潰瘍性大腸炎に対する日本初の泡状注腸製剤

潰瘍性大腸炎は、20才前後の若年層に好発する慢性の炎症性腸疾患です。明確な発症原因はいまだ解明されておらず、下痢や腹痛などの症状によりQOLの低下を引き起こすことから、原因の究明と新しい薬の開発がのぞまれています。

潰瘍性大腸炎の症状と薬物治療

潰瘍性大腸炎は、「主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異的炎症」と定義されています。炎症は、肛門から口側にむけて連続的に発現するのが特徴です。


写真はイメージです。 photo by silhouette ac

症状は、おもに下痢や血便、腹痛がみられ、改善(寛解)と悪化(再燃)を繰り返しながら経過していきます。

発症の原因は明らかになっていませんが、原因のひとつとして、遺伝的要素や環境要因など複数の因子が組み合わさることにより、免疫が過剰に働き、大腸に炎症が生じると考えられています。

そのため、潰瘍性大腸炎の治療では、病態に応じて、炎症を抑える薬や免疫を正常に戻す作用のある薬が使用されます。(詳しくはこちらを参照)

潰瘍性大腸炎に対する新たな注腸製剤

現在、複数の潰瘍性大腸炎治療薬が発売されていますが、2017年9月、新たにブデソニド(商品名;レクタブル2 mg注腸フォーム)の製造販売が承認されました。重症をのぞく潰瘍性大腸炎に適応をもち、通常、成人は1回あたり1プッシュ、1日2回直腸内に噴射します。

ブデソニドは、ステロイド剤の一つであり、今回承認されたレクタブルの他にも、気管支喘息治療薬(商品名;パルミコート)やクローン病治療薬(商品名;ゼンタコート)としても以前から臨床で使用されている成分です。

ブデソニドは、局所で強力な抗炎症作用を発揮する反面、肝臓で代謝されやすく(初回通過効果を受けやすい)、全身への作用は弱いという特徴を持っています。そのため、今回承認されたレクタブルは、直接直腸に投与する製剤となっており、初回通過効果を回避し、局所で効果を発揮する仕組みとなっています。

また、レクタブル2 mg注腸フォームは、日本で初めての泡状の注腸製剤となっており、今までの注腸製剤で指摘されていた課題を改善することが期待されています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

以前から、注腸製剤は潰瘍性大腸炎の治療に用いられてきましたが、液剤のため肛門から漏れて下着についてしまうことや、横になって注入しなくてはいけないなどの問題が指摘されていました。

そこで、レクタブルでは、泡状の製剤にすることで、直腸およびS状結腸に到達した薬剤を留まりやすくする製剤工夫がなされています。薬剤が留まることで液垂れしにくく、立ったままの投与も可能となっています。

国内における第Ⅲ相試験では、6週間での粘膜治癒率が、レクタブル群で32.8%、プラセボ群で3.2%となり、プラセボにたいする優越性がしめされました。

一方で、試験中に54.3%の患者さんに血中コルチゾール減少や血中コルチコトロピン減少などの検査値異常を含む副作用が認められており、投与中は病態を十分に観察し、投与開始6週を目安に必要性を検討することが使用上の注意としてあげられています。

 

レクタブルは、2017年3月の時点で世界36ヶ国において承認されており、日本でも「ブデソニドの早期承認を求めるIBD患者会」から早期開発要望が出されていました。

今回、日本でもレクタブル2 mg注腸フォームが承認されたことにより、潰瘍性大腸炎の患者さんの症状改善に寄与することが期待されています。

 

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