日本人のお医者さんの名前がついた病気「川崎病」を知っていますか

[お医者さんの名前が付いた川崎病]

「川崎病」という名前を聞いたことがありますか。聞いたことはあるけどよく知らない方が多いと思います。

川崎病は小児科医師「川崎富作」氏の名前から付けられた病気です。正式な名前は「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」といいます。

川崎医師は、1961年に発熱やリンパ節のはれを主訴に入院した4歳の男の子の症例に診断名をつけられなかったことをきっかけにして、同様の症例について1966年までの6年間で50名の症状や治療内容などについてまとめ、1967年にはじめて川崎病についての論文を発表しました。

川崎医師の論文が発表されてから注目されるようになり、1972年に厚生省研究班が結成されて全国実態調行われてからは研究が進みます。


右から3番目が川崎富作医師 photo by Wikipedia

1979年に小児科の世界的な教科書に「川崎病」が記載されることで国際的に認知されました。1980年代にはガンマグロブリンを使用した治療が有効であることがわかり現在に至っています。

お医者さんの名前がついた「川崎病」とはどのような病気なのでしょうか。

[川崎病はどんな病気]

好発年齢や発生時期は

おもに0歳児から4歳児に見られます。特に、1歳児でもっとも多く見られます。夏と冬に多く発生します。

原因はなに

全身の血管に炎症を起こすことはわかっていますが、なぜ、炎症を起こすのかという原因はわかっていません。異常な炎症を起こすことから免疫システムに関係しているのではないかと考えられています。

また、日本人、日系アメリカ人、韓国人などアジア系の人々に多くみられ、男の子の方の発症人数が多いことなどから遺伝子的な要因も疑われています。

どのような症状でしょうか

発熱、せき、鼻水のような風邪の症状から始まります。そのあとに川崎病の特有な症状が現れてきます。これらの症状が川崎病の診断基準になっています。

○川崎病の特有な症状○

1.5日以上続く38度以上の発熱。

2.全身に発疹が出る。

3.両方の目が赤く充血する。

4.唇が赤くなり、「イチゴ舌」と言われる真っ赤な舌になってブツブツができる。

5.手のひらや足の裏がはれて赤くなり、熱が下がったあとに手足の指先から皮膚がむける。

6.首のリンパ節がはれる。とくに後ろ側にみられることが多い。触ってみるとゴロゴロする。



イチゴ舌 photo by Wikipedia

そのほかの症状としては、BCGの接種したあとの部分が赤くなりかさぶたができる、腹部が膨満する、関節痛、下痢などの症状もあります。他の熱を出す病気に比べてやたらと機嫌が悪いことやぐったりするのも特徴です。

特有な症状とされる6項目のうちに「5項目以上が当てはまる」か「4項目が当てはまり心臓の検査で異常がある」と川崎病と確定されます。

※心臓の検査は、おもに心臓のエコー検査、心電図、レントゲン、必要に応じてその他の検査も行われます。

川崎病の確定条件を満たさなくても、ほかの病気の可能性がなければ、いくつかのあてはまる項目とそのほかの症状とあわせて不全型の川崎病として診断されます。

注意したいのは、川崎病の特有の症状はすべての症状が同時に現れるわけではありません。それぞれの症状の程度についてもかなり個人差があります。また、症状が出たり消えたりすることも知られています。そのために、診断のむずかしいことも少なくはありません。

血液検査を行うと、急激に症状が出てくる時期に白血球、炎症反応を表すCRP、肝細胞逸脱酵素の値の上昇やナトリウム、アルブミンの値の低下がみられ、症状がおさまると血小板が上昇する特徴があります。現れている症状と心臓の検査や血液検査などとあわせて総合的にも判断されます。

川崎病では全身の血管が炎症を起こすことで、「冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)」といわれるコブが心臓へ通じる冠状動脈などにできる場合があります。

冠動脈瘤によって冠動脈が狭くなると血管が詰まりやすくなります。そのため、まれなケースとして心筋梗塞を引き起こす可能性があり、川崎病を軽視することはできません。

冠動脈瘤ができるのを防ぐためには、少しでも早く炎症を抑える治療が必要です。そのためにも早期発見と早期の治療開始が重要になります。

治療はどうするの

原則として入院して薬物療法を行います。炎症を抑えるガンマグロブリンと血液が固まらないようにするアスピリンなどを投与しながら様子を見ます。だいたい1~2週間で症状は治まります。

ガンマグロブリンの投与で症状がおさまらない場合には、ガンマグロブリンの再投与や炎症を抑えるためのステロイドを大量投与するパルス療法および免疫細胞の働きを強く抑えるウリナスタチンなどの投与を行うことで症状を抑えます。

どのような後遺症はありますか

川崎病で問題となるのは冠動脈瘤ができてしまうことです。川崎病にかかった患者の約4%で見られます。

冠動脈瘤がない場合には、症状が治まったあとも2~3ヶ月間はアスピリン投与を続けます。発症から1ヶ月後に心臓の検査で冠動脈瘤の確認し、小学校に入学するまでは定期的に心臓の検査を受けます。

冠動脈瘤ができた場合には、コブが小さくなったことを確認できるまでは血栓を防ぐために投薬を続け、約1ヶ月ごとに心臓の検査を行って慎重に経過観察を行います。

冠動脈瘤が大きい場合には心臓カテーテルによる冠動脈造影など精密検査を行います。コブが小さくなるのは個人差があり数ヵ月から1年程度かかります。

コブが小さくなったあとも一定期間の薬の服用と定期的な心臓の検査は必要です。コブが残ってしまった場合でも薬の服用を続ければ日常生活を送ることは可能ですが、定期的に心臓の検査を受けることが必要になります。

コブが残ってしまい冠動脈の狭窄が進んだ場合には、カテーテルを使って血管を広げる治療や冠状動脈に迂回路を作るバイパス手術を行う治療を行います。

再発したり、うつったりするの

川崎病では2~3%の患者さんに再発がみられます。なお、川崎病はうつる病気ではありません。

冠動脈瑠ができた場合には「小児慢性特定疾患医療給付」という医療費助成が受けられる場合があります。詳細は「小児慢性特定疾病情報センター」を見てください。

[川崎病の患者さんが増えています]

川崎病の患者数は1990年代半ばから、じわじわと患者数が増えています。2005年以降は毎年1万人以上が発病しています。

子供はよく熱を出すものですが、高い熱がでた場合やいつもと様子が違うなと感じたらお医者さんに連れて行ってください。

症状が落ち着くまでは、子供の様子におかしいところがないか注意してみてあげましょう。おかしなところがあれば再診を受けてください。


写真はイメージです。 photo by flickr

子供が川崎病と診断された場合には不安や心配でたまらなくなると思います。後遺症なども気になることでしょう。しかし、医療技術の進歩によって高い治療効果を期待することができ、後遺症である冠動脈瘤ができる可能性も低くなっています。

症状や予後には個人差がありますので、お医者さんの話をよく聞いて病気を乗り越え、退院後も服薬や定期検査をお医者さんの指示にしたがって続けるようにしてください。

また、病院を受診した時に過去の病歴を必ず聞かれますよね。川崎病を発症したことがある方は、過去に受けた川崎病の医療情報が重要な役割を果たす場合があります。川崎病急性期カード(日本川崎病学会)というものがありますので、日常的に携帯し受診の際に提示できるようにしておくといいでしょう。

 

 

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