高い精度で早期大腸がんの発見が可能となる新たなバイオマーカーとは?

大腸がんの患者さんは年々増加しており、現在では26万人以上におよぶといわれています。がんの中でも、罹患数・死亡数ともに上位に入っている大腸がんですが、早期に発見し、治療を行えば高い確率で治すことができることから、より精度の高い早期大腸がんの検出方法の開発がすすめられています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

大腸がんと検診

大腸がんは、大腸粘膜の表面から発生し、次第に大腸の壁に深く侵入していきます。進行するにつれて、リンパ節や別の臓器に転移がみられるようになります。

早期の段階では、ほとんど自覚症状はありません。進行すると、血便や、下血、下痢と便秘を繰り返す、残便感、お腹が張るなどの症状が発現します。

発見が早いほど、治る確率は高くなりますが、初期では自覚症状がほとんどないことや、症状が出ていても、それだけでは大腸がんを見分けることが難しいことなどから、発見が遅れることが多いのが現状です。

そこで、厚生労働省では、大腸がんの患者数が増加する40歳から、年に1回大腸がん検診を受けることを推奨しています。

便が大腸がんの部分を通過すると、組織が擦れて出血することから、検診では、便に血液が混ざっているかを検査する便潜血検査が行われます。陽性(大腸がんの疑いあり)と判断された場合には、大腸内視鏡検査などさらに詳しい検査が行われ、診断が確定します。


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新しい検出方法の開発

便潜血検査は、便の表面をこすり、検体を提出するだけで済むため、自宅で簡単に行うことのできる検査です。しかし、早期で出血のない大腸がんでは陰性となる可能性や、大腸がん以外の疾患(痔、大腸炎症性疾患など)でも陽性となる場合があるなど、精度はそれほど高くありませんでした。

そこで、「Quantitation of putative colorectal cancer biomarker candidates in serum extracellular vesicles by targeted proteomics.」では、新たな早期診断法の開発を報告しています。

まず、大腸がんに関連する過去の論文から、バイオマーカーとなりそうなタンパク質を探索し、ターゲットプロテオミクスを用いて、これらのタンパク質が、血清中の細胞外小胞において検出できるか検討しています。その結果、バイオマーカーとなりそうなタンパク質は725個におよび、そのなかで、356個のタンパク質が細胞外小胞で検出が可能でした。

そこからさらに解析をおこない、22種類のタンパク質、37種類のペプチドが、大腸がん患者さんの血清中で増加していることを見出しました。とくに、アネキシンファミリーに属する4種類のペプチドは、大腸がん患者さんと健常人を見分ける精度が9割以上と、高精度で大腸がんを検出できることを報告しています。アネキシンファミリーに属するタンパク質は、大腸がんで発現が増加すること、大腸がんの発生、進行に関与していることがすでにしられています。

これらのことから、今回発見されたバイオマーカーペプチドは、高精度で大腸がんを見分けることができ、早期発見が可能になることが示唆されました。

著者らは、今回発見されたバイオマーカー検査を便潜血検査の代わり、もしくは併用して用いることで、大腸がんの早期発見が可能となり、死亡数を減らすことができると述べています。また、大腸内視鏡検査などの詳細な検査が必要となる人を絞り込むことができるようになり、医療費の削減につながることも期待されています。今後、測定法の開発をすすめ、5年後の実用化を目指すと発表しています。


写真はイメージです。 photo by illust AC

患者数、死亡数ともに多い大腸がんですが、早期に発見することができれば、治る可能性が高いがんでもあります。今回、今までの大腸がん検診の精度を超える早期診断バイオマーカーが発見されたことにより、早期発見および死亡数の減少への効果が期待されています。

 

 

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