すい臓がんの早期発見が可能となる血液検査法

現在日本では、約4万人の方がすい臓がんに罹患していると報告されています。すい臓がんは初期の段階では気付きにくく、発見されたときには治療が困難な状態まで進行しているケースも多くみられます。

治癒には早期治療が大切となりますが、自覚症状がほとんどないことや、早期のすい臓がんを特定する有効なバイオマーカーが存在しないことなどから、早期発見は難しいのが現状です。そのため、早期にすい臓がんを発見する検査方法の開発がすすめられています。


写真はイメージです。 photo by Illust AC

すい臓がんについて

すい臓がんは、すい臓がんの家族歴がある方や家族性膵がんの家系の方、遺伝性乳がん卵巣がん症候群やPeutz-Jegherss症候群などの遺伝性疾患をもつ方、糖尿病や慢性膵炎、肥満、すい嚢胞、すい管内乳頭粘液性腫瘍の合併症がある方、喫煙・大量の飲酒をする方、塩素化炭化水素曝露に関わる職業の方に発症しやすいといわれています。

初期の段階では症状はほとんどありませんが、進行が早く、他の臓器へ転移や浸潤しやすい特徴があります。進行すると、黄疸や上腹部痛、体重減少などの症状がみられます。予後は悪く、5年生存率は10%以下といわれています。

すい臓がんが疑われる場合、血液検査や腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などさまざまな検査が行われ、診断が確定します。

血液検査では、アミラーゼやエラスターゼなどの膵酵素や、CA19-9、CEA、Span-1、DUPAN-2などのバイオマーカーの測定が行われます。バイオマーカーのうち、CA19-9は、すい臓がん患者さんの生存期間と相関するという報告や再発診断に有効であるとの報告があり、経過の把握に有用とされています。

早期発見が可能となるバイオマーカー

しかし、これらのバイオマーカーは、ある程度進行しないと異常値をしめさないことが多く、早期のすい臓がんの検出には不向きでした。そこで、「Detection of early pancreatic ductal adenocarcinoma with thrombospondin-2 and CA19-9 blood markers」では、早期発見が可能となり得る血液検査方法を開発し、報告しています。

この研究では、末期すい臓がん患者さんのがん遺伝子を再プログラミング化することで、幹細胞様の細胞へもどすことに成功しており、この方法を使い、すい臓がんの初期の段階から進行していく過程を観察しています。作成したすい臓がん細胞の分泌タンパク質を同定した結果、初期の段階から「thrombospondin 2(THBS2)」が分泌されていることを特定しました。

各ステージのすい臓がん患者さんの血漿サンプル、および他のすい臓疾患、健康人の血漿サンプルを回収し、解析した結果、THBS2は初期のすい臓がんを含めすべてのステージのすい臓がんサンプルから検出されました。THBS2は切除可能となるステージ1のすい臓がんからも容易に検出されました。また、CA19-9と組み合わせることで、識別の性能が高くなり、すべての段階のすい臓がんを正確に特定できることが可能となりました。その他、すい炎とすい臓がんとの識別能も改善されました。

このことから、THBS2とCA19-9を組み合わせてバイオマーカーとして検査することにより、初期の段階のすい臓がんも検出できる可能性が示唆されました。THBS2とCA19-9との組み合わせは、既存の方法よりも早期のすい臓がん検出に優れており、発症リスクの高い方々にとって希望となる検査方法であると発表しています。


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すい臓がんは自覚症状がほとんどなく、初期段階を検出できるバイオマーカーも存在しなかったため、早期発見の難しい疾患でした。しかし、今回の報告により、THBS2とCA19-9を組み合わせることにより、早期のすい臓がんも特定できる可能性がしめされました。今後、早期発見が可能となり、すい臓がんの予後が改善されることが期待されます。

 

 

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