既存の治療では効果不十分なアトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤 デュピルマブ(商品名;デュピクセント)

アトピー性皮膚炎は、発疹やかゆみなどをともなう慢性の炎症性皮膚疾患です。患者数は年々増加傾向にあり、症状が重いと睡眠障害や抑うつ症状などがあらわれ、QOLの低下をまねくこともあります。

アトピー性皮膚炎と治療

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある特徴的な湿疹が発現し、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。アレルギー体質の方や、皮膚のバリア機能の弱い方にあらわれやすく、左右対称に赤みのあるものやジュクジュクした特徴的な湿疹がみられます。

皮膚のバリア機能の低下などの体質的要因や、アレルゲン、汗、引っ掻き傷、化学製品、疲労などの環境要因が複数組み合わさることで、免疫が過剰に反応し、アトピー性皮膚炎の症状があらわれると考えられています。


写真はイメージです。photo by photo AC

アトピー性皮膚炎は、皮膚の症状により軽微、軽症、中等度、重症の4段階に分類され、それぞれの症状にあった治療法が選択されます。

皮膚を清潔に保つ、保湿剤を使用するなどのスキンケアが基本となりますが、炎症がみられる場合には、症状に応じたランクのステロイド外用薬や免疫抑制作用のある外用薬が用いられます。外用薬のみでは十分な効果が得られない場合には、ステロイドや免疫抑制剤の内服薬が選択されるケースもあります。

アトピー性皮膚炎にたいする新しい生物学的製剤

外用薬のみで症状がコントロールできる患者さんが多くいる一方で、適切な外用薬による治療を継続しても十分な効果が得られない患者さんもいます。また、このような患者さんに対する治療の選択肢は限られており、新しい治療薬の開発がのぞまれていました。

様々な研究のなかで、アトピー性皮膚炎に関連する炎症性サイトカインに対する生物学的製剤の開発が進められていますが、2018年1月に製造販売が承認されたのが、デュピルマブ(商品名;デュピクセント皮下注300mgシリンジ)です。

デュピルマブは、アトピー性疾患の慢性炎症において中心的な役割をはたしていると考えられているIL-4とIL-13にたいして作用し、過剰な働きを阻害するヒトモノクローナル抗体です。

「既存の治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」に適応をもち、用法・用量は「通常、成人にはデュピルマブとして初回に600mgを投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する」となっています。基本的に保湿剤や抗炎症外用剤との併用が必要となります。


写真はイメージです。 photo by photo AC

ストロングクラス以上に相当するステロイド外用薬で効果不十分な18歳以上かつ中等度以上のアトピー性皮膚炎患者さんを対象にした臨床試験では、投与開始後16週時のEASI-75(湿疹面積・重症度指数であるEASIスコアがベースラインから75%以上改善した割合)がデュピリマブ投与群で68.9%、プラセボ群で23.2%となり、有意差がみられました。また、痒みに関するスコアの変化率も有意な低下を示したことが報告されています。

副作用は30.5%に発現し、おもに注射部位反応(7.2%)、頭痛(3.0%)、アレルギー性結膜炎(1.7%)がみられました。

 

中等度から重症のアトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚症状だけではなく、不眠やストレスなど多くの悩みを抱えており、QOLに影響を及ぼしています。今回、新しくデュピルマブが承認されたことにより、治療の選択肢が広がり、患者さんの症状やQOLの改善につながることが期待されています。

 

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