2型糖尿病治療薬の新たな合剤 カナリア配合錠

慢性疾患の薬物治療は長期にわたり、また、薬が数種類におよぶこともあることから、服薬アドヒアランスの低下が問題となっています。

2型糖尿病も慢性疾患のひとつであり、アドヒアランス向上のために、配合剤とすることで1回に服用する錠数を減らすなどの製剤的な工夫がされています。


写真はイメージです。 photo by photoAC

2型糖尿病の薬物治療

2型糖尿病は、年々患者数が増加しており、現在では316万人以上の方が継続的な治療を受けていると推定されています。

2型糖尿病の治療では、まず食事療法、運動療法が行われますが、それらを行っても改善がみられない場合には、薬物療法を追加して、良好な血糖コントロールを目指します。

薬物療法は、患者さんの病態に合った薬を単剤で少量から開始していきます。

インスリンの分泌能が低下している患者さんには、分泌促進作用をもつスルホニル尿素(SU)薬やジペプチジルペプチターゼ4(DPP-4)阻害薬が選択され、インスリンの抵抗性が増大している方には、インスリン抵抗性を改善する作用のあるビグアナイド系薬やチアゾリジン薬が用いられます。とくに食後高血糖がみられる場合には、α-グルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)や即効型インスリン分泌促進薬の使用も考慮されます。

しかし、なかには、単剤投与では十分な効果が得られない、または次第に血糖コントロールが不良となっていく患者さんもおり、その場合には、増量や薬の変更、異なる作用機序の薬を併用することが推奨されています。

2型糖尿病治療薬の配合剤

2型糖尿病の治療は長期にわたり、進行すると錠数や薬の種類が増えていくことから、飲み間違いや飲み忘れなどが起こりやすくなります。そこで、その問題を改善すべく用いられているのが、作用機序の異なる2種類の成分を1錠に合わせた配合剤です。


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現在、チアゾリジン薬とDPP-4阻害薬を組み合わせたものや、チアゾリジン薬+SU剤またはビグアナイド系薬、α‐GI+即効型インスリン分泌促進薬、DPP-4阻害薬+ビグアナイド系薬が臨床で使用されています。

そのなかで、2017年7月、新たにDPP-4阻害薬であるテネリグリプチンとSGLT2阻害薬カナグリフロジンを組み合わせた「カナリア配合錠」が承認となりました。

DPP-4阻害薬は、DPP-4を阻害することにより、GLP-1の血中濃度を上昇させ、血糖値依存的にインスリン分泌を促進、およびグルカゴン分泌を抑制します。一方、SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管でのグルコースの再吸収を抑制することにより、血中の過剰なグルコースを尿中へ排泄することで血糖低下作用を発揮します。

カナリア配合錠は、テネリグリプチンおよびカナグリフロジンの併用による治療が適切と判断された2型糖尿病が適応となり、1日1回朝食前または朝食後に1錠を服用します。

臨床試験では、テネリグリプチンまたはカナグリフロジン単独投与で効果不十分な患者さんにおいて、カナリア配合錠服用により血糖コントロールの改善がみられています。また、長期(52週)にわたり、持続的なHbA1cの低下効果が確認されています。

副作用は15.7%にみとめられており、おもに、頻尿や血中ケトン体増加、外陰部膣カンジダ症、便秘、口渇が報告されています。


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今回、新たにDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬を組み合わせた配合剤が承認となり、1回に服用する錠剤が減ることで服薬アドヒアランスの向上に寄与することが期待されています。

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