非心臓性胸痛に対する認知行動療法の効果と費用対効果

認知行動療法は欧米でうつ病や不安障害などの精神障害によく用いられる治療法ですが、さまざまな疾患で効果を発揮するのではと期待されています。

認知行動療法は柔軟な考えをみにつけストレスをやわらげる

認知行動療法は精神療法の一種で、ものの受け取り方や考え方(認知)に働きかけて気持ちを楽にする治療法です。

強いストレスをうけているときやうつ状態のときなどは悲観的な考え方となり、認知にゆがみが生じ、不安感などが強まります。認知行動療法では柔軟な考え方を身につけていくことで、ストレスを和らげる方法を学んでいきます。


認知トライアングル photo by Wikipedia 

うつ病や不安障害、不眠症、統合失調症などさまざまな精神疾患に効果がみとめられています。

欧米ではメジャーとなっている認知行動療法ですが、精神的な病気のほかにも、痛みに対しても効果を発揮するのではないかと考えられています。

認知行動療法の非心臓胸痛への効果

非心臓性胸痛もそのひとつです。非心臓性胸痛は、心臓以外の原因により引き起こされる胸痛のことをさします。逆流性食道炎など原因はさまざまですが、健康や病気への不安な感情も原因のひとつであると考えられています。

いままでの研究では、認知行動療法が比較的短期間で効果を発揮する可能性があると報告されていましたが、他の治療法とくらべて治療の費用とその効果の関係については研究されていませんでした。

Clinical and cost-effectiveness of adapted cognitive behaviour therapy for non-cardiac chest pain: a multicentre, randomised controlled trial」では、非心臓性胸痛に対する認知行動療法の効果および費用対効果について報告しています。

心臓クリニックや救急医療サービスを繰り返し利用している非心臓性胸痛を有する患者さんを対象に、診療所ごとの標準的なケアを行う群と認知行動療法を行う群に分け、6カ月目および12カ月目に健康不安症状の変化について評価を行っています。また、治療にかかった費用についても解析が行われています。

認知行動療法の今後に期待


写真はイメージです。 photo by PEXELS

その結果、標準的なケアをおこなった群と認知行動療法をおこなった群で、健康への不安症状の変化をしめすスコアの変動に、有意差はありませんでした。認知行動療法を受けた群では入院日数、来院の予約、救急センターの利用が減少し、一人あたりの総費用が£1500弱低くなりましたが、こちらも有意な差ではありませんでした。

これらの結果から、筆者は現在の病院組織では認知行動療法の導入は難しいものの、潜在的な費用対効果をもっているとも捉えられる結果となり、今後も続けていく価値のある研究であると記しています。

認知行動療法は精神障害だけではなく、さまざまな疾患への効果が期待されています。今後、難治性や原因が定かではない疾患への応用などに注目が集まるところです。

 

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