FLT3変異急性骨髄性白血病に対するミドスタウリンの有効性

医療の進歩により、白血病で命を落とす方は減ってきていますが、急性白血病の5年生存率は40~50%と言われており、いまだ予後が良いとは言えないのが現状です。そのため、世界中で有効な治療法の開発が続けられています。


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白血病とは

白血病は血液のがんと呼ばれ、正常な血液細胞が減少し、上手く機能しないがん化した細胞が血液中に増殖します。

白血病は、がん化した細胞の種類から骨髄性とリンパ性に分けられ、さらに急性と慢性に分類されます。その中で急性骨髄性白血病は、赤血球、血小板、リンパ球以外の白血球になる予定の前駆細胞ががん化する疾患です。

正常な細胞が減少することで、疲労感や免疫力の低下、出血しやすくなるなどの症状が発現します。進行すると異常な細胞が優勢となり、重度の貧血や易感染、出血傾向など、命に危険がおよぶ症状が出るため、早期に適切な治療を行うことが大切です。

急性骨髄性白血病の治療には、抗がん剤を用いた化学療法や造血幹細胞移植があります。

化学療法では、白血病細胞が全体の5%以下になることを目標に寛解導入療法が行われ、寛解が得られたら、減少した白血病細胞をさらに死滅させ、根治することを目標とした地固め療法が行われます。

寛解導入療法では、代表的な療法としてダウノルビシン+シタラビンやイダルビシン+シタラビンなどの2種類の抗がん剤を用いた化学療法が行われます。地固め療法では、患者さんの年齢や病態などを考慮しながら、シタラビンの投与などが行われます。

予後不良因子FLT3変異とは?

化学療法や造血肝移植により治癒が期待できる患者さんがたくさんいる一方で、染色体や遺伝子の異常などから、予後不良と判断される患者さんもいます。予後不良因子はいくつか知られていますが、FLT3遺伝子の変異もそのひとつです。

FLT3変異は、骨髄性白血病患者さんの約30%にみとめられる、高頻度の変異です。変異の仕方により、塩基重複により発現するFLT3/ITD変異と、チロシンキナーゼドメインの点変異に分けられます。FLT3はチロシンキナーゼの一種で、細胞増殖の促進に関与していますが、変異により恒常的に活性化し、予後不良の原因になると考えられています。


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FLT3変異に有効な治療法とは?

そこで、FLT3変異に対する治療法として開発されたのが、FLT3のチロシンキナーゼ活性を阻害する薬を追加投与する方法です。「Midostaurin plus Chemotherapy for Acute Myeloid Leukemia with a FLT3 Mutation」では、マルチプロテインキナーゼ阻害薬であるミドスタウリンのFLT3変異を有する急性骨髄性白血病患者さんに対する有効性について報告しています。

717例のFLT3変異を有する急性骨髄性白血病患者さんを対象に、標準療法(寛解導入療法;ダウノルビシン+シタラビン、地固め療法;シタラビン大量投与)にミドスタウリンを追加投与する群と、プラセボを投与する群に分け、全生存期間にあたえる影響について解析しています。

その結果、全生存期間は死亡のハザード比0.78でミドスタウリン投与群の方が、プラセボ群に比べて有意に長くなりました。また、無イベント生存期間についてみても、ハザード比0.78となり、ミドスタウリン投与群で有意に長くなりました。いずれのFLT3変異サブタイプでも、ミドスタウリンの有効性はみとめられました。重篤な有害事象はミドスタウリン投与群、プラセボ投与群ともに同程度の発生率でした。

このことから、FLT3変異を有する急性骨髄性白血病患者さんに、ミドスタウリンを追加投与することにより、全生存期間、無イベント生存期間が延長することが示唆されました。

 

医療の発展とともに、遺伝子変異などが検出できるようになり、患者さん一人一人に合った治療を受けることができるようになってきました。今回の報告により、予後不良因子であるFLT3変異を有する急性骨髄性白血病患者さんに、キナーゼ阻害薬ミドスタウリンを投与することにより、予後が改善することがしめされました。今後も研究が進み、白血病の予後がさらに改善することが期待されます。

 

 

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