「引きこもり」
「統合失調症」
これら2つの言葉を知っている方は、多いのではないでしょうか。どちらもテレビで特集が組まれ、耳目をあつめています。
特に、統合失調症は、発症率が100人に1人と言われ、決して珍しくない病気です。
では「引きこもり」と「統合失調症」を関連付けて考えたことがある方はどれくらいいるでしょうか。もしかしたら、ほとんどの方が頭に「?」を浮かべたかもしれません。
それもそのはずです。統合失調症の中でも、わかりにくいとされている「陰性症状」が引きこもりに関連している場合があるからです。
統合失調症の症状
「考えていることが筒抜けになっている」
「〇〇さんがそこにいる」
「馬鹿って言われてる」
これらの、あるはずがないものが見えたり(幻覚)、聞こえるはずがないものが聞こえる(幻聴)症状は、統合失調症の中で最も取り上げられているもので、「陽性症状」と呼ばれます。
みなさんは、熱が上がったり、咳が出たら「風邪かな?」と疑いますよね。普段「ないものがある」症状はわかりやすく、発見しやすいのです。
一方で、意欲減退、自分の内側に閉じこもってしまう自閉、感情が乏しくなる感情の平板化は「陰性症状」と呼ばれ、「あったものがなくなる」わかりにくい症状です。
15歳A君の例
では、「陰性症状」がどれくらいわかりにくいのか架空のエピソードを挙げて説明します。
A君は15歳の高校1年生です。元々おとなしい性格のA君は、入学早々、友人関係でつまずきました。そのおとなしい性格をからかわれ、いじめに発展してしまったのです。
夏休みを目前に、A君は学校へ行かなくなり、自室にこもるようになりました。両親が理由を聞くと「いじめられた」とA君は話しました。もうすぐ夏休みに入るし、学校から離れることで落ち着くなら、と両親は不登校を許可します。夏休みに入ると、次第にA君は自室で過ごす時間が多くなり、カーテンも閉め切るようになりました。
さて、このエピソードを読んで「統合失調症だ!」と疑えるでしょうか。
「いじめが原因だ」と思いますよね。
エピソードの続きです。
夏休みが終盤に差し掛かった頃、A君は両親と一緒にリビングで夕食をとっていました。そこでテレビをみてこう言うのです。
「僕のこと放送してる!!!」
両親は、異変に気付き、精神科を受診しました。診断は「統合失調症」でした。
解説
「僕のこと放送してる」と言った時には「陽性症状」が表れていました。しかし、カーテンを閉め切る生活を始めた頃には、すでに「陰性症状」である自閉が表れていたのです。
いじめのように、引きこもっても不思議ではない背景があると、「陰性症状」は余計にわかりにくくなります。
写真はイメージです。 photo by Wikipedia
特に、10代は「友人関係」、「勉強」、「先輩・後輩」の悩みなど、学校で抱えてくる悩みが多く、引きこもる原因として学校に目を向けがちです。
また、エピソードにあるような「夏休み」など長期の休みが節目にあるので、家で休むこと自体あまり問題視されない場合もあります。
統合失調症は、早期の発見と治療が重要です。
A君の場合は、比較的早く発見されたことになりますが、陰性症状が続き、数年間引きこもっていたケースもあります。
「引きこもっているな……」と少しでも感じたら、原因を決めつけず、早めの精神科受診をオススメします。
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