妊婦さんは猫に触っちゃいけないの!?〜先天性トキソプラズマ症について〜

前回オウム病が妊婦に感染し死亡した事例があることをご紹介しましたが、今回は妊娠している女性に感染することで胎児に影響を与える可能性のある人獣共通感染症をご紹介します。

その名はトキソプラズマ症。この病気は成人にも感染するのですが、妊婦に感染した場合胎児の流産や脳性麻痺など重篤な症状を起こすことが知られていて、妊婦さんは是非知っておきたい病気です。


写真はイメージです。 photo by pixabay

トキソプラズマ症とは?

トキソプラズマ症とは、トキソプラズマという原虫が感染することによって起こる病気です。この寄生虫はほぼ全ての哺乳類に経口感染し、最終宿主は猫科の動物です。そのため猫の糞に含まれているオーシスト(虫卵のようなものです)を飲み込んだり、生ハムなどの生肉を食べることにより感染します。健康な成人が感染するとほとんどが不顕性感染になりますが、今まで一度もトキソプラズマに感染したことのない人が、妊娠中に感染することにより、先天性トキソプラズマ症が起こります。


トキソプラズマの急増虫体のギムザ染色 photo by wikipedia

先天性トキソプラズマ症とは?

先天性トキソプラズマ症は妊婦に感染したトキソプラズマが、胎盤を経由して胎児に感染することにより起こります。ただし、妊婦にトキソプラズマが感染しても全ての胎児が胎内感染を起こすわけではなく、その確率は10000人の出生のうち1.26人と推計されています。

胎児の症状としては、脳性麻痺、髄膜炎、精神・運動機能障害、視力障害、流産や死産が知られています。妊娠後期になると胎児への感染が起こりやすくなりますが、妊娠初期に感染した場合程重症度が重くなることが知られています。

先天性トキソプラズマ症の治療と予防

妊娠中にトキソプラズマの感染が疑われた場合には、血液検査によりトキソプラズマ抗体を測り、感染が妊娠中であったか妊娠前であったかを調べます。感染が妊娠中に起こったものであり、先天性トキソプラズマ症が疑われた場合にはアセチルスピラマイシンを使う場合がありますが、適用外使用なので担当医と相談をしてください。

予防に関しては以下のことが推奨されています。

  1. 生肉はよく加熱すること(日本では特に豚からの感染が多い)
  2. 猫の糞尿の処理時は手袋を着用し、しっかりと手を洗うこと
  3. ガーデニングや畑仕事などでは手袋を着用すること(オーシストが土の中に存在することがあるため)


写真はイメージです。 photo by pixabay

最後に

猫に普段から触れている人はすでにトキソプラズマに感染していることが多く、先天性トキソプラズマ症を気にする必要はないとも言われていますが、実際に罹患した場合胎児に重大な障害が残る病気です。できれば一度妊娠前に、トキソプラズマ抗体の検査を受けることをお勧めします。

 

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