アイザックス症候群 手足の筋肉がけいれん、ぴくつき、硬直する希少難治性疾患

[アイザックス症候群-知られていない病気]

病気って何種類あるのか疑問をもったことありませんか。その数はWHOが作成している国際疾病分類によると25000種類以上とされています。そのうち、ほとんどの病気は一般的には知られていない病気です。

1961年にヨハネスブルクのHyam Isaacsが報告した原因不明の筋肉の病気である「アイザックス症候群」もそのような病気の一つです。

アイザックス症候群は厚生労働省の指定難病で、「原因が不明で治療方針未確定。長期療養が必要、患者数が非常に少ない病気」とされる約7000種類ある「希少難治性疾患」のなかの一つでもあるのです。

日本での患者数は100人前後ですが、軽症例でアイザックス症候群と診断されていない人もいると推測されています。好発年齢は15歳~60歳、多くは40歳~45歳での発症が多いと言われています。

写真はイメージです。photo by pakutaso

希少難治性疾患であるアイザックス症候群とはどのような病気なのでしょうか。

[アイザックス症候群はどんな病気なの]

○症状

手足や体幹の筋肉に症状がみられます。最初は局所的な症状ですが、症状が進むと全身に症状が現われます。症状には個人差があり、入院が必要になる場合もあります。

・筋肉がピクピクとする、波打つような動き(ミオキミア)。イモムシがクネクネと皮膚の下をうねるような動きともいわれます。

・筋弛緩障害(ニューロミオトニア)。自分の意志で筋肉を緩めることができません。たとえば、つかんだものを離せない、握った手が開かないなどがみられます。

・筋肉のけいれんや硬直。持続性があり、痛みを伴う場合もあります。足がちょっとしたことでつってしまう、足全体がつま先までつってしまい一日中動かせなくなるなどがみられます。

・夜寝ている時、痛みで目がさめてしまう。アイザックス症候群の特徴の一つです。不眠症にもつながります。

・筋肉のけいれんや硬直が続くと手足の激しい痛みやしびれ感に悩まされます。歩行やからだを動かすことが困難になる場合もあります。

・自律神経症状が引き起こされて大量の汗をかく、皮膚に色がかわる、高体温になる、下痢や便秘などの消化器症状がでることもあります。

・全身に症状がおよぶとからだ全体が動かせなくなる、呼吸がしにくくなることもあります。

・急に気温が低くなったりして寒さにさらされたり、運動したあとに症状が悪化します。

アイザックス症候群の特徴的な症状である「ぴくつき」、「けいれん」の動画です。

アイザックス症候群(Isaacs syndrome)の特徴的な症状②

合併症として胸腺腫、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、甲状腺機能亢進症などを引き起こす場合があることが知られています。胸腺腫については一部の症例で関わっていることが報告さています。胸腺腫の切除によって症状の改善が見られる場合もあります。

○原因

根本的な原因は分かっていません。正常に細胞が維持するための電位依存性カリウムチャネル(VGKC)に対する自己抗体によって自己免疫的な作用により、末梢神経の機能障害が引き起こされると考えられています。

アイザックス症候群は診断が難しい病気で、ほかにも似たような症状を引き起こす病気との鑑別診断も必要です。アイザックス症候群と診断されるまで数年単位の時間がかかることは珍しいことではありません。

写真はイメージです。photo by photo-ac

○治療

アイザックス症候群は原因不明の病気です。いまのところ確実な治療方法はなく、対症療法と免疫療法を主体に治療が行われます。

・抗てんかん剤や神経障害性疼痛薬プレガバリンによる対症療法

・ステロイドの内服

・ステロイドパルス療法(ステロイドの大量投与)

・血漿交換療法

重症例の場合には、血漿交換後にステロイドと免疫抑制薬のアザチオプリンの併用での治療が行われています。

○患者会

アイザックス症候群は長期にわたる治療を必要とする難病です。身体的には勿論、精神的にも多くの問題を抱えることになります。そのために、アイザック症候群の患者さん同士の交流や会報などを通じて、健やかな生活を送れるようにすることを目的とした患者会である「リンゴの会」があります。

リンゴの会ホームページ

リンゴの会FaceBook

どのような病気にも関わらず原因不明と診断され、さまざまな症状に苦しんでいる方は多くいると思います。手足の筋肉のぴくつき、けいれん、硬直などで悩んでいる場合には、念のために神経内科を受診することをお勧めします。リンゴの会のホームページから相談することも可能です。

当サイトにはアイザックス症候群に関して「全身のけいれんピクつき 抗CASPR2抗体が関わるアイザックス症候群」という記事もありますので、併せてご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました