新しいVEGF阻害薬brolucizumab 滲出型加齢黄斑変性への有効性

加齢黄斑変性は、加齢などが原因となり黄斑が障害される眼の病気です。年々増加傾向にあり、高齢者の失明の原因ともなることから、有効な治療法の開発がのぞまれています。

加齢黄斑変性とは

加齢黄斑変性では、眼の網膜にある「黄斑」に障害がおきます。

黄斑は、網膜の中心にあり、外から入った光が当たる部位です。小さい部位でありながら、ものを見るためには大切な役割をはたしています。また、網膜の下には網膜色素上皮という細胞があり、その下に脈絡膜という血管に富んだ組織があります。正常にものを見るためには、網膜色素上皮や脈絡膜が上手く働くことが必要です。


眼の構造 photo by wikipedia

加齢黄斑変性は、大きくわけて「滲出型」と「萎縮型」に分類されます。日本人には、滲出型が多く、50歳以上の1.2%が発症するといわれています。

年齢を重ねるとともに、網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積していきますが、滲出型加齢黄斑変性では、溜まった老廃物を吸収しようと、脈絡膜から異常な血管(脈絡膜新生血管)がのびているのがみとめられます。脈絡膜新生血管は、正常な血管とは異なり、血液中の成分が漏れ出しやすく、破れやすい特徴があります。出血や漏出により、網膜が腫れたり、網膜下に滲出液が溜まり、黄斑部が障害されて機能が低下していきます。

発症初期には、視野の中心部が歪んでみえる症状(変視症)がみられ、次第に、中心が暗くみえる(中心暗点)、視力が低下するといった症状がみられるようになります。さらに症状が進行すると、色がわからなくなるなどの症状がでることがあります。また、重症化して大きな網膜剥離や出血が起こった場合は、さらに広い範囲が見えにくくなることもあります。

滲出型加齢黄斑変性の治療

長い間、加齢黄斑変性の有効な治療法はありませんでしたが、近年、いくつかの滲出型加齢黄斑変性にたいする治療法が誕生しています。

現在の治療法は、脈絡膜新生血管の形成を抑制し、視力を維持することが目的となります。視力が改善することもありますが、一度変性した組織や障害は残るため、視力が正常に戻ることはほとんどありません。


写真はイメージです。 photo by photo AC

主な治療法には、薬物療法、光線力学的療法があります。

薬物療法では、脈絡膜新生血管の発生に関与している血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害する薬が用いられます。VEGF阻害薬を眼の中(硝子体腔)に6週あるいは4週ごとに2~3回注射し、その後、脈絡膜新生血管の活動性をみながら必要に応じて再度注射を行います。

光線力学的療法では、光感受性物質を投与した後に、病変の大きさに合わせてレーザーを照射します。数回にわたる照射が必要となる場合もあります。

新しいVEGF阻害薬

加齢黄斑変性は、高齢者の失明の原因ともなるため、より有効な治療法の開発がすすめられています。brolucizumabも、現在開発されている薬のひとつです。

brolucizumabは、既存の薬と同じVEGF阻害薬ですが、ヒト化一本鎖抗体フラグメントという構造をしており、そのことにより分子量が小さく、組織への透過性が高いことが特徴となっています。分子量が小さいことにより、すべてのVEGF-Aアイソフォームに高い親和性をもち、それらを強力に阻害すると考えられています。

2つの臨床試験(HAWKおよびHARRIER試験)では、既存のVEGF阻害薬アフリベルセプトと比較し、brolucizumabの有効性を検討しています。

その結果、網膜滲出液をみとめる割合は、brolucizumab群のほうが アフリベルセプト群に比べ、16週および48週時点ともに有意に低くなったことが報告されています。網膜内の異常な滲出液貯留をしめす指標である中心窩網膜厚についてみても、brolucizumab群で有意な減少がみとめられました。主要評価項目であるベースラインから48週時点までの最高矯正視力の平均変化量は、アフリベルセプトに対し非劣性であることが確認されました。

また、これらの結果は、半数以上の患者さんが、投与開始から48週時まで、12週毎投与を維持しながら、達成されたことが報告されています。有害事象の全発生率は、アフリベルセプトと同程度でした。

このことから、brolucizumabが、12週毎という低頻度の投与間隔で、網膜内の異常な滲出液の貯留や視力を改善することが示唆されました。


写真はイメージです。 photo by pixabay

今までのVEGF阻害薬は、一般的に高頻度の眼内注射が必要でしたが、brolucizumabは、多くの患者さんで12週毎投与を維持しながらでも効果を発揮することがしめされました。今後、滲出型加齢黄斑変性で悩む患者さんの症状改善に寄与することが期待されています。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました