気には命にかかわる病気もあります。
いつもと調子がちがうな、なんか気になるなとおもった時には、はやめの受診をこころがけてくださいね。
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