関節症性乾癬に対するイキセキズマブの有用性

関節症性乾癬は、乾癬患者さんの約10%にみられる関節炎であり、進行すると関節の変形や機能障害によりQOLの低下を引き起こします。治療により、問題なく生活を送れるようになる方もたくさんいる一方で、十分な効果が得られない患者さんもいるため、効果的な治療法がもとめられています。

関節症性乾癬とは

関節症性乾癬は、皮膚症状のみられる乾癬に関節炎が合併する疾患です。多くは、皮膚症状に続いて関節症状がみられます。

手や足の先に近い関節に炎症が発現しやすく、腫れや痛み、変形を伴います。症状は関節リウマチに似ていますが、皮膚症状がみられる以外にも、関節症性乾癬特有の爪症状がみられることや、脊髄や腱、靭帯にも炎症が起こるのが特徴です。また、ソーセージ指と呼ばれる手足の指全体の腫れがみられることもあります。

命を落とすことはないものの、進行すると関節の不可逆的な変形が起こり、機能障害を生じるため、早期から適切な治療を行うことが大切です。


写真はイメージです。 photo by photoAC

関節症性乾癬の治療法

関節症性乾癬の治療は、骨破壊の進行を抑え、QOLを維持することが目標となります。乾癬の皮膚症状や関節症状の重症度により患者さんに合った方法が選択されます。

関節炎の発症には免疫異常が関与していることから、治療は薬物療法が中心となり、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬や、炎症性サイトカインの働きを抑制する生物学的製剤が使用されます。活動性関節症性乾癬の初期治療には、抗リウマチ薬の使用が基本となっていますが、関節障害が進行している場合には、早期から生物学的製剤の使用が考慮されます。

現在、関節症性乾癬に適応をもつ生物学的製剤として、TNFα阻害薬、IL-17A阻害薬、IL-12/23阻害薬が発売されています。そのなかで、TNFα阻害薬では関節破壊の進行を予防しうることが確認されており、高い有効性が報告されています。そのため、TNFα阻害薬は生物学的製剤のなかで、第一選択薬とされています。

TNFα阻害薬不応性患者さんに対する治療法

しかし、中にはTNFα阻害薬を用いても十分な効果がえられない患者さんもおり、そのような患者さんに対する効果的な治療法が求められていました。

そこで、「Ixekizumab for the treatment of patients with active psoriatic arthritis and an inadequate response to tumour necrosis factor inhibitors: results from the 24-week randomised, double-blind, placebo-controlled period of the SPIRIT-P2 phase 3 trial」では、TNFα阻害薬で十分な効果が得られなかった活動性関節症性乾癬患者さんに対するIL-17A阻害薬イキセキズマブの有用性について報告しています。

TNFα阻害薬に不応もしくは効果の減弱のみられた18歳以上の活動性関節症性乾癬患者さんを対象に、初回イキセキズマブ160mgを投与後に、80mgを4週間ごとに投与する群と2週間ごとに投与する群、およびプラセボ群に分け、治療開始24週時点での有効性を検証しています。有効性は、米国リウマチ学会の基準による20%改善(ACR20)を達成した割合で比較しています。

その結果、プラセボ群ではACR20が20%であったのに対し、4週間ごとのイキセキズマブ投与群では53%、2週間ごとの投与では48%と有意な上昇がみとめられました。重度の有害事象は、4週間ごとの投与群で3%、2週間ごとの投与群で7%、プラセボ群で3%の患者さんにみられました。いずれも死亡報告はありませんでした。感染症は、4週間ごとの投与群で39%、2週間ごとの投与群で38%、プラセボ群で30%の患者さんで発現がみられました。

これらのことから、TNFαで十分な効果がみられない活性型関節症性乾癬患者さんへの4週間または2週間ごとのイキセキズマブ投与は、症状改善に有効であることが示唆されました。


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関節症性乾癬は、疼痛や関節の変形などによるQOL低下を引き起こすため、症状に合わせた適切な治療が必要となります。今回、イキセキズマブの有効性が報告され、TNFα阻害薬に不応性の患者さんに対して効果的な治療法となる可能性がしめされました。今後も研究が続き、治療の選択肢が広がっていくことが期待されます。

 

 

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