「体調が悪い訳でも無いのに、最近足元がふらつくようになってきた…」
「食事を運ぶ時静かに歩いてもコップに入った水や味噌汁をこぼしてしまう」
写真はイメージです。 photo by MaxPixel
タイトルにも表記したこうした症状、一見自分の足が悪くなって来たのかと思いがちですが、病気の原因はあなたの脳にあるかもしれません。
「脊髄小脳変性症」はどんな病気なのか?
今から12年前の2005年、ノンフィクション書籍からテレビでドラマ化もされた事のあるこの病気。
「どんな病気かは知らないけど、ドラマ見てたから病名だけは聞いた事ある…」
もしかしたら、そういった方もいらっしゃるかもしれません。
○で囲まれた部位が小脳 photo by WIKIMEDIACOMMONS
脊髄小脳変性症は病状によっては身体の脊髄にまで広がる事からこう呼ばれています。症状としては小脳が萎縮する事で歩行時にふらつきが起きる、呂律が回らない、三半規管に異常を来たし平行感覚を保てないなど。
こうした症状を総した運動失調症と呼ばれる症状を引き起こすのがこの病気の特徴です。
ご自身の身体にこうした異変を感じたら、それは脊髄小脳変性症の初期症状かもしれません。
写真はイメージです。 photo by WIKIMEDIACOMMONS
この病気は、ある日突然発症したり人への接触でうつる病気でもありません。発症形態は簡単に分けて2パターンだと言われています。
多系統萎縮症とかオリーブ橋小脳萎縮症といわれるその人個人から発症する例。
そしてもう一つは遺伝性によるものです。
この病気を発症されたご本人のご家族(ご両親・祖父母)の中で同じ病気を患っている方、その中から患者さんご本人への遺伝子の受け継がれ方で発症する例です。
遺伝性では、この遺伝子の受け継がれ方で表れる病状の重さも変わって来ます。
例えば、患者さんご本人のご家族にも同じ病気があった場合、家族には歩行にふらつきがある程度だとされても、受け継がれた遺伝子の度合いにより患者さんには歩行以外にも手足の麻痺や呂律の周り具合等が発症するという例もあります。
更に遺伝性という事は、患者さんご本人にお子さんがいらっしゃる場合、その将来お子さんへ病気の遺伝が起きない無いとは残念ながら言い切れません。
人間の遺伝子は50%の割合でご両親お二人の遺伝子がお子さんへと受け継がれていきます。
患者さんご本人だけでなく、長い将来の先をも見ていく…そういったところがこの病の難しいところであり、厳しさといえるでしょう。
では、この病気はどうやったら治るのか?
残念ながら、現在の医学では確実な治癒方法はおろか完治させる術はまだ見つかっていないといわれています。
国の難病指定にもされているこの病気、日本全国で発症している患者数が少ない事もありその治療法にはまだ解明されていない事が多くありますが、発症の原因の遺伝子から治療方法も日々研究され、昔のように全く治療の手が無いという時代からは進んで来ているのも事実です。
この病気は一度発症したら現状の症状がそのまま続くのではなく、数年かけてゆっくりと進行します。
初めは足元のふらつきだけだったのに、数年後には呂律も回らなくなって来た…そうした進行具合なので、この病気は主治医の先生との経過観察が重要になってくると言えるでしょう。
実際、この病気になられている患者さんは、「病気への治療」というより主治医の先生から処方される薬により「病気の進行度合いを緩める」「病状を和らげる」といった方法で経過を見守りつつ日々すごしています。
写真はイメージです。 photo by pxhere
この記事の最初に記載したふらつきや呂律だけでなく、この病気で発見されている症状は数十あるといわれています。
なので、この病気を患った患者さん本人だけで無く、周りのご家族や友人、日々の生活の中で昨日までと身体の感じ方が違う気がする?といったどんな小さい事でも、気がついたら主治医の先生に積極的に相談して対応していくのがベストだと言えるでしょう。
病気とはどう接していったらいいのか?
身体的に歩行や行動に制限がされて来ると、横に寝た状態からの起き上がり、椅子から立ち上がる・座る等、何かを行動する際の初めの一歩にふらつき、転倒する危険が高まります。
患者さんおお1人で行動される際は補助器具を使用されたり、家の壁を伝って歩いたり…。壁に手すり等を設置できるお住まいであればそうした補助設置し、使用する事で怪我をするリスクを回避する事が出来ます。
前に記述したように現在の日本には確かな治療薬はまだありません。
患者さんご本人は自分の身体が思う様に動かず精神的にも肉体的にも悔しく辛い日々を過ごされていると思います。
もっと重度な症状になれば身体が麻痺し、呂律もほぼ回らなくなる…。ですが、ご家族や周囲の方とのコミュニケーションは十分に取れます。
患者さんは焦らず、ゆっくりで良いのでご自身の意思を相手に伝えてあげて下さい。そして周囲で患者さんを支える方もその意思を尊重してあげて下さい。時間はかかるかもしれませんが、患者さんは自分の想いをあなたへ伝えようとしています。
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