高収入は人生の満足度を上げるが、日々の幸福感には関係ない


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[幸福とは?]

幸福とはなんでしょう。お金がたくさんあれば幸せでしょうか?。単純に答えられる問題ではありません。そこには、いろいろな要素が絡み合ってくるでしょう。例えば、基本的に生きる為の衣食住、健康、自由、愛などは勿論の事、考え方、物への価値観、もしくは、財産、地位、名声などいろいろと考えられます。

このお金と幸福の関係について、少し、以前の論文になりますが、2010年に興味深い論文が発表されています。

[年収75,000ドルで幸福?]

High income improves evaluation of life but not emotional well-being」という論文で、訳しますと「高収入は自分の人生の満足度を上昇させますが、日々(瞬間)の幸福感には関係ない」となるでしょうか。

論文に携わったのは、2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者、行動経済学者ダニエル・カーネマン教授、2015年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者アンガス・ディートン教授らです。カーネマン教授が発表されています。

カーネマン教授は、幸福というものを以下の2つに区分しました。

・「日々(瞬間)の幸福感」で、その日、その日の瞬間の幸福感。主観的、感情的色彩の強いもの。

・「人生の満足度」で、人生として考えた場合の幸福度(満足感)。

言いかえますと、「日々(瞬間)の幸福感」は、その人にとって、瞬間的な喜び、健康、自由、愛、心配のない環境など(周囲と比較せずに満足感を得られるもの)、「人生の満足度」は、財産、名誉、地位など(周囲と比較して相対的に満足感を得られるもの)と考えて頂くとわかりやすいかと思います。

分析はアメリカの世論調査会社ギャラップ社が1000人を対象に行った45万件のデータの調査結果をもとに行われました。

調査の内容を簡単に述べますと、日々の幸福感は「昨日が良い日だったか」というような質問、人生の満足度は「人生にどれくらい満足している」というような質問をしています。

この調査結果では、年収が多くなるに比例して「人生の満足度」は上昇しますが、「日々(瞬間)の幸福感」は、年収75,000ドル(630~640万円程度-論文発表時の為替相場から換算)までは収入に比例して増大し、それ以上になると伸びなくなる(横ばいになる)と分析しました。

「日々(瞬間)の幸福感」を構成する要素として、精神面としてポジティブにならない事、悲観的な感情にならない事、ストレスからの解放される事という側面から捉え、いずれの側面からみても、「日々(瞬間)の幸福感」の上昇が伸びなくなるのが年収75,000ドルとしています。

収入があればあるほど、たくさんの「日々(瞬間)の幸福感」を得られる(買うことができる)ということではなく、ある一定の収入を超えると心の満足度はお金でないことにより左右され、逆に、収入が少ないということがストレスや悲しみ等の精神的な苦痛と関連(上昇)するとしています。

年収75,000ドルという金額は、収入が増えることにより、先にあげたネガティブな要素と個人の考え方や生活環境などのポジティブな影響とのバランスが取れる統計的な閾値を指しており、「日々(瞬間)の幸福感」を享受する能力が、もはや、向上しないことを意味しています。

[お金は幸福に影響するのか]

年収75,000ドルという金額だけが先走ってしまいそうですが、あくまでも、統計的な閾値である事に注意すべきでしょう。この閾値は、さまざまな生活環境の要素によって変動すると考えてよいでしょう。また、年収75,000ドルで幸せが得られる(買うことができる)という事でもありません。

カーネマン教授によって示されたのは収入と幸福感の結びつきを示したもので、収入が増えれば比例して相対的な満足感は得られますが、必ずしも、主観的な幸福につながる事ではないという事です。

人間の幸福は、さまざまな要因に左右されます。おのおのの立ち位置や満足感を得る対象も異なりますし、幸せの捉え方もさまざまでしょう。また、人間の幸福については、一言で語れるものでもありません。

この論文から考察されることは、お金があろうとなかろうと、自分の幸福の閾値とは何かということではないでしょうか。つまり、自分の幸福は、周りと比較して得られるものではないとも言えるでしょう。

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