アナフィラキシーの自己注射薬「エピぺン」 エピぺンの作用、効果、使用タイミングは

わたしたちのからだに細菌やウィルスなどの外敵が入ってきたときには、「免疫機能」が働いてわたしたちのからだを守ってくれています。

この免疫機能が、食べ物や薬品など本来は害のないものに過剰に反応してしまう症状が「アレルギー」です。なんらかのアレルギーを持っている方も多いのではないでしょうか。

アレルギーの原因になるものが、からだの中に入ってきて短時間で急激に症状を悪化する場合があります。これを「アナフィラキシー(即時型アレルギー反応)」といいます。

写真はイメージです。photo by irasutoya

症状が重い場合には、「呼吸困難、血圧低下、意識障害」をもたらして命が危険な状態となります。医学的に「ショック」状態とよび、アナフィラキシーによって引き起こされたショック状態が「アナフィラキシーショック」です。

アナフィラキシーの症状を緩和する自己注射薬「エピペン」

アナフィラキシーを発症した場合には症状が急速に悪化するため、できる限り早く治療を受けないと命に危険が及ぶ場合があります。

しかし、救急車を待っていては症状がどんどん悪化します。いかに早くお医者さんの治療を受けるかが鍵になります。

そのためには、一時的にでもアナフィラキシーの症状を抑える必要がでてきます。この役目を担うために開発されたのが「自己注射薬エピペン」です。

エピペン注射薬photo by wikimedia

エピペンは、お医者さんの治療を受けるまでに「症状の進行を一時的に緩和することでて手遅れになることを防ぐため」の注射薬です。

日本では、アナフィラキシーの受診者数は年間5000~7000人と報告されています。毎年50人から70人の方が亡くなっています。

 

1年間での死亡者の内訳のおもな原因は、蜂毒が15人から20人、薬剤が20人から30人、食物は5人前後です。発症から心肺停止までの時間は薬剤で5分、蜂毒で15分、食物で30分といわれています。

発症するまでの時間は、薬剤や蜂毒は直接からだに入ってくるため数分から数十分、食物の場合には消化・吸収されてから発症するので数十分から数時間後です。アナフィラキシーの原因となる食べ物を摂取した後に運動して発症するケースなどもあります。

エピペンの効果は一時的なものです。かならずお医者さんへ

エピペンの成分は「アドレナリン」です。アドレナリンには、心臓の収縮力を高めて血圧をあげる、気管支を拡げて呼吸をしやすくする作用などがあります。

エピペンを使用することで、アナフィラキシー症状が一時的に緩和されます。しかし、エピペンは根本的な治療薬ではありません。

症状が軽くなっても一時的なもので、効果の持続時間は15分から20分程度です。できるだけ早くお医者さんの治療を受けることが必要になります。

エピペンは、誰でもすぐに注射できるように作られています。使用方法については処方される時にお医者さんから説明や指導があり、使い方を学習するためのDVDなどの資料などを渡されます(医療機関によって学習方法は異なります)。

処方されるエピペンには、針や薬液がついていない練習用トレーナーが付属しています。いざというときに確実にエピペンを使えるようにトレーナーを使って練習しておくといいでしょう。

エピぺンを使用できるのは、医療機関などで指導を受けた「本人、保護者、教員、保育士、救急救命士」です。

エピペンを使用するタイミングは「迷ったら打て」です

アナフィラキシーでエピペンを使用するタイミングがあります。症状が重くなってく度合いをみてみましょう。症状がでてきたら、我慢せずにまわりの人に伝えることも大切です。

写真はイメージです。photo by irasutoya

1)「じんましん、皮膚が赤くなる、かゆくなる」といった皮膚症状が限局的にでる、くちびるなどにむくみやかゆみがでるなど。

2)皮膚症状が全身に広がる、気分が悪くなる、嘔吐する。鼻水やくしゃみなどの呼吸器症状が出るなど。

これらの症状に続いて、以下のような症状がひとつでもあらわれたときに使用します。あわせて救急車を呼んでもらいましょう。

消化器の症状・繰り返し嘔吐してしまう。
・がまんできない持続する強い腹痛や下痢がある。
呼吸器の症状・のどや胸が締め付けられる感じがする。
・声がかすれる。
・犬が吠えるような咳や持続する強い咳込みがある。
・喘息のようなゼーゼーする呼吸をしている。
・呼吸がしにくい。
全身の症状・唇や爪が青白くなる。
・脈を触れにくいもしくは不規則(血圧低下)。
・失禁してしまう。
・意識がもうろうとしている、ぐったりしている。

アナフィラキシーの症状の出方はさまざまです。軽い症状ですんでしまう場合もあればあっという間に症状が進む場合もあります。症状がどのように進行していくかを判断するのは困難です。

エピペンは、「様子がおかしいと思ったら打て、迷ったら打て」といわれています。表にある症状が少しでも疑われたら、すぐに使用しましょう。

エピペンを使って、症状が落ち着いたからといって病院にいかないといったことはないようにしましょう。かならず救急車で気道確保などができる救急設備のある病院に行って治療を受けてください。

写真はイメージです。photo by irasutoya

使用後のエピペンは医療廃棄物となります。家庭などでゴミとして捨てることはできません。受診しているお医者さんに返却して、新しいエピペンを処方してもらってください。

エピペンには使用期限があります

エピペンには1年の使用期限があります。使用期限は本体に記載されています。未使用でも1年ごとに交換してもらいましょう。

使用期限切れの注意をうながすために、使用期限の「お知らせ通知プログラム」が提供されています。エピペンを処方されたときに渡されたハガキかWEB上で登録をしてください。使用期限の約1か月前に使用期限切れの連絡が送られます。

エピペンは保険適用されます

エピペンは、体重が15kg~30kg用の0.15mg(本体緑色)と体重が30kg以上用の0.30mg(本体黄色)の2種類があります。

価格は0.15mgが7,979円、0.3mgが10,894円です。2011年9月から保険適用となっています。保険診療での処方が可能です。

70歳未満は3割負担、6歳以下は2割負担です。70歳以上は所得や年齢によって負担額が異なります。

2018年1月22日から、エピペンの日本における製造販売承認について「ファイザー株式会社」から「マイランEPD合同会社」に継承されています。

写真はイメージです。photo by photo-ac

アナフィラキシーの可能性があるアレルギーを持っている方にとってアナフィラキシーショックは命に関わるものです。エピペンを処方されたお医者さんの指示にしたがって使用してくださいね。

エピペンの成分であるアドレナリンは、光に弱いので携帯ケースにいれて携帯するなど常に手が届く範囲に持っていましょう。わからないことがある場合にはお医者さんや薬を処方してもらった薬剤師さんに相談してください。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました