手が震えて字をうまく書けなくて悩んでいませんか  

手が震えて字が書けない・・・


字を書こうとすると手が震える、手がこわばることはありませんか。そのために、字を書けなかったり、書いた字ががくがくになってしまい悩んでいませんか。それは「書痙(しょけい)」かもしれません。

書痙の大きな特徴は、字を書こうとするときだけに手が震えてしまうということです。箸を使って食事する、パソコンでキーボードやマウスを操作する、ボタンをはめるなどのほかの細かい作業することはできるのが特徴です。

書痙の典型的な症状をいくつかあげてみましょう。

・銀行や役所の窓口などで受付の人の前で書類をうまく書けない。

・ホテルのフロントでチックインするときにフロントマンの前で宿泊名簿などをうまく書けない。

・会社でほかの社員の前で字をうまく書くことができない。また、後ろに立たれていても書くことができない。

・書いた字ががくがくしていて読むことが難しい。書く字が小さくなってしまう。

・うまく書くことができないことを気にしてしまい、何を書くか忘れてしまうことがある。


症状は人によって異なります。人と対面している時、人が周りにいる時、どんな時でもうまく書くことができない。書きはじめからうまくいかない、だんだんとうまく書けなくなる、どうにか書くことはできるが字がどんどん小さくなってしまうなどさまざまです。

書く方の腕をもう片方の手で支えないと書けないという方もいます。ふるえをとめようとして字を書こうとするために手に力が入って痛みがでることもあります。

写真はイメージです。photo by irasutoya


書くということをうまくできないことは、社会生活を送っていく上で大きな障害になります。あまり知られていない場合もあり、周囲からの理解をえられないこともあります。

書くことに支障をきたす書痙の原因とはなんでしょうか。

書痙の原因はなに


はっきりとした書痙の原因は分かっていません。たとえば、人前だけで書痙が現われる場合と人がいない時でも書痙が現れる場合があります。

従来は精神的な要因だと考えられていました。文字を書こうとしていることを見られていることへの極度の緊張状態、「うまく書こう、うまく書けるのかな」といった精神的プレッシャーからくる予期不安、対人恐怖症や社会不安障害などの精神疾患との関連も指摘されていました。

しかし、すべてが精神的な問題と言い切れず、近年の研究では、筋肉の緊張や動作をつかさどる脳内運動のメカニズムに、なんらかの障害がおきる「ジストニア」という病気であるということがわかってきました。そのために自分の意志とは関係なく筋肉の収縮や緊張が生み出されます。これを不随意運動といいます。

ジストニアは、精神的に緊張した状態で症状が悪化しやすいことがわかっています。極度の緊張状態におかれることが、書痙の発症の引き金ではないかとも考えられています。

ジストニアとはからだがねじれる、硬直する、けいれんするといった症状がおきる病気です。からだの広範囲にわたって発症する「全身性ジストニア」、からだの一部だけ発症する、「局所性ジストニア」に分けられます。

書痙は、局所性ジストニアの一部とされ、幅広い年代にみられます。

また、特定の職業に多くみられる「職業性ジストニア」と呼ばれるものもあります。書痙は、頻繁に文字を書くことが多い職業である教師、速記者、小説家、設計士、会計士、事務員に発症しやすく、職業病とも言われています。

他にはピアニスト、ギタリスト、バイオリニストなどが楽器演奏だけできなくなってしまうフォーカルジストニア、ゴルファーがパッティングのみできなくなってしまうイップスなどが知られています。

ジストニア自体の原因はわかっておらず、そのため、書痙がジストニアだけとはいいがたいところもあり、精神的な要因が大きい場合もあります。

写真はイメージです。photo by pixaboy


原因がはっきりわからない書痙について、どのような治療法があるのでしょうか。

書痙の治療法は


書痙は、原因がわかっていないために確立された治療法はありませんが、いろいろな治療法があります。

・薬物療法

患者さんの状態に合わせて抗コリン剤、抗精神病薬、末梢性筋弛緩薬、抗不安薬、抗うつ薬を使用します。心理療法と併用して行う場合もあります。

・漢方薬治療

漢方での考え方はストレスによって「肝」の働きが低下する事で、筋肉の収縮や緊張など異常がみられると考えます。肝血を補う効果がある生薬を服用します。

・心理療法

不安な場面を回避するのではなく直面することによって不安を解消する「認知行動療法」、リラックスによって筋緊張を低下させる「自律訓練法」、書痙ということをあるがままに受け入れる「森田療法」、手指筋群の緊張度を筋電図を用いて表示しながら書く練習をする「バイオフィードバック療法」などがあります。

・ボツリヌス治療(ボトックス注射)

ボツリヌス毒素の筋弛緩作用を利用して、緊張した筋肉をほぐし筋肉の動きを改善させるものです。どこの筋肉に注射すべきかなど細かく調べる必要があります。

写真はイメージです。photo by irasutoya


・外科的治療

定位脳手術といって脳深部刺激療法、視床凝固術といった治療方法があります。

「脳深部刺激療法」はパーキンソン病の治療に用いられているものです。脳内の特定な場所に電極を埋め込み、胸の皮膚の下に埋め込んだ刺激発生装置をつなぎます。

「視床凝固術」は東京女子医科大学が中心に行っている治療法で、頭蓋骨に1cm程度の穴を開けて器具を挿入して、視床Vo核といわれる部分を約80℃の熱で凝固させ手術する方法です。

局所麻酔で患者さんが意識のある状態で手の動きを確認しながら、該当する部分をピンポイントに凝固させます。非常に高度の技術が要求される手術です。

ほかにも、MRI下集束超音波治療という新しい治療方法がありますが、まだ、定まった治療方法ではありません。

どの治療方法にも個人差があります。お医者さんと相談しながら治療を進めていきましょう。

書痙になったら


書痙は、誰でもなる可能性がある病気です。ある日、突然、発症することがあります。性格的な側面からみると「まじめ、完璧主義、几帳面」の方にみられる傾向があります。また、「字がうまい人」がなりやすいこともわかっています。人前で下手な字を書くことはできないというとらわれからくるものと考えられています。

手が震えて字が書けないといった症状があらわれた場合には、書痙以外で手が震えて字がかけないという病気もありますので、神経内科や脳神経外科のある医療機関に相談にいきましょう。

写真はイメージです。photo by pixaboy


書痙は、精神的に緊張した状態におかれるのが良くありません。緊張を生む原因としてあげられるのはストレスです。社会生活を送っていく上でストレスを避けて生活していくことは難しいことです。散歩などなにげないことで、ストレスを解消することもひとつの手段です。

書痙になると治療を受けても元のように文字を書けるようになるのは、なかなか難しいといわれていますが、治療することで症状を少しでも軽くして、「文字が読めればいいや」、「文字を書けなくてもどうにかなった」、「文字を書く機会は意外と少ない」など書くことに対する気持ちを、軽く持つことで症状の軽減につながります。

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