しかし、時として免疫系が自己を異物として認識し、自身の身体を攻撃してしまうことがあります。このとき、生体内には身体の構成成分に対する抗体が発現しています。この自己抗体が原因となり免疫系が自己を異物として誤認識し、自己免疫疾患が発症すると考えられています。
いくつかの自己免疫疾患が存在し、自己抗体の種類により症状や発現部位が異なります。全身性エリテマトーデスも、この自己免疫疾患のひとつです。
全身性エリテマトーデスとは
全身性エリテマトーデスでは、多くの場合、細胞の核成分に対する自己抗体が検出されます。発熱や倦怠感などの全身症状や関節炎などの関節症状、顔にできる赤い蝶型紅斑などの皮膚症状がほとんどの患者さんでみられます。
また、これらの症状に加えて様々な臓器や血管の障害が発生することも知られています。その中でも腎障害は合併しやすいと言われており、全身性エリトマトーデスにより腎障害があらわれる疾患をループス腎炎と呼びます。
ループス腎炎では血尿やタンパク尿がみられ、腎障害の程度によっては透析が必要となることもあります。ループス腎炎の治療は基本的にステロイド薬が用いられ、症状により服用するステロイドの量が決められます。ステロイド服用だけでは十分な効果がみられない場合やステロイドの副作用が強い場合には、タクロリムスやシクロスポリンAなどの免疫抑制剤が用いられることがあります。
ループス腎炎のあらたな治療薬
ループス腎炎に用いられる薬は前述したようにいくつかありますが、最近ではセルセプト(ミコフェノール酸モフェチル製剤)がループス腎炎の追加適応を取得しました。
セルセプトはこれまで臓器移植後の拒絶反応の抑制などに用いられてきた薬で、免疫抑制作用を有します。免疫に関わるT細胞やB細胞の合成を選択的に阻害し、増殖を抑制することで効果をあらわします。
ループス腎炎の治療には原則としてステロイド薬と併用して用います。
セルセプトを服用する上で注意しなければいけないことはいくつかありますが、妊娠を避けることもそのひとつです。セルセプトは流産や催奇形性が確認されており、服用前に妊娠していないことを確認することや服用中は避妊を徹底し、定期的に妊娠検査を行うことが必要となります。妊娠を希望し服用を中断した場合にも、服用後6週間は避妊を徹底することが必要となります。
セルセプトは免疫を抑制する薬のため、症状の改善に効果がある一方で、感染症のリスクが高くなります。日頃から感染症の予防に取り組み、もし体調の異変を感じたら受診することが必要です。また、感染症の他にも下痢症状や出血、貧血などの症状が出ることがあり、これらの症状が出た場合にはすぐに受診することが推奨されています。
治療の選択肢が増えたことにより、より患者さんに合った治療を選択することができるようになりました。今後も新しい治療薬の開発などにより、より効果的な治療法が誕生することが期待されます。
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