関節リウマチに対するトファチニブ単独療法とメトトレキサート併用療法の比較

関節リウマチは、関節の腫れや痛みを生じ、後に関節の変形を引き起こす疾患です。30歳以上の約1%の人に発症すると言われており、男性よりも女性の患者さんが多いのが特徴です。進行すると生活に大きな支障がでることもあるため、早期に適切な治療を行うことが重要です。


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関節リウマチとは

 関節リウマチでは、免疫の異常により関節が炎症を起こし、軟骨や骨の破壊が進んでいきます。破壊が進行すると関節が変形し上手く動かなくなり、QOLの低下につながっていきます。

関節リウマチは、まず滑膜組織の炎症からはじまります。滑膜組織は、関節をなめらかに動かす役目を担う関節液をつくっている組織です。免疫の異常により、滑膜組織にリンパ球やマクロファージが増えると、炎症性サイトカインであるTNFαやIL-6などの物質が多く生産され、炎症の悪化を引き起こし、腫れや痛みが生じます。また、炎症性サイトカインなどの作用により、骨を壊す細胞が活性化され、骨や軟骨の破壊が進行していき、関節の変形を引き起こします。

関節リウマチは手足の関節で起こりやすく、左右の関節で同時に症状がでやすいことが特徴です。腫れや痛みなどの関節に起こる症状の他にも、微熱や疲れ、貧血などの全身症状を生じることもあります。


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関節リウマチの治療法

 関節リウマチの治療は、薬物治療が基本となります。必要に応じて、リハビリテーションや手術が行われることもあります。

薬物療法では、免疫抑制作用または調節作用のある抗リウマチ薬や、炎症性サイトカインやT細胞の働きを直接抑える生物学的製剤、免疫細胞の活性化を抑えるJAK阻害薬、抗炎症作用を持つステロイド薬、痛みに応じて非ステロイド性消炎鎮痛薬が用いられます。

以前は、非ステロイド性消炎鎮痛薬から始めて段階的に効果の強い薬に上げていく方法がとられていましたが、近年では、関節の破壊を防止するために早期から抗リウマチ薬が使用されるようになりました。抗リウマチ薬にはそれぞれ特徴のある数種類の薬があり、抗リウマチ作用の強さが異なるため、患者さんの症状や進行度合いにあった薬が選択されます。

抗リウマチ薬のひとつであるメトトレキサートは難治性の関節リウマチに多く使用されていましたが、アメリカでは抗リウマチ薬の第一選択薬となっており、日本でも早期からメトトレキサートを使用することが多くなってきています。抗リウマチ薬を使用しても十分な効果がみとめられない場合には、生物学的製剤やJAK阻害薬の追加が考慮されます。

JAK阻害薬単独療法と抗リウマチ薬併用療法との比較

 JAK阻害薬は最近発売された薬であり、炎症にかかわる細胞内のシグナル伝達を阻害するという新しい機序をもつ薬です。

炎症性サイトカインが免疫細胞を刺激し、シグナルが伝わる際にJAKという酵素が関与することが知られています。JAK阻害薬は、JAKの働きを阻害することにより、シグナル伝達を遮断し、炎症反応を鎮める作用をもつ薬です。

抗リウマチ薬などによる治療でも十分な効果が得られない場合に使用されますが、今まで、JAK阻害薬単独投与と抗リウマチ薬併用投与の有効性を比較した研究はされていませんでした。そこで、「Efficacy and safety of tofacitinib monotherapy, tofacitinib with methotrexate, and adalimumab with methotrexate in patients with rheumatoid arthritis (ORAL Strategy): a phase 3b/4, double-blind, head-to-head, randomised controlled trial」では、JAK阻害薬であるトファシチニブ単独とトファシチニブ+抗リウマチ薬メトトレキサート併用で効果を比較し、報告しています。また、併用することで効果が高まることがしめされている生物学的製剤アダリムマブ+リウマトレックスと前述した2群との比較も行われています。

メトトレキサート(15~25mg/週)で十分な効果がえられなかった関節リウマチ患者さんを対象に、トファシチニブ単独群(5mg1日2回)、トファシチニブ(5mg1日2回)+メトトレキサート群、アダリムマブ(40mg隔週皮下投与)+メトトレキサート群に分け、6カ月間にわたり治療を継続し、有効性を比較しています。有効性の判断には、関節リウマチ活動性の評価基準であるACRが用いられています。

結果、ACRの基準で50%改善した割合は、トファシチニブ単独群で38%、トファシチニブ+メトトレキサート群で46%、アダリムマブ+メトトレキサート群で44%となり、トファシチニブ+メトトレキサートとアダリムマブ+メトトレキサートでは有効性に差はありませんでした。一方で、トファチニブ単独群と他2群を比べると非劣性をしめすことはできませんでした。有害事象の発生をみると、トファシチニブ単独群で6%、トファシチニブ+メトトレキサート群で7%、アダリムマブ+メトトレキサートで9%の患者さんが、副作用により治療を中止していました。また、試験期間中にトファシチニブ単独群の1%(2名)が死亡していました。

これらのことから、メトトレキサートの治療では効果が不十分だった関節リウマチ患者さんに対して、追加してトファチニブまたはアダリムマブを併用しても2群に効果の差はみられないものの、トファチニブ単独に切り替えると、併用に比べて効果が劣ることが示唆されました。


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関節リウマチは進行すると、運動機能の低下などから生活に支障をきたすため、適切な治療が必要となります。近年では研究が進み、進行速度を抑える薬や治療法も続々と開発されています。今後も、より効果的な治療法が確立されることが期待されます。

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