中年期までの体重変化がリスク因子に?!

肥満は多くの疾患を招く要因となり、体重や腹囲などがリスク因子の基準として多く用いられています。しかし、現在の体形に目が向けられている一方で、若いころと現在との体重差も重要であるという意見もあり、体重変化と疾患との関連性について研究がすすめられています。

肥満と疾患の関連性

肥満は、正常値にくらべて体重が多い状態、あるいは体脂肪が必要以上に蓄積した状態のことをさします。


写真はイメージです。 photo by photoAC

肥満により、腰痛や膝痛などの関節障害が起きやすくなることや、睡眠時無呼吸症候群と関連していること、多くのがんのリスク因子となることなどが指摘されています。また、生活習慣病との関係にも注目が集まっており、とくに、内臓脂肪が多いと、生活習慣病の発症リスクが高まることが知られています。

脂肪は、エネルギーを貯蔵する役割の他にも、いくつかの生理活性物質を分泌することがわかってきています。通常は、生体維持に重要な役目を果たしていますが、内臓脂肪が過剰に蓄積すると、生理活性物質の異常な分泌が引き起こされ、血糖値や脂質、血圧が高くなりやすくなると考えられています。

高血糖や高血圧、脂質異常などの危険因子が増えるほど、動脈硬化が進み、冠動脈疾患や脳卒中などの命に関わる疾患が起こる可能性が高くなります。そのため、日ごろからバランスのとれた食生活や適度な運動を行うことが推奨されています。

体重変化と発症リスク

健康な生活を長く送るためには、生活を見直し、疾患の予防に努めることが大切となりますが、現在の体重だけではなく、若いころからの体重変化にも目を向けることが重要とする意見があります。

そこで、「Associations of Weight Gain From Early to Middle Adulthood With Major Health Outcomes Later in Life」では、中年期までの体重増加とその後の疾患発症との関連性について報告しています。

計118140人の方を対象に、成人早期(女性;18歳、男性21歳)から成人中期(55歳)までの体重変化と、中期以降の心血管疾患、がんなどの疾患発症率との関係について解析しています。

その結果、2型糖尿病の発症率は、女性の体重不変群(2.5kg≥減少または2.5kg>増加)で、110人/10万人・年であったのに対し、中等度変化群(2.5kg≤から10kg>)では、207人/10万人・年となり、中等度変化群でリスクの増大がみられました。男性も同様の結果がみられ、不変群で147人/10万人・年、中等度変化群で258人/10万人・年となりました。高血圧の発症率をみても、女性の不変群2754人/10万人・年に対し、中等度変化群では3415人/10万人・年となり、男性でも不変群2366人/10万人・年、中等度変化群2861人/10万人・年と、中等度変化群で増加がみられました。同様に、心血管疾患や肥満関連がんの発症でも中等度変化群で発症率の増加がみられました。

また、慢性疾患や認知機能、身体障害などを発症せずに健康に過ごすことができた割合は、不変群では女性27%、男性39%であったのに対し、中等度変化群では女性24%、男性37%となり、中等度変化群で低下がみられました。

これらのことから、中年期までの体重変化は、慢性疾患のリスクを増加させることと健康寿命を短縮させる可能性が示唆されました。


写真はイメージです。 photo by photoAC

疾患の予防と言うと現在の体重に目を向けがちですが、今回の報告から、成人早期から中年期にかけての体重の変化も、さまざまな疾患のリスク要因となる可能性がしめされました。

長く健康に暮らすために、若いうちからできるだけ体重を維持するよう心がけましょう。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました