新規抗てんかん薬ラコサミドとカルバマゼピンとの比較

日本では、ここ10数年のあいだに新しい抗てんかん薬が次々と承認され、今までコントロールが難しかった患者さんの症状改善に一役買っています。発売当初は、従来の抗てんかん薬との併用療法のみ適応となっていましたが、単剤療法が追加適応となる新規抗てんかん薬も増えてきており、さらなる活躍が期待されています。

薬物治療の動向

 現在日本では100万人以上のてんかん患者さんがいると言われており、長期的な治療が必要となっています。治療の基本は薬物療法であり、多くの患者さんが適切な治療により良好な経過をたどる一方で、約20%の患者さんは、従来の薬では十分な効果がえられない難治性のてんかんを患っています。


写真はイメージです。 photo by pixabay 

てんかんは大きく分けて全般発作と部分発作に分けられ、このうち部分発作は全体の約60%を占める、高頻度にあらわれるてんかん発作です。現在、部分発作の薬物治療は、第一選択薬としてカルバマゼピンが推奨されています。カルバマゼピンは、ナトリウムチャネルを阻害し、神経細胞の興奮を抑制する作用をもつ薬です。

カルバマゼピンを服用しても十分な効果が得られない場合や、副作用が発現する場合などには、第二選択薬としてフェニトインやバルプロ酸ナトリウム、ゾニサミドが用いられてきました。

てんかんの治療では単剤投与が基本となりますが、単剤投与では症状が十分改善しない場合に多剤併用が行われることがあります。その際、併用療法にのみ適応がある新規てんかん薬の使用も考慮されてきました。

しかしながら、最近では新規抗てんかん薬の単剤投与、幅広いてんかん型への有効性も確認されており、ラモトリギンやレベチラセタムのように単剤投与が承認される新規薬も出てきています。このような流れにより、単剤投与が承認された新規抗てんかん薬は部分発作や全般発作の第二選択薬として挙げられるようになっています。海外のガイドラインでは新規抗てんかん薬が第一選択薬となっているところもあり、単剤での使用が広がってきています。


写真はイメージです。 photo by  pixabay

ラコサミドとカルバマゼピンの比較 

新規抗てんかん薬として、日本で2016年に承認されたのがラコサミドです。ラコサミドは従来のナトリウムチャネル阻害薬と機序が異なり、チャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進することで、活性化できるナトリウムチャネルの割合を減らし、神経の興奮を抑制する薬です。

現在は、二次性全般化発作を含む成人の部分発作の併用療法にのみ適応が承認されています。しかし、最近では単剤での有効性をしめす論文も発表されています。

2017年1月に発表された論文「Efficacy, safety, and tolerability of lacosamide monotherapy versus controlled-release carbamazepine in patients with newly diagnosed epilepsy: a phase 3, randomised, double-blind, non-inferiority trial」では、現在、部分発作の第一選択薬であるカルバマゼピンとラコサミドとの有効性、安全性の比較を行っています。

16歳以上の新規にてんかんと診断された患者さんを対象に、カルバマゼピンCR服用群(開始用量200mg/日、維持用量400mg/日)とラコサミド服用群(開始用量100mg/日、維持用量200mg/日)に分け、6カ月にわたる解析を行っています。てんかん発作がおきた場合にはカルバマゼピンは800mg/日もしくは1200mg/日まで増量し、ラコサミドは400mg/日もしくは800mg/日まで増量しています。

6カ月の評価期間を終了した割合はカルバマゼピンCR群で70%、ラコサミド群で74%でした。その中で発作が発現しなかった割合は、カルバマゼピンCR群91%、ラコサミド群90%となり、差はみられませんでした。有害事象はカルバマゼピンCR群で75%、ラコサミド群で74%の患者さんにみられ、そのうち重篤な副作用はカルバマゼピンCR群で10%、ラコサミド群で7%みられました。カルバマゼピンCR群では16%、ラコサミド群では11%の患者さんが副作用のため服用継続が困難となりました。

これらの結果から、ラコサミドがカルバマゼピンと同等の有効性をもっており、単剤での第一選択薬にもなり得ることが示唆されました。

 

てんかんは100人に1人は発症するといわれるほど身近な疾患であり、効果的な治療薬が求められています。最近では日本でも、新規抗てんかん薬の単剤療法の承認が進んできており、治療の選択肢が広がってきています。今回、ラコサミド単剤療法の有用性が報告され、今後の動向に注目が集まります。

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