現在の日本では、20代以上で慢性疼痛を抱えているひとが5人に1人以上いると言われていて、さらに年々増加傾向にあります。
一方で治療に満足している人の割合は少なく、新しい治療法やより効果的な治療法が望まれています。
慢性疼痛のなかには様々な疾患がふくまれていますが、神経が障害されることで長期的に痛みが続く坐骨神経痛もそのひとつです。
坐骨神経痛とは
坐骨神経は腰から足にかけてのびる太い神経です。坐骨神経痛はこの神経が圧迫または刺激されることで痛みやしびれなどの症状が発現します。
高齢者がなりやすいイメージがありますが、若い方でも発症することがある幅広い年齢層でみられる痛みです。
原因はさまざまありますが、若年層では腰椎椎間板ヘルニアにより神経が圧迫されることが多く、
年を重ねると腰部脊柱管狭窄症が原因となり坐骨神経痛が発症することが多くなると言われています。
原因のわからない坐骨神経痛も多い
一方で、原因のわからない坐骨神経痛で苦しむ方も少なくありません。坐骨神経痛の治療では、基本的に薬による痛みの軽減やリハビリテーションが行われ、
場合によっては手術が検討されます。患者の症状や状態に合わせて、非ステロイド性消炎鎮痛剤や筋緊張弛緩薬、神経障害性疼痛治療薬などの治療薬が使用されます。
プレガバリンは神経痛に効果がある
プレガバリン(リリカ®カプセル)は、神経が原因となる痛みに対して効果が期待される薬です。痛みに対してよく使われる非ステロイド性消炎鎮痛薬は、
炎症部位での痛みを増大させる物質の生成を抑えることで鎮痛効果をあらわしますが、神経の痛みには効果が十分ではない場合があります。
そこで用いられるのがプレガバリンです。神経性疼痛は神経が興奮し、それに伴って神経伝達物質が過剰に放出することにより引き起こされます。
プレガバリンは興奮している神経に働き、神経伝達物質の過剰な放出を抑えることで痛みを軽減すると言われています。
そのため現在では、神経が傷つくことで痛みが出ると言われている帯状疱疹後の神経痛や糖尿病性末梢神経障害、三叉神経痛などに処方されています。
プレガバリンと坐骨神経痛
プレガバリンは神経性の痛みに効果が期待されていますので、もちろん坐骨神経痛にも使用されてきました。
しかし2017年3月に発表された論文「Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica」では、坐骨神経患者を対象にプレガバリン服用群とプラセボ(偽薬)服用群に分け、
服用開始から8週間後および52週間後においての足の痛みの度合いについて解析しています。
その結果、8週後および52週後ともにプレガバリン服用群とプラセボ服用群での足の痛みの強さに差はみられませんでした。
背中の痛みや生活の質の改善など、他の項目でもプラセボ群との有意な差はなく、有害事象については、プレガバリン服用群において有意に発生が高かったです。
症状にあわせて医師に相談を
このことから、プレガバリンは坐骨神経痛に効果が期待できないことが示唆されたと報告されています。今まで使用されてきた薬が、実は効果がないかもしれないという結果になっています。
ただ、薬は人によって効果に差が生じます。
必ずしもリリカが坐骨神経患者全員に効かないということではありません。一人ひとりに合った治療薬、治療法がありますので、医師と相談しながら治療をすすめてください。
参照:NEJM
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