Ⅲ期悪性黒色腫の術後補助療法にたいするBRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用療法の有効性

悪性黒色腫は、皮膚がんのひとつであり、日本では1年間に100万人あたり10~20人の方が新たに発症するといわれています。早期に発見し、早期に治療を受けることが重要となりますが、最近では、分子標的薬やがん免疫療法などの誕生により、悪性黒色腫の治療も進歩してきています。

悪性黒色腫とは

悪性黒色腫は、皮膚がんの一種であり、皮膚の色素(メラニン)をつくる細胞やほくろの細胞が、がん化したものをさします。


メラニン細胞(melanocyte)とメラニン(melanin) photo by wikipedia

色や形、発生する部位などから、末端黒子型黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、結節型黒色腫の4タイプに分類され、日本人では、末端黒色腫が一番多くみられます。

末端黒色腫は、とくに足の裏に好発し、そのほか、手のひらや爪などに発現することがあります。形がはっきりとせず、色むらがある褐色または黒色のシミとして発生し、進行するとしこりや潰瘍がみられるようになります。爪に発生した場合には、黒い縦の筋がみられ、それが次第に爪全体へと拡がっていきます。

悪性黒色腫は、がんの厚さや潰瘍の有無、リンパ節転移の有無、他の部位への転移の有無によって0期からⅣ期に分類され、病期が治療を選択する目安となります。

リンパ節以外の転移がみられないⅠ期~Ⅲ期では、手術により病変を全て取り除くことが基本となります。再発や転移を予防するために、術後化学療法や、切除部位の周辺皮膚にインターフェロンを注射するインターフェロン療法が行われる場合もあります。

手術が不可能な場合や、他の臓器に転移がみられるⅣ期では、アルキル化薬であるダカルバジンなどの化学療法や、BRAFに作用し、がん細胞が増えるのを抑えるBRAF阻害薬(BRAF遺伝子変異陽性の患者さんが対象)、抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体を用いたがん免疫療法、放射線療法がおこなわれます。


悪性黒色腫 photo by wikipedia

BRAF阻害薬+MEK阻害薬の有効性

BRAFは、がん細胞の分化・増殖において重要なシグナル伝達経路であるMAPK経路の中にある因子のひとつであり、腫瘍の進行時にBRAFの遺伝子変異があると、MAPK経路が恒常的に活性化されることがしられています。MAPK経路の活性化により、下流のシグナルであるERKやMEKが活性化し、細胞の異常増殖につながるとかんがえられています。

実際に、BRAF阻害薬ダブラフェニブとMEK阻害薬トラメチニブの併用は、BRAF遺伝子変異陽性の進行性悪性黒色腫にたいする有効性がしめされており、生存期間の延長が報告されています。日本でも。BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫への適応が承認されています。

さらに、「Adjuvant Dabrafenib plus Trametinib in Stage III BRAF-Mutated Melanoma」では、ダブラフェニブとトラメチニブを術後補助療法に用い、有効性を検討しています。BRAF遺伝子変異陽性のⅢ期悪性黒色腫を完全に切除した患者さんを対象に、ダブラフェニブ+トラメチニブを投与する群(併用療法群)とプラセボ群にわけ、無再発生存や全生存などについて解析しています。

その結果、追跡期間中央値2.8年の時点での3 年無再発生存率の推定値は、併用療法群で58%、プラセボ群で39%となり、再発または死亡のハザード比 は0.47となりました。また、3年全生存率の推定値は、併用療法群で86%、プラセボ群で77%となりました。しかし、どちらも有意差はみられたものの、この改善の程度は,事前に規定した中間解析における有意差の閾値を超えなかったと記しています。無遠隔転移生存率と無再発率も,併用療法群のほうがプラセボ群よりも高い結果となりました。安全性は、転移性悪性黒色腫にたいする併用療法でみられたプロファイルと一致しており、新たな毒性はみられませんでした。

このことから、BRAF遺伝子変異が陽性のⅢ期悪性黒色腫の術後補助療法に、ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法を行うことで、再発のリスクが低くなることが示唆されました。


写真はイメージです。 photo by photo AC

最近、分子標的薬やがん免疫療法の登場により、悪性黒色腫の治療が大きく変わっています。今後も研究がすすみ、有効性・安全性の高い治療法、治療薬が誕生することが期待されています。

 

 

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