一般的に「歯科矯正」と聞くと、口の中にワイヤーを入れてガタガタした歯並びを治す治療方法だとイメージする人が多いでしょう。
実は、歯科矯正で治せるのは歯並びだけではありません。「外科的矯正治療」を行えば、顎の骨を適正な形に修正することができるので、美しく整った口元を手に入れるための幅がぐっと広がります。
写真はイメージです。 photo by photo AC
整った口元を手にいれるには
例えば、「しゃくれ」や「受け口」と呼ばれる顔つきです。
これは、下顎の骨が上顎の骨に対して前に偏位していたり、大きかったりするために見られる顔貌所見で、歯科用語では「下顎前突」といいます。
逆に、上顎に対して下顎が小さかったり後方に偏位していたりすると、「上顎前突」と呼ばれる顔つきになります。
さらには、頭蓋骨に対する上顎・下顎の骨が前方に偏位した「上下顎前突」というものもあります。
これらの骨格異常では、審美性が気になるだけでなく、噛み合わせがあまり良くないことが多くあります。
ワイヤーによる歯の移動だけでそれらを補正するのはとても困難であり、そんな時に使用される治療法が、「外科的矯正治療」なのです。
具体的に外科的矯正治療とは、どういうものなのでしょうか。
外科的矯正治療とは、過剰に成長してしまった骨を取り除き、さらに成長してほしいところにスペースを確保して骨ができるのを待ったりします。
もっと端的に言うと、顎の骨を切ってあるべき場所に固定し、骨がくっつくのを待つという治療法です。
写真はイメージです。 photo by pixabay
上顎と下顎を動かす治療術
上顎の骨を動かすときによく用いられる方法は「Le Fort I型骨切り術」です。
「Le Fort I型」というのは頭の骨の骨折位置の分類の1つで、鼻腔の底と上顎の天井部分が割れたような骨折位置を指します。
つまり、「Le Fort I型骨切り術」はそこを切断して上顎骨を動かす術式というわけです。
この方法では、上顎の前後的位置だけでなく、上顎の高さも調整できるというメリットがあります。
逆に、下顎の骨を動かすときによく用いられる方法は「下顎枝矢状分割術」です。
これは、下顎枝(下顎の骨のうち、耳の前に位置する部分)を矢状面、つまり前後方向に2つに切り、スライドさせて固定する術式です。
この方法では、同じ切り方で下顎を前にも後ろにも動かすことができるほか、固定後の骨の接着面積がほかの術式に比べて広いため、術後回復に伴ってもとに戻る「後戻り」が少ない傾向にあるというメリットがあります。
外科的治療の欠点
顎顔面領域の審美治療として有用だと思われている外科的矯正治療ですが、もちろん欠点もあります。
先にも少し述べた通り、せっかく手術をしても「後戻り」してしまうことがあるということです。
また、手術は体に与えるダメージの大きい治療法であるので、入院し術前術後の管理が必須になります。そうすると、経済的な問題や時間的な問題も発生します。
さらに、手術により神経を損傷するリスクもあります。上顎には鼻口蓋管神経や大口蓋管神経、下顎には舌神経や下歯槽神経などたくさんの神経が通っています。
そんなデメリットを踏まえても、外科的矯正治療は、不可能を可能にする素晴らしい治療法です。
写真はイメージです。 photo by pixabay
自分の骨格に悩んでいる方は、今一度外科的矯正治療を受けることを検討してみてはいかがでしょうか。
コメント