メロンで食中毒! 食中毒の正体とは-妊娠している方、高齢者の方などは注意が必要?  

[メロンで中毒!?]

2018年の3月に時事通信からオーストラリアでメロンによる食中毒で15人が感染、3人が死亡とニュースが飛び込んできました。ニュースでも報じられみられた方もいるのではないでしょうか。

メロンによる食中毒というと2011年にアメリカで感染者147人、死者33人という集団食中毒が発生しています。コロラド州の同じ農場から出荷されたカンタロープという編目があるメロンが原因です。

写真はイメージです。photo by pixaboy

メロンで食中毒といっても傷んだメロンを食べた、メロンのなんらかの成分によって食中毒を起こしたわけではありません。メロンが「リステリア菌」によって汚染されていたことが原因です。

リステリア菌による集団食中毒の報告は1981年カナダのコールスローによるものが最初です。この報告以降はとくに欧米を中心に数多く報告されています。アメリカでは毎年2500人が感染して約500人が死亡しています。

2011年のアメリカの食中毒では農場内のメロンを出荷する施設がリステリア菌に汚染されていました。消毒方法に問題があったと指摘されています。農場主は責任を問われて半年間の自宅勾留、罰金、社会奉仕活動などを命じる判決が下っています。

最近の大規模な集団感染は2018年3月に南アフリカで食品加工工場がリステリア菌に汚染されていたため約1000人感染、180人以上が死亡したことが報告されました。食品加工工場は閉鎖へと追い込まれました。

リステリア菌は土壌、河川や動物の腸管内などに幅広く生息しています。食品からも検出されます。食品の製造ラインを汚染することも知られていて食中毒の原因となります。リステリア菌による感染症を「リステリア症」といいます。

死者までだすリステリア菌とはどのような菌なのでしょうか。

[やっかいなリステリア菌]

リステリア菌には6菌種あります。私たちに毒性を示すのは「リステリア・モノサイトゲネス」という種類です。

リステリア菌photo by wikimedia

リステリア菌は発育温度域がマイナス1.5度から45度と幅広くマイナス20度ぐらいまでは生存可能です。塩分にも強くて10%から12%程度の高い塩分濃度でも増殖します。30%の塩分濃度でも死滅しません。

この生態から冷蔵庫内や塩漬けの状態でも増殖するやっかいな面を持っています。冷蔵庫で冷凍にしても死滅しません。70℃以上の温度で死滅するので加熱殺菌が有効です。

生息範囲が広いことから私たちが口にする野菜、果物、肉、乳製品、魚などの食材が汚染される可能性があります。

リステリア菌に汚染されていても食べ物のにおいや味には変化がありません。とくに加熱されていない食品はリスクが高くなります。どのようなものかあるか例をあげてみましょう。

・加熱処理されていないナチュラルチーズ

・低温殺菌されていない牛乳

・生ハム、冷肉、ソーセージ

・肉や魚のパテ

・スモークサーモン

・調理済みのサラダや惣菜

とてもやっかいなリステリア菌ですがどのような症状を引き起こすのでしょうか

[リステリア症はどんな病気なの]

-どんな症状なの-

リステリア症は相当量の菌量を一度に摂取しないかぎり発症することはほとんどなく、食品が原因となる感染例は100万人あたり0.1人から10人とされていています。けっして多いものではありません。

潜伏期間が3日から10週間と発症するまでの時間はたいへん幅広いことが知られています。そのため原因の特定が困難だとされています。

感染初期の6時間から1週間程度の間に倦怠感、発熱を伴う胃腸症状がみられることがあります。リステリア症が発症すると発熱、頭痛、嘔吐、倦怠感などインフルエンザのような症状がみられます。下痢など胃腸症状を示すこともありますが多くはありません。

写真はイメージです。photo by pixaboy

菌血症を引き起こすとインフルエンザのような症状に加えて筋肉痛、関節痛、背部痛などの症状が現れます。神経系統まで感染が広がると首の硬直、ふらつき、けいれんなども現れます。重症化すると髄膜炎、敗血症など重い全身性症状を引き起こします(侵襲性リステリア症)。重症化した場合の致死率は20%から30%と高い致死率を示します。

妊婦の方が感染した場合には子宮から胎盤を通して胎児に高い確率で感染して流産、早産、死産の原因になります。とくに妊娠後期は重い症状が現れやすいといわれています。母体には症状がでない、症状が軽い場合でも胎児に感染が及んでいる場合があります。

新生児の発症は出産前の母体内や出産時に膣内で感染して起こります。胎児や新生児の致死率は20%から50%で後遺症が残る場合もあります。

-リステリア症のハイリスク群とは-

リステリア菌は健常者が感染しても症状がでないもしくは軽い風邪のような症状ですんでしまう場合がほとんどです。気をつけなくてはならないのは感染や重症化しやすいハイリスク群の方です。

・妊娠している方。健康な成人の17倍から20倍の感染率といわれていいます。

・免疫機能が衰えている高齢者。

・抗ガン剤治療を受けている方やHIVエイズの方など免疫機能が低下している方。

・慢性の呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、糖尿病、高血圧などの基礎疾患を持つ方。

・胃を切除した方やH2ブロッカーなど胃酸を制御する薬を服用している方。

写真はイメージです。photo by pixaboy

重症化すると致死率のリステリア症についてWHOは注意喚起を行っています。日本ではあまり話しをききませんがどうなのでしょうか。

[日本ではどうなの]

日本では食中毒の統計上はリステリア菌による食中毒の報告はありません。論文として2001年に北海道で自家製のナチュラルチーズによる集団感染例が報告されています。内閣府の食品安全員会の調査によると推定患者数は年間約200人とされています。死亡例はでていません。

日本ではリステリア菌の食品の汚染率については低いといわれていましたが、近年の調査によって諸外国とはそれほどかわらないことがわかりました。調査結果から日本でも集団感染のような事例が発生する可能性はないとはいえないようです。

厚生労働省では一般消費者むけ妊婦さんむけに注意喚起のパンフレットを作成しています。

やっかいなリステリア菌ですが神経質に恐れることはないでしょう。一般的な食中毒とおなじように普段から食への衛生を心がけましょう。どのようなことを注意すればいいでしょうか。

[日頃から注意するポイントは]

注意するポイントはよく洗う、賞味期限に注意する、冷蔵庫を過信しないことです。

写真はイメージです。photo by misaki

・生野菜や果物などは食べる前に「流水」でよく洗いましょう。

・賞味期限内に食べ切るようにしましょう。一度開封後したものはなるべく早く食べきりましょう。

・リステリア菌は冷蔵庫内でも繁殖します。冷蔵庫を過信せずに長期間の保存は避けましょう。

・リステリア菌は低温では繁殖能力が衰えますので冷凍庫で保存しましょう。解凍した場合には早めに食べきりましょう。

・生の食材扱ったあとには手、包丁、まな板、容器類はよく洗いましょう。

・肉、魚などは完全に加熱してから食べましょう。

日ごろからの注意は私たちのからだを守ることにつながります。注意することで健康な生活が送れるといいですよね。

 

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