静脈血栓塞栓症の長期的治療におけるリバーロキサバンの有効性 アスピリンと比較して


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エコノミークラス症候群という言葉は世間に浸透していますが、静脈血栓塞栓症についてはあまり聞いたことがない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

エコノミークラス症候群は急性の静脈血栓塞栓症のことをさします。静脈血栓塞栓症は深部静脈血栓症と肺塞栓症の2つの疾患をまとめた総称であり、どちらも血栓が引き金となる疾患です。

多くの静脈血栓塞栓症の患者さんは長期的な治療を必要としますが、治療法についてはいまだ議論されているのが現状です。

静脈血栓塞栓症とは

前述した通り、静脈血栓塞栓症は深部静脈血栓症と肺塞栓症を総称したものです。深部静脈血栓症は、脚の深部静脈に血液の塊である血栓ができる疾患です。肺塞栓症は、肺動脈に血栓が詰まることで発症します。原因となる血栓は多くがからだの深い静脈で形成されたものであり、血液の流れにのって肺動脈に到達することで症状を呈します。そのため、2つの疾患はとても関係が深い疾患です。

深部静脈血栓症では自覚症状として脚の腫れや痛み、色調変化を伴うことがあります。肺塞栓症では呼吸困難や胸痛が主な自覚症状であり、場合によっては命を落としてしまう危険性のある疾患です。

肺塞栓症の治療は大きく分けて外科的治療、カテーテル治療、薬物治療の3つあり、患者さんの病態や合併症などを考慮して選択されます。また、発症してから一定期間は抗凝固薬などの薬を服用することが一般的で、治療は長期にわたります。

静脈血栓塞栓症の治療とは

静脈血栓塞栓症の再発予防には、血をさらさらにする薬が用いられます。血が固まり血栓を形成する過程には血液中の凝固因子や血小板が深く関わることが知られています。そのため、これらの働きを抑える抗凝固薬や抗血小板薬が処方されます。

抗凝固薬としてよく使用され、有名なのがワルファリンです。昔から使用されているワルファリンですが、定期的な検査が必要となることや食べ物との飲み合わせがあったりと、注意しなければいけないことがいくつかありました。そこで最近では、活性型血液凝固第Ⅹ因子阻害薬(FXa阻害薬)と呼ばれるワルファリンとは違う機序で働く抗凝固薬が誕生し、使用され始めています。

アスピリンは抗血小板薬としてよく使用されている薬です。その他、クロピドグレルやシロスタゾールなども抗血小板作用を有しています。

アスピリンとリバーロキサバンの比較

現在、静脈血栓塞栓症の再発予防には抗凝固薬や抗血小板薬が処方されていますが、治療法については、まだ定まったものがありません。そこで2017年3月に報告された論文「Rivaroxaban or Aspirin for Extended Treatment of Venous Thromboembolism」では静脈血栓塞栓症の長期治療における抗血小板薬アスピリンとFXa阻害薬リバーロキサバンの効果の比較を行っています。

6~12カ月間の抗凝固療法を行った静脈血栓塞栓症患者さんを対象に、リバーロキサバン10mg服用群(予防用量)、20mg服用群(治療用量)、アスピリン100mg群に分けて、それぞれ1日1回、最長12カ月にわたって投与を行っています。

その結果、アスピリン服用群では再発率が4.4%だったのに対し、リバーロキサバン10mg群では1.2%、20mg群では1.5%と再発率の低下がみられました。有害事象をみると重大な出血の発生がリバーロキサバン20mgで0.5%、10mg群で0.4%、アスピリン群で0.3%となりました。また、重大な出血ではないものの臨床的に重要な出血はそれぞれ2.7%、2.0%、1.8%となり、3群ともに同程度の発生率となりました。

このことから、リバーロキサバンの投与はアスピリンに比べ、静脈血栓塞栓症の再発を有意に低下させ、一方で出血のリスクは上昇しないことが示唆されました。

今後の研究により、より効果的で安全性の高い治療法が確立することが期待されます。

参照:NEJM

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