ソタグリフロジン 1型糖尿病への有効性

1型糖尿病は、世界中で患者数の増加傾向が報告されており、年間で約8万人の子どもが新たに発症していると推定されています。長期にわたるインスリン療法による厳重な治療が必要となり、患者さんやその家族への負担は大きいものとなっています。

1型糖尿病とその治療とは?

1型糖尿病は、自身の免疫が、膵臓のβ細胞を破壊してしまうことで、体内でインスリンを作り出すことができなくなる疾患です。血糖を下げる働きをするインスリンがつくられなくなることにより、血糖値が高い状態が続き、QOLの低下や命を脅かすさまざまな合併症を引き起こします。


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1型糖尿病の治療の基本は、足りないインスリンを補うインスリン療法です。インスリンを投与することで、血糖をコントロールし、合併症の発症を防ぐことが治療目標となります。患者さんの病態にあったインスリン製剤や投与量、投与回数などが設定され、長期にわたり治療が行われます。

1型糖尿病の血糖コントロールに効果的な新薬の開発

しかし中には、インスリン療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない患者さんもおり、新しい治療法の開発がもとめられてきました。

そこで、「Effects of Sotagliflozin Added to Insulin in Patients with Type 1 Diabetes」では、インスリン療法を行っている1型糖尿病患者さんに対するソタグリフロジンの有効性を報告しています。

ソタグリフロジンはSGLT1およびSGLT2を阻害するデュアルインヒビターであり、SGLT1を阻害することで小腸などでの糖の吸収を抑制する作用と、SGLT2阻害により尿糖の再吸収を抑制する作用をあわせもっている、現在開発中の薬です。


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今回の第3相試験では、インスリン療法(ポンプまたは注射)を受けている1型糖尿病患者さんを対象に、ソタグリフロジン400mg/日を追加投与する群とプラセボ群に分け、24週にわたり服用を継続し、HbA1c 7.0%未満を達成した割合や、その他、体重やインスリン投与量の変化などについて解析しています。

その結果、大きな副作用がなくHbA1cが7.0%未満になった割合は、ソタグリフロジン群で28.6%、プラセボ群で15.2%となり、ソタグリフロジン追加により有意な改善がみられました。ベースライン値からのHbA1c値の変化(−0.46%)、体重(−2.98kg)、収縮期血圧(−3.5mmHg)、1日の平均追加インスリン投与量(−2.8単位)において、ソタグリフロジン群で有意な低下がみられました。

重度低血糖の発生は、ソタグリフロジン群で3.0%、プラセボ群で2.4%となり、有意な差はみられませんでした。しかし、糖尿病性ケトアアシドーシスはソタグリフロジン群で3.0%、プラセボ群で0.6%となり、ソタグリフロジン追加により、発生頻度が有意に高くなりました。

このことから、インスリン療法を受けている1型糖尿病患者さんに、ソタグリフロジンを追加投与すると、重度の低血糖を増やすことなく、HbA1cの改善が得られることが示唆されました。しかし、その一方で、糖尿病性ケトアシドーシスの発生リスクが高まることもしめされました。


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ソタグリフロジンは、1型糖尿病および2型糖尿病の治療薬として開発がすすめられている薬であり、今回の結果から、1型糖尿病患者さんのインスリン療法に追加することにより、血糖コントロールが改善することが示唆されました。今後、1型糖尿病のインスリン療法に追加する経口薬として、初めて承認されるか注目が集まります。

 

 

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