免疫チェックポイント治療薬 抗PD-1抗体ペムブロリズマブの一部治験中止

日本での死因第一位がガンであるように、医療が発展している現在でも、世界中でガンにより命をおとす方は大勢いらっしゃいます。そのため、ガンに対する効果的な薬が求められていて、開発が進められています。

免疫チェックポイント治療薬とは

治療薬をえらぶ際には、ガンの種類や進行度などさまざまなことを考慮して決められます。現在では、数多くの治療薬が発売されており、選択肢が広がってきています。

最近では、ガン細胞に直接作用する薬のほかにも、免疫細胞に作用し、ガン細胞への攻撃を促す治療薬が開発され、注目されています。このような作用をもつ治療薬を免疫チェックポイント阻害薬といいます。

免疫チェックポイント治療薬は、作用部位によってさらにいくつかに分けられますが、代表的なものに小野薬品から発売されているニボルマブ(商品名;オブジーボ)やメルク社から発売されているペムブロリズマブ(商品名;キイトルーダ)という抗PD-1抗体薬があります。


PD-1を同定した本庶佑氏 photo by Wikipedia

ガン細胞では、免疫細胞の攻撃をうけないようにPD-L1という物質をだしていて、PD-L1が免疫細胞のPD-1に結合すると、免疫細胞の働きが抑制されることが知られています。抗PD-1抗体は、PD-L1がPD-1に結合するのを防ぎ、免疫細胞の働きを活性化することで、ガン細胞を攻撃し、死滅させる薬です。

ニボルマブ、ペムブロリズマブとも悪性黒色腫および非小細胞肺ガンに適応があり、さらにニボルマブでは腎細胞ガン、古典的ホジキンリンパ腫、頭頚部ガンへの適応も承認されています。

現在、他のガンへの適応追加をめざして研究がすすめられています。

ペムブロリズマブの治験が一部中止に

さまざまなガン治療に効果が期待されている免疫チェックポイント阻害薬ですが、2017年6月、FDAからペムブロリズマブの一部治験保留命令が出され、今後の動向が注目されています。

保留命令をうけたのは多発性骨髄腫を対象に行われていた3件の治験であり、ペムブロリズマブ投与群にて、より多くの死亡例がみられたとして、患者さんの利益よりもリスクが上回ると判断されました。

対象となった3件の治験は、以下の通りです。

  • 難治性または再発難治性多発性骨髄腫患者さんに対する、ペムブロリズマブ+ポマリドミド+低用量デキサメタゾンの3剤併用とポマリドミド+低用量デキサメタゾンを比較した第3相試験
  • 未治療の多発性骨髄腫患者さんを対象にペムブロリズマブ+レナリドミド+低用量のデキサメタゾンの3剤併用とレナリドミド+低用量のデキサメタゾンを比較した第3相試験
  • 多発性骨髄腫患者に対するペムブロリズマブのバックボーン治療との併用を調べた第1相試験

メルク社は今回の命令を受け、3件の治験を中止することを発表しています。メルク社ではその他にもペムブロリズマブを用いた研究を行っていますが、3件の治験以外は継続する意向をしめしています。

死亡数や死因など詳細な情報については発表されていません。

ペムブロリズマブの投与には注意が必要

現在、悪性黒色腫や非小細胞肺ガンの治療に用いられていますが、ペムブロリズマブにより免疫反応が過度になりさまざまな症状が発現する可能性があることから、投与後は十分な観察を行うよう注意をうながしています。

また、間質性肺炎や甲状腺機能異常、下垂体機能異常、副腎機能異常などが発現するリスクがあるとして注意をよびかけています。


写真はイメージです。 photo by dlmiler

薬は病気を治療するのに不可欠である反面、つねにリスクが伴います。そのため、効果だけではなく、リスクを認識することも大切です。

今回、リスクが高いとしてペムブロリズマブの治験が一部中止となりましたが、さまざまなガン治療に成果をあげる可能性を秘めていることも事実です。今後も免疫チェックポインド阻害薬の動向に注目です。

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