ロキサデュスタット CKDにともなう貧血に対する有効性

慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)は、慢性に進行するすべての腎臓病のことをさします。日本では、20歳以上の約8人に1人がCKDを患っていると推定されており、新たな国民病といわれています。

CKDとは

腎臓は、わたしたちの健康に重要な役割を担っています。おもに、老廃物を体外へ追い出す働きや血圧の調節、体液量やイオンバランスの保持、血液をつくるホルモンの分泌、強い骨をつくる働きをしています。


写真はイメージです。 photo by illust AC

腎臓は、からだを正常に保つのに大切な働きをしていることから、腎機能が低下し続けると、さまざまな症状やリスクが発生します。CKDは、メタボリックシンドロームとも深く関連しており、さらに、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の危険因子となることが知られています。

初期のCKDは、自覚症状がほとんどなく、多くは血液検査や尿検査などで発覚します。そのため、早期に治療するためにも、定期的な健康診断が重要となります。

CKDが進行すると、夜間尿やむくみ、貧血、息切れ、疲れやすくなる、皮膚の掻痒感などの症状が発現します。これらの症状がみられる時には、CKDがかなり進行している場合が多いといわれています。

CKDの治療は、病気の進行を抑え、末期腎不全や心血管疾患の発症を防ぐことが目標となります。

治療は、おもに、禁煙や適度な運動などの生活習慣の改善、摂取するエネルギーや塩分、タンパク質、カリウムを制限する食事療法、薬を用いて腎機能を補助したり、症状を改善する薬物療法が行われます。症状や進行度などをもとに患者さんに合った治療法が選択され、長期的な治療が行われます。

CKDが進行し、末期腎不全となると、体内から老廃物を除去できなくなるため、透析や移植が必要となります。


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CKDに伴う貧血とその治療薬

CKDでは、赤血球ができる過程で必要なホルモン(エリスロポエチン)の分泌が低下するため、赤血球が十分につくられず、貧血をおこします。このような症状を改善するため、臨床で使用されているのが、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)です。不足しているエリスロポエチンを補うことにより、貧血症状を改善します。また、必要に応じて鉄剤が用いられることもあります。

現在、腎性貧血では、ESAの注射が治療の中心となっていますが、新しく経口治療薬として開発が進められているのが、「ロキサデュスタット」です。

ロキサデュスタットは、低酸素誘導因子(HIF)プロリン水酸化酵素を阻害するという、新機序の腎性貧血治療薬です。HIFは赤血球の産生に関与することが知られており、HIFプロリン水酸化酵素を阻害することで、転写因子であるHIFを安定化・調節し、赤血球の産生を制御すると考えられています。

赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療歴を有するまたは治療を行っていない腹膜透析期のCKD患者を対象とした第III相試験では、治療第18週から第24週において、ESA治療歴を有する患者とESA未治療の患者の両群において、良好な目標Hb値維持率が確認されたことを報告しています。それぞれの目標Hb値維持率(Hb平均値が10.0 – 12.0 g/dLの目標範囲内にある患者の割合)は、ESA未治療患者で92.3%、ESA治療歴を有する患者で74.4%となっています。(アステラス ニュースリリースより)


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今回報告された臨床試験の他にも、保存期および透析期の慢性腎不全に伴う貧血を対象として計6本の臨床試験が実施されており、今後、腎性貧血の新しい治療選択肢のひとつになることが期待されています。

 

 

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