バリシチニブ アトピー性皮膚炎への有効性

現在、4カ月~6歳の子どもの12%前後、20~30歳代では9%前後の頻度でアトピー性皮膚炎がみとめられると報告されています。

アトピー性皮膚炎は、痒みや湿疹をともない、QOLの低下を起こす原因ともなります。また、既存の薬だけでは、症状の抑えられない患者さんもおり、さらに治療の選択肢が増えていくことが望まれています。


写真はイメージです。photo by photoAC

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質の人や皮膚のバリア機能の弱い人で多くみられる疾患です。

日本皮膚科学会では、“増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ”と定義しています。

湿疹は左右対称にできることが多く、手足の関節の内側やくび、顔、わきなどに出やすい特徴があります。

掻き壊しを繰り返すことで、皮膚が厚く硬くなる、顔や身体が赤くなる、色素沈着を起こすなどの症状があらわれる場合もあります。また、強い痒みにより、日常生活への支障や睡眠不足などのQOL低下を引き起こす原因ともなります。

治療は?

アトピー性皮膚炎の治療は、最終的に保湿剤のみで、日常生活に支障がない程度まで症状を安定させることが目標となります。そのため、まずは皮膚を清潔に保つ、保湿剤を使用するなどのスキンケアが大切になります。

皮膚症状が出ている場合には、おもに抗炎症作用のあるステロイド外用薬や免疫抑制作用のある外用薬が用いられます。症状の程度により、使われるステロイドの強さは異なり、患者さんに合った薬が選択されます。また、痒みがある場合には抗アレルギー内服薬が併用されることもあります。

外用薬だけでは十分な効果が得られない場合には、ステロイドや免疫抑制薬の飲み薬が処方される場合もあります。


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アトピー性皮膚炎に対するJAK阻害薬

重症のアトピー性皮膚炎は、外用薬に加えて内服薬も使用されますが、選択肢は限られており、さらなる薬の開発がもとめられていました。そこで、研究が進められているのが、JAK阻害薬であるバリシチニブです。バリシチニブは、すでに関節リウマチを適応とした製造販売承認を取得しています。

JAKは、細胞内で炎症に関わるシグナルが伝達される際に働く酵素であり、炎症反応に深く関わっています。そこで、バリシチニブは、JAKの働きを阻害し、シグナル伝達を遮断することにより、炎症を鎮める作用を発揮します。

第Ⅱ相試験では、中等度~重症のアトピー性皮膚炎を対象に、中力価ステロイド外用薬とバリシチニブ内服2mgまたは4mgを併用した群と外用薬+プラセボ群を比較し、有効性、安全性について報告しています(イーライリリー プレスリリースより)。

試験の結果、投与開始4週時点でのEASI-50(身体全体の重症度の50%以上の低下)を達成した割合は、バリシチニブ4mg群で68%、バリシチニブ2mg群で62%、プラセボ群で16%となり、バリシチニブ服用により有意な改善がみられました。

16週時点でのEASI-50達成率も、バリシチニブ4mg群で61%、プラセボ群で37%と、バリシチニブ4mgを追加することにより有意な改善がみられました。一方で、バリシチニブ2mg群でのEASI-50達成率は57%となり、プラセボ群と有意差はみとめられませんでした。バリシチニブ4mg群で多くみられた有害事象は、上気道感染、鼻咽頭炎、頭痛、クレアチニンホスホキナーゼの上昇でした。

第Ⅱ相試験で主要評価項目が達成されたことから、年内にも第Ⅲ相試験を開始する予定と発表しています。


写真はイメージです。 photo by illust AC

バリシチニブの中等度~重症アトピー性皮膚炎に対する有効性が示唆されたことにより、今後、外用薬だけでは十分な効果が得られない患者さんに対する新しい治療の選択肢となる可能性がしめされました。

 

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