ベリムマブ 「既存の治療法では効果が不十分な全身性エリテマトーデス」の適応で承認

全身性エリテマトーデスは、日本に6~10万人の患者さんがいると言われており、難病に指定されている自己免疫疾患です。ステロイドや免疫抑制剤などを用いた治療法により治療成績は向上していますが、さらに有効で安全性の高い治療薬をもとめて日々研究がおこなわれています。

全身性エリテマトーデスとは

全身性エリテマトーデスは、身体のさまざまな場所や臓器に多くの症状をひきおこします。20~40歳代の女性にみられることが多いのが特徴です(男女比1:9)。

多くの患者さんに、発熱や易疲労、食欲不振などの全身症状や、関節の腫れや痛みがみられる関節症状、蝶型紅斑などの皮膚症状がみとめられます。そのほか、患者さんにより発現する症状や障害は異なりますが、腎臓や肝臓、神経などさまざまな臓器障害や、血球異常がみられる場合もあります。


全身性エリテマトーデスのおもな症状 photo by wikipedia

原因はいまだ解明されていませんが、免疫系の異常により、免疫系が自分のからだを攻撃してしまい、全身にさまざまな炎症を引き起こしていることがわかっています。

ほとんどの患者さんの血液中からは、細胞中の核成分に反応する抗体である抗核抗体が検出され、この抗体が細胞中の核成分と反応して免疫複合体をつくり、さまざまな場所に沈着することにより、組織障害が発現すると考えられています。また、免疫を司るリンパ球が、直接、細胞や組織を攻撃することも、発症・進行の一因と考えられています。

治療法とは

治療は、薬物療法が基本となり、原則ステロイドが使用されます。

使用されるステロイドの量は、症状の重症度やどの臓器が障害されているかによって異なり、患者さんに合った投与量が決まられます。重症度が高く、治療が急がれる場合には、ステロイドパルス療法が行われる場合もあります。

ステロイドで十分な効果がえられない場合や、副作用が強い場合などには、免疫抑制剤が使用されることもあります。

そのほか、症状に応じて、非ステロイド性抗炎症薬や皮膚症状に対する局所療法、輸血療法などが併用されます。


写真はイメージです。 photo by photo AC

全身性エリテマトーデスに対するはじめての生物学的製剤

現在、全身性エリテマトーデスの治療は、ステロイドや免疫抑制剤による薬物療法が中心となっていますが、治療の選択肢は限られており、新しい薬の開発がもとめられていました。

そこで、開発がすすめられ、2017年9月に、全身性エリテマトーデス治療薬として生物学的製剤で初めての承認されたのが、ベリムマブ(商品名;ベンリスタ)です。

全身性エリテマトーデスには、B細胞の機能異常も関与しており、Bリンパ球刺激因子(BLyS)の過剰発現がみられます。BLySは、B細胞のアポトーシスを抑制し、形質細胞への分化を促進させるタンパク質であり、BLyS濃度と疾患活動性スコアのあいだに関連性がみとめられことなどから、全身性エリテマトーデスの病態形成、疾患活動性に重要な役割をはたしていると考えられています。

ベリムマブは、可溶性BLySに特異的に結合し、自己反応性B細胞の生存を抑制することで、疾患活動性を低下させる効果を発揮します。臨床試験では、既存の治療薬に上乗せして投与することにより、疾患活動性の低下など有効性がみとめられています。

適応は、「既存の治療法では効果が不十分な全身性エリテマトーデス」であり、点滴静注用120mgおよび400mg、皮下注200mgオートインジェクター、皮下注200mgシリンジが製造承認されています。用法用量は、点滴静注用が「通常、成人には、1回10mg/kgを初回、2週間後、4週間後に点滴静注し、以後、4週間の間隔で投与する」、皮下注製剤は「通常、成人には、1回200mgを1週間の間隔で皮下注射する」となっています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

今回、全身性エリテマトーデスの治療薬としては初めてとなる生物学的製剤が承認されました。このことにより、治療の選択肢が拡大し、患者さんの症状改善に寄与することが期待されています。

 

 

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