慢性片頭痛にたいするフレマネズマブの予防効果

日本には、片頭痛で悩む患者さんが約840万人いるといわれており、比較的若い女性に多くみられる疾患です。症状が発現すると、日常生活にも支障をきたす場合もあることから、症状が出たときに行う急性期の治療だけではなく、症状がでないようにする予防治療も重要となります。


写真はイメージです。 photo by photo AC

片頭痛の急性期治療と予防治療

片頭痛は、片側あるいは両側のこめかみから目の周辺にかけて、ズキンズキンと痛むのが特徴です。そのほか、光や音に過敏になる、吐き気などの症状をともなうこともあります。(詳しくはこちらを参照)

なかでも、慢性片頭痛は、1ヶ月の中で15日以上に頭痛がみとめられ、そのうち8日以上で片頭痛が存在する病態と定義されており、非常に生活支障度が高く、治療が困難となっています。

片頭痛の治療は、頭痛発作が起きたときになるべく早く症状を抑える急性期治療と、発作を起こりにくくする予防治療があります。急性期治療が基本となりますが、発作の回数が多い場合や生活支障度が高い場合には、予防治療もあわせておこなわれます。

急性期治療では、おもにトリプタン製剤が用いられ、そのほか、NSAIDsやアセトアミノフェン、エルゴタミン製剤が使われることもあります。

予防治療では、カルシウム拮抗薬であるロメリジンが保険適用をもっており、そのほか、β遮断薬や抗てんかん薬,抗うつ薬が使用される場合もあります。予防薬は、急性期に服用する薬とは違い、頭痛がなくても定期的に服用することが必要となります。


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新たに効果が期待されている片頭痛予防薬

現在、新たな片頭痛の予防治療薬として、開発がすすめられているのが、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene-related Peptide;CGRP)に対するモノクローナル抗体です。

CGRPは、神経ペプチドで、中枢神経および末梢神経C線維およびAδ線維に存在することがしられています。神経終末から放出されると血管拡張や炎症を引き起こし、中枢神経では疼痛シグナル伝達の調節に関与していると考えられています。

経静脈的に投与すると,片頭痛様の発作を誘発することや、片頭痛発作時には血中CGRP 濃度が上昇すること、CGRP拮抗薬が抗片頭痛効果をしめしたことなどが報告されており、CGRPが片頭痛の発現に重要な役割をしていると考えられています。

そこで、「Fremanezumab for the Preventive Treatment of Chronic Migraine」では、抗CGRP抗体であるフレマネズマブの片頭痛予防効果について検討しています。

慢性片頭痛患者さんを対象に、フレマネズマブを3か月ごとに投与する群と1か月ごとに投与する群、プラセボ群にわけ、初回投与後 12 週の時点での,月の平均頭痛日数ベースラインからの平均変化量を解析しています。

その結果、月の頭痛日数の平均減少量は、3か月ごとのフレマネズマブ投与群で 4.3±0.3 日,1か月ごとの群で 4.6±0.3 日,プラセボ群で 2.5±0.3 日となり、有意差がみられました。月の頭痛日数の平均が50%以上減少した患者の割合は,3か月ごとの投与群で38%,1か月ごとの群で41%,プラセボ群で18%となりました。有害事象については、肝機能異常がフレマネズマブ群で1%(5例)、プラセボ群で1%未満(3例)に発生しました。また、フレマネズマブの注射部位反応の頻度が高かったことも報告されています。

このことから、慢性片頭痛の予防治療としてのフレマネズマブは、プラセボに比べて、頭痛発作の回数を低減することが示唆されました。しかし、フレマネズマブの長期の効果持続性と安全性については,さらなる研究が必要であると著者らはのべています。


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片頭痛の予防治療として、あたらしく、抗CGRP抗体が注目されています。日本では、大塚製薬が、フレマネズマブの日本国内での開発・販売独占的ライセンス契約を締結したことを発表しており、今後、片頭痛で悩む患者さんの症状改善に寄与することが期待されています。

 

 

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