ベンラリズマブの高い有効性が期待できる因子とは?!

近年では、個々人の遺伝子発現や、薬の効果を期待できる予測因子の解明が進んできており、患者さん一人一人にあった医療が受けられるようになってきています。

そのような状況のなか、今回、ベンラリズマブのより高い効果が期待できる予測因子が報告され、患者さんに適した治療薬を選択する際の手助けとなることが期待されています。


写真はイメージです。 photo by photoAC

ベンラリズマブと好酸球

気管支喘息患者さんでは、多くの炎症細胞の発現がみられ、それらが気道の炎症や過敏性に関与しています。好酸球もそのひとつであり、患者さんの約半数は、好酸球により症状の悪化や呼吸機能の低下が引き起こされるといわれています。

そこで開発されたのが、ヒト化抗インターロイキン5(IL-5)受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブです。コントロール不良の重症気管支喘息患者さんに対する治療薬として臨床研究がすすめられています。

ベンラリズマブは、IL-5受容体が発現している好酸球に結合し、ADCC活性(抗体が標的細胞の抗原に結合すると、免疫細胞を呼び寄せ、標的細胞を除去する)を高めることで、好酸球を除去します。

いくつかの研究により、喘息増悪頻度を減少させることや呼吸機能、喘息症状を改善すること、ステロイド減量に有効であることなどが報告されています。


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ベンラリズマブの高い有効性が期待できる因子とは

今回、「Predictors of enhanced response with benralizumab for patients with severe asthma: pooled analysis of the SIROCCO and CALIMA studies」では、第三相臨床試験であるSIROCCO試験およびCALIMA試験の解析をすすめ、ベンラリズマブの高い有効性が期待できる予測因子を同定したことを報告しています。

これらの試験では、12歳以上のコントロール不良の重症気管支喘息患者さんを対象に、ベンラリズマブを4週ごとに投与する群と8週ごとに投与する群、プラセボ群に分け、ベンラリズマブの有効性や安全性を分析しています。今回は、ベースラインの血中好酸球数や過去の増悪頻度などもあわせて解析し、それらの因子と年間喘息増悪率との関係性を検証しています。

その結果、プラセボ群では年間喘息増悪率が1.16であったのに対し、ベンラリズマブの8週毎投与群では0.75、4週毎投与群では0.73と有意な低下がみられました。プラセボ群と比べたベンラリズマブ投与群の年間喘息増悪率の差は、ベースラインの血中好酸球数が高い、または過去の増悪頻度が多いほど、大きくなる結果がえられました。とくに、ベースラインの血中好酸球数が高く、且つ過去の増悪頻度が多い患者さんで、プラセボ群との年間増悪率の差がもっとも大きくなりました。

このことから、ベースラインの好酸球数が高い、または過去の増悪頻度が多いほど、ベンラリズマブのより高い治療効果がえられることが示唆されました。


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今回の結果を受け、アストラゼネカでは、ベンラリズマブでの治療効果が最も期待できる、コントロール不良の重症気管支喘息患者さんを予測する主な因子が同定され、ベンラリズマブの高い有効性が確認されたと発表しています(プレスリリースより)。

高い治療効果が期待できる因子が同定されたことにより、患者さん個々人に、より適した治療法を選択することが可能となっていくことが予想されます。ベンラリズマブは、日本や欧米など数か国で承認申請がされており、今後の動向に注目が集まります。

 

 

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