矯正医官を知っていますか? 矯正施設でおこなわれる医療

[矯正医官って何?]

「矯正医官」を知っているという人は、ほとんど、いないと思います。矯正医官という言葉が小難しく聞こえ、とっつきにくいですよね。

矯正医官の「矯正」とは矯正施設のことで、刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院のこと、「医官」は施設内で診療に携わる常勤のお医者さんです。簡単にいいかえると「刑務所内の診療所のお医者さん」です。

「矯正医官」は法務省によって管轄される国家公務員です。命じられてなるものではなく、医師自身が応募することで矯正医官になります。

矯正医官とは、実際に、どのような仕事をしているのでしょうか。

[矯正医官の仕事は]


写真はイメージです。 photo by WIKIMEDIACOMMONS

被収容者の中には、医療を必要とする人が少なくありません。診察する内容は、普通の病院や診療所と変わりませんが、特定の診療科に特化することなく、内科、外科、精神科などオールラウンドな診療が必要になります。幅広い疾患をみる総合診療医とも位置づけられるでしょう。

施設のなかで対応できない病気もでてきます。簡単な手術は施設のなかで行われますが、ある程度、入院する期間が必要な手術は医療刑務所に移送します。心臓や脳などの難しい手術については、連携している外部の病院で手術を行われます。

矯正施設という環境ゆえの問題も発生します。

施設内の作業を軽減するための詐病や症状を誇張する被収容者の見きわめ、矯正施設内で見逃されがちな重症な病気の早期発見、被収容者という特殊な立場のために構築しにくい信頼関係を築くことなども矯正医官にはかかせません。

また、矯正施設は、被収容者を社会から隔離するだけでなく、就労支援、再犯防止などの社会復帰も目的としています。その目的の前提として、心身ともに健康な状態であることが必要です。この観点からも、矯正医官が重要な役割を果たしています。

しかし、みずから、進んで矯正医療に取り組んでいる矯正医官にとって、「矯正医療」が崩壊するのではないかという問題が起きています。

[矯正医療の今後は]


写真はイメージです。photo byWIKIMEDIACOMMONS

現在、矯正医官の定員は332名ですが、実人数は、定員の8割を割っています。矯正医官が不在の施設もあります。矯正医官の絶対数が長期的に不足しているのです。

矯正医官の不足には、さまざまな理由がありますが、国も過疎地と並ぶ「もう一つの医師不足問題」としています。

2015年8月に、兼業を認め、フレックス制導入といった改革が行われましたが、さらなる仕組みの見直し、医療界や医療関連の教育機関での周知、一般社会での矯正医官の認知度の向上、矯正医官が効率的に働けるような地域医療との連携といった環境作りが望まれます。

人が生活するところでは、どこでも、医療は必要です。それは、矯正施設であっても同じことです。私たちも、矯正医官について、最低限、知ることは大事なのではないでしょうか。

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