日本人が発見した鉛中毒 少量の鉛にも注意が必要

ちいさい子は色々な影響を受けやすく、大人では問題のない少ない量であったとしても時には、毒となってしまうものがあります。鉛もそのひとつです。

十分に成長した大人でも、摂取した量によっては鉛中毒を引き起こしてしまいますが、ちいさい子にとっては少ない量でも症状がでてきてしまうことが報告されているため注意が必要です。

鉛のからだへの影響

鉛は吸い込んだり、口のなかに直接はいることで、消化管から体内に蓄積していきます。鉛がからだの中に蓄積することで、貧血の原因となるヘモグロビンの減少がみられたり、血液の毒性、神経の毒性、腎臓の毒性があらわれます。

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鉛。 photo by WIKIMEDIACOMMONS

とくに身体が大きくなり、神経がじょじょに発達していく段階にある幼少期には、わずかな鉛成分でも影響をうけやすく、発達障害や注意力の欠如、知能指数の低下などにつながると言われています。

鉛中毒の発見

ちいさい子の鉛中毒の発見には、ひとりの日本人が大きな功績をあげています。

明治時代、「所謂脳膜炎」とよばれる小児の疾患が、多くみられていました。「所謂脳膜炎」は当時流行していた結核性脳膜炎に症状が似ていたものの、脳膜炎に特徴的な症状がなく、原因がわかっていませんでした。そこで、原因の究明に乗り出したのが平井毓太郎です。

平井毓太郎は、「所謂脳膜炎」の症状や文献から「所謂脳膜炎」が鉛中毒によるものであると推測し、解析を始めました。

当時日本では、鉛が入った白粉(おしろい)や散布剤、硬膏(皮膚にはって使う硬い外用剤)がよく使われていました。

身体の中に微量の鉛をみつけることは、困難を極めましたが、まわりの協力をえながら研究を重ね、ついに患児の臓器や骨に、鉛が含まれていることを証明しました。

このことから、「所謂脳膜炎」は鉛により引き起こされることがわかりました。あやまって白粉などから、ちいさい子が鉛を吸入し、慢性鉛中毒になることが証明されました。

その後、鉛を含んだ白粉の販売は中止されて、鉛中毒の発症も少なくなりました。

いまも鉛中毒には注意が必要

現代では、ちいさい子の鉛中毒は大幅に減少したものの、いまだに鉛を含んだ製品があるため、注意が必要です。

2016年には、アメリカの小児学会から、従来から規制していた鉛の半分の量でも障害を引き起こす可能性があるとして、小児期の鉛中毒の予防に関する声明が発表されています。

今まで、小児において心配されていた血中鉛濃度は10 mg/dl 以上と考えられていましたが、5 mg/dl 未満であっても学力の低下や注意の散漫、衝動性といった症状をひきおこす可能性があるとして、鉛の規制や鉛予防の強化を呼びかけています。


写真はイメージです。 photo by Max Pixel

現在では、鉛が含まれている製品はほとんどありませんが、ゼロではありません。古い建物や遊び道具、絵の具などに含まれている場合があるため、ちいさい子が口に含まないように注意が必要です。

ごく少量でも乳幼児にとっては大きな害となる物質であることを日頃から認識しておくことが大切です。

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