疑わなければ診断は難しい ペットとの接触情報が重要なパスツレラ症

突然ですが、みなさんはペットを飼っていますか?

現代では、2人以上の世帯では、半分近くの人がなんかしらのペットを飼育しているといわれ、3万年前の石器時代の遺跡にもホラアナグマの飼育跡がみられていますが、そんな愛着のあるペットも医療の世界では、重要な感染源であることが知られています。

人獣共通感染症、人畜共通感染症やズーノーシスという言葉で知られていますが、当サイトでも以前、アニサキスのズーノーシスについて取りあげています。今回は、年々症例数が増えているパスツレラ症についてとりあげます。

パスツレラ症の特徴

住居のビル化、個室化にともない、感染源となる犬、猫が昔にくらべてより身近な存在になり、犬の口腔内には約75%、猫の口腔内の保有率はなんと約100%と高率に存在するパスツレラ属菌の感染も徐々に増加しています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

パスツレラ症の内わけとしては、引っ掻きや咬傷による皮膚科領域の感染が、50%近くあり、それに引き続いて呼吸器系・髄膜炎などのその他の感染症があります。

皮膚症状の場合、発赤・疼痛をともない、軽い病気では、皮膚炎でおさまりますが、その他の病気を合併した重症例では、敗血症などの重篤な病気にまで進展します。

呼吸器系の疾患の場合にも、軽い症状ではノドのイガイガ感から、痰のでてくる気管支炎、持病のあるかたの場合には、さらに肺炎などに発展していきやすくなります。

パスツレラ症の診断と治療

飼育しているペットによる、ひっかき傷の場合には、原因が明確ですが、一見ペットとの関連があまり疑われないような髄膜炎や感染症の場合には、ペットとの関連のあるパスツレラ症を疑わないとなかなか早期の診断は難しくなります。

検査の方法としては、膿や尿といった感染部位からの検査材料からパスツレラ属菌を分離培養することで、診断へとつなげていきます。治療には、抗菌薬を使用し、現時点では多くの抗菌薬で治療が可能であると言われています。

つまり、しっかりと早期にパスツレラ症を疑い、疑った場合には、早期に抗菌薬を使用していくことが肝腎になります。

パスツレラ症の予防

パスツレラ症の予防には、いくつかありますが、

・ペットを寝室に入れない
・ペットとキスをしない
・ペットの爪切りの際には、子供だけにしない

ことなどが挙げられます。

特に、子どもはペットのひっかき傷に無関心なことがあるため、爪を切る際には、必ず成人が同席するようにしてください。


写真はイメージです。 photo by pixabay

最後に

1980年台には、30例ほどしか臨床研修病院で報告のなかったパスツレラ属菌ですが、時代の変化とともにペットがより身近になってきて、2010年台には、20倍の600例以上の報告がなされています。

以前は飼育されていた動物も、ペットから、添い遂げるパートナーになり、今後もより身近な存在になっていくでしょう。そのような環境のなかで、ペットとより良い関係を築いていくためにもズーノーシスの予防・早期発見が大切になっていきます。

 

 

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