新機序の抗てんかん薬「ビムパット®」

てんかんは幅広い年齢層でみられる疾患ですが、おもに3歳以下の子供と高齢者に多く発症します。100人中1人にみられるといわれる疾患であり、決して珍しい疾患ではありません。多くの場合、薬物療法など適切な治療によりコントロールが可能となりますが、中には十分に発作をコントロールできない薬剤抵抗性のてんかんを患う患者さんもおり、より効果的な薬の開発が求められています。


写真はイメージです。 photo by pixabay

てんかんの分類

てんかんは、「脳の慢性疾患であり、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで起こる反復性の発作を特徴とし、さまざまな臨床症状や検査所見がともなう」と定義されています。

てんかん発作は大きく分けると、全般発作と部分発作に分類されます。

全般発作は、脳全体が一気に過剰な興奮状態になることにより起こる発作です。一方、部分発作は、脳の一部分から過剰な興奮が起こります。

全般発作、部分発作ともに、症状によりさらに細かく分類され、全般発作では全身の硬直、意識消失に引き続き、けいれんが起こる強直間代発作や、ボーとなり一時的に意識を失う欠神発作、全身や手足がピクっとするミオクロニー発作などに分けられます。部分発作は、意識が保たれている単純部分発作と、意識消失が起こる複雑部分発作に分けられます。

てんかんの治療薬

てんかんの治療は、てんかんの種類や患者さんの病態に合わせて適切な治療が選択されます。おもに、薬による治療が中心となり、その他、手術や食事療法が行われることもあります。

薬は大きく分けて、興奮系の活性化、伝達を抑える作用もつ薬と、興奮を抑制する系を強める薬に分けられます。

興奮系の抑制に働く薬は、神経細胞の興奮や伝達に関与するナトリウムイオンやカルシウムイオンの働きを抑えることで、てんかん発作の治療に効果をあらわします。また最近では、興奮系であるグルタミン酸神経系を抑制する作用やシナプル小胞タンパクに結合し、神経伝達物質の放出を調節する作用をもつ薬も発売されています。一方、抑制系の増強に働く薬は、興奮を鎮めるGABAの働きを強め、クロライドイオンの流入を増やす作用を有しています。

てんかんの種類によっては、逆に症状を悪化させてしまう薬もあるため、患者さんに合った抗てんかん薬を選択することが大切となります。

 


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治療抵抗性の部分発作に対する新しい抗てんかん薬

てんかん患者さんの約80%は適切な治療により良好なコントロールを得られると言われていますが、中には既存の薬では十分な効果が得られない患者さんもいます。そこで2016年8月に発売されたのが、「ラコサミド(商品名ビムパット)です。

ラコサミドは、他のてんかん薬では十分な効果がみとめられない成人の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対して、他の抗てんかん薬と併用して使用します。

ラコサミドは電位依存性ナトリウムチャネル阻害薬に分類されますが、既存のナトリウムチャネル阻害薬とは異なる機序で働くことから、新機序薬として注目されています。

従来の薬は数ミリ秒レベルの急速なナトリウムチャネル不活性化を促す作用でしたが、ラコサミドは数秒以上のレベルでの緩徐な不活性化を選択的に促進します。緩徐な不活性化を促進することにより、ナトリウムチャネルが再び開くまでに時間がかかるため、活性化できるナトリウムチャネルの割合を減らすことができ、これまでの薬よりも強い興奮抑制効果が期待されています。

ラコサミドは他のナトリウムチャネル阻害薬と同じく、浮動性のめまいや眠気などの副作用報告がされていることから、服用の際には注意が必要です。


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てんかんは、治療により良好な経過をたどる患者さんも多い一方で、治療を行っても十分な効果がみとめられない患者さんもいるのが現状です。今回、薬剤抵抗性をしめす部分発作に対して新機序の薬が発売となり、今後の治療効果に期待が集まっています。

 

 

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