PPIを1日2回服用した場合の難治性逆流性食道炎に対する効果


photo by Michael (a.k.a. moik) McCullough
逆流性食道炎は食生活の変化や肥満、加齢などの要因により年々増加している疾患です。日常生活に支障をきたす場合があり、生活の質(QOL)の低下が問題となっています。

多くの患者さんは、治療により症状の改善がみられますが、中には通常の治療法では十分な効果がみられない場合もあるため、より効果的な治療法が求められています。

逆流性食道炎の検査と治療

逆流性食道炎は、胃酸の逆流により引き起こされる疾患です。

食道と胃の間には下部食道括約筋が存在しています。胃の中のものが逆流しないようにブロックしているため、通常であれば胃酸が食道にあがってくることはありません。

しかし、脂っこい食事の食べ過ぎ、肥満などにより胃酸の分泌が増えたり、加齢などの要因で上手く下部食道括約筋が働かなくなると、胃からの逆流を防ぎきれなくなり、胃酸が食道までのぼってくることがあります。

食道は強い酸に対する防御機能を持っていないため、胃酸により傷つき炎症が起こってしまいます。このことが繰り返されることによって、粘膜のただれや潰瘍、胸やけ、呑酸、喉の違和感などの逆流性食道炎の症状があらわれると言われています。

逆流性食道炎の検査は基本的に内視鏡検査をおこない、食道粘膜の状態をみて診断し、治療が選択されます。

逆流性食道炎の治療は、生活指導と薬による治療が一般的です。症状によっては手術が選択される場合もあります。薬物療法では胃酸の分泌を抑える薬や、粘膜を保護する薬、胃酸を中和する薬が用いられます。症状により、単剤またはいくつか組み合わせて処方されます。

そのなかでも多く使われるのが、胃酸の分泌を抑える薬です。胃酸分泌抑制剤は大きく分けて、プロトンポンプインヒビター(PPI)とヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)、2015年に初めて日本で発売されたカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)です。

一般的にPPI、P-CABは1日1回の服用で効果があらわれ、H2ブロッカーは1日2回服用することが多い薬です。

多くの患者さんは服用開始から数日で効果がみられますが、自覚症状が改善しても炎症や潰瘍が残っていることがあるため、自己判断で服用を中断せず、医師の指示に従って継続して服用することが大切です。

逆流性食道炎は、バレット食道や食道がんなどの合併症につながることが知られていて、症状の不快感を改善するためだけではなく、合併症を予防するためにも治療の継続は必要となります。

難治性逆流性食道炎の治療

多くの場合は治療により症状が改善しますが、中には十分な改善がみられない難治性逆流性食道炎の患者さんもいらっしゃいます。

今回紹介する論文「Therapeutic Response to Twice-daily Rabeprazole on Health-related Quality of Life and Symptoms in Patients with Refractory Reflux Esophagitis: A Multicenter Observational Study」ではPPIの1日2回服用が、難治性逆流性食道炎の症状とQOLに与える影響について報告しています。

通常の服用方法である1日1回のPPI服用では効果が不十分だった患者さんを対象にラベプラゾール(PPI)10mgまたは20mgを1日2回、8週間投与し解析を行っています。

その結果、ラベプラゾール服用開始から4週間後、8週間後における症状とQOLは治療前に比べ、有意に改善しました。また、32週間後の再発率をみるとラベプラゾールを1日1回服用した群では28.4%であったのに対し、1日2回投与した群で9.7%と低く抑えられる結果となりました。

このことから1日2回のPPI服用は1日1回の服用に比べ、難治性逆流性食道炎の自覚症状とQOLを改善することが示唆されました。1日2回内服するわずらわしさにも関わらず、症状の改善を認めた理由に関しては、今回はっきりしていません。

今後もさらなる研究により、効果的な治療法が確立されることが期待されています。

参照:Internal Medicine

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