化膿性汗腺炎は心血管リスクを上昇させる?!

化膿性汗腺炎は、慢性の炎症性皮膚疾患のひとつであり、若年層の女性に多く発症します。しばしば再発を繰り返し、日常生活に支障がでることもある皮膚疾患ですが、心血管疾患との関連も指摘されています。

化膿性汗腺炎と炎症反応

化膿性汗腺炎は、アポクリン汗腺の多い場所に発症しやすく、痛みをともなう腫れや膿瘍がみられる皮膚疾患です。長期にわたり繰り返し発現し、症状がひどい場合には、日常生活が制限されることもあります。

病変部では、細菌感染がみとめられますが、そのほか、TNFやIL-1β、IL-10、IL-17などの炎症性サイトカインの増加や、血中TNF濃度の上昇がみられます。

さらに、化膿性汗腺炎の患者さんは、乾癬患者さんと比べても、血中の白血球が多く、CRP値も高いことが報告されています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

心血管リスクとの関連

化膿性汗腺炎と同じく、慢性の炎症性皮膚疾患のひとつである乾癬では、研究が重ねられ、メタボリックシンドロームを合併しやすいことや、重症の場合には、動脈硬化や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが高くなることがわかっています。

化膿性汗腺炎でも、肥満や糖尿病、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症、メタボリックシンドロームとの関連が報告されており、心血管リスクの上昇に関与する可能性が指摘されていました。しかし、実際に、化膿性汗腺炎患者さんの心血管リスクについて明らかにしている報告は、今まであまりありませんでした。

そこで、「Risk of Major Adverse Cardiovascular Events and All-Cause Mortality in Patients With Hidradenitis Suppurativa」では、化膿性汗腺炎と心血管リスクとの関連性について報告しています。

5964人の化膿性汗腺炎の患者さん(平均年齢37.7歳、女性72.9%)と、患者群と性別や年齢が合う対象群29404人を対象に、心筋梗塞、脳卒中、心血管関連死亡などの発生率について比較しています。また、化膿性汗腺炎は肥満と関連しており、見かけ上、心血管疾患の発症率を上昇させる可能性があるため、肥満と関連の強い重症乾癬患者さんの対象群(13093人)も設定し、同じく、化膿性汗腺炎患者群と比較しています。

平均7.1年におよぶ追跡調査の結果、対象群と比べた化膿性汗腺炎患者群の発症率比は、心筋梗塞1.57、虚血性脳卒中1.33、心血管関連死亡1.95、主要心血管イベント1.53、総死亡1.35となり、化膿性汗腺炎患者群ですべて有意に高い結果となりました。また、重症乾癬患者群と比べると、心筋梗塞1.00、脳梗塞0.93、心血管関連死亡1.58、主要心血管イベント1.08、総死亡1.09となり、心血管関連死亡のみ化膿性汗腺炎の患者群で有意に高くなりました。

これらの結果から、化膿性汗腺炎は、心血管イベントと総死亡リスクを上昇させる独立した危険因子であることが示唆されました。また、重症乾癬患者さんに比較しても、心血管関連死のリスクが高いことがしめされました。


写真はイメージです。 photo by photo AC

いままで化膿性汗腺炎と心血管リスクについての研究はあまり行われていませんでしたが、今回の結果から、化膿性汗腺炎も他の慢性炎症性疾患と同様に、心血管リスクを上昇させる危険因子となることが明らかになりました。

 

 

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