ココロの痛みが癌死亡リスクを高めることが明らかに

 

5月になると社会人や新入生がかかる五月病。ふと、緊張が緩みなんとなく全てがおっくうになってしまう…。そんな経験がある人も多いのではないでしょうか?

この5月病、病院に行き診断される病名は「適応障害」、「うつ病」などが含まれています。

古くから「病は気から」ということわざもありますが、この「病は気から」が、研究によって明らかになってきています。

不安やうつ病が癌死亡リスクを高めている可能性

癌の死亡率に、精神的な苦痛が関与している可能性があることがイングランド、アイルランドで実施されたコホート研究(追跡調査)の結果、判明しました。

英国の医学系雑誌BMJに2017年1月25日に掲載された内容によると、癌の死亡率は不安やうつ病などの精神的な苦痛が、

結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌など調査した全ての部位において上昇したといいます。

16万人以上を対象にコホート研究

精神的苦痛を計る指標とされるGHQスコアを使用して、面接によって症状の感じ方を4つのグループに分け、1994年~2008年の14年間追跡する研究が実施されました。

これは、英国Universal College LondonのG David Batty氏らによって行われたもので、癌を罹患する前の16歳以上の男女(試験誘導時平均年齢46.3歳)163,363名が対象となっています。

研究によれば、GHQスコアが高い人(精神的苦痛が高い人)はGHQスコアが低い人(精神的苦痛が低い人)と比べて、より高度な教育を受け、喫煙者が多く肥満になる可能性が高いことがわかりました。

唯一、GHQスコアが低い人よりも健康リスクが少ないと思われるのがアルコールの摂取量で、GHQスコアが高い人の方が少なかったそうです。

教育を受け仕事もあり、充実した食生活を送っているけれど、その仕事のストレスで喫煙量が多い人は日本でも大勢いるのではないでしょうか。

この追跡研究期間中に16,267名の死亡者があり、その約25%にあたる4,353名の原因が癌によるものでした。また、GHQスコアが高い人ほど死亡率が高くなっています。

うつ病などの症状が免疫力低下やストレスホルモンの増加に

生物学的なメカニズムであるうつ病などの気分障害は、免疫経路に関与して炎症反応を引き起こすことが知られていますが、長期に及ぶ免疫調節不全は細胞の修復能力を損ない、癌化した細胞を取り除く働きをもつアポトーシスを阻害するのではないかと言われています。

また、うつ病の症状は、特にホルモン関連の癌において、視床下部下垂体―副腎の調節不全から起こる俗に「ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾール濃度も増加させることが知られています。

David Batty氏らは、これらの根拠はもっぱら観察研究に基づいており、今後、苦痛と癌との関連性を明確にするために更なる研究が必要だとしています。

充実しているはずの普通の暮らしが心の苦痛を増やし、病気を引き起こすとすれば、健康に必要なことはサプリメントよりも「ゆとりのある生活」ではないでしょうか。

参照:BMJ

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