新たな爪白癬治療薬 ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物(商品名;ネイリンカプセル100mg)

爪白癬(爪水虫)は、カビの一種である白癬菌が皮膚から爪の中へ侵入することで発症します。日本人の10人に1人が爪白癬に罹患しているといわれるほどありふれた疾患です。

爪白癬とは

爪白癬は、白癬菌が原因となり発症する爪の病気です。手足にもともと水虫がある方にみられることが多く、爪の周りや爪と皮膚の間から菌が侵入し、爪に感染します。


爪白癬 photo by wikipedia

爪白癬になると、まず爪の先の色が白濁しはじめますが、自覚症状はないことが多いといわれています。進行すると、次第に指側にも感染が広がっていき、爪の色が白色や黄色、黒色へと変化していきます。また、爪がぶ厚くなることも特徴であり、盛りあがるように爪が生え、脆く、ボロボロと剥がれ落ちていきます。爪にたくさんの筋がみられたり、爪の周りに炎症がみられる場合もあります。

爪白癬は、みた目だけの問題ではなく、爪が厚くなることで靴をはく際に痛みを感じたり、歩行が難しくなるなど日常生活に影響をおよぼすこともあります。また、自分だけではなく、家族など周りにいる人たちにも感染を広げてしまう危険性があり、注意が必要です。

爪白癬の治療法

爪白癬の治療は、おもに薬物療法が行われます。

白癬菌をふくむ真菌の細胞膜は、エルゴステロールで構成されており、おもにコレステロールで構成されているヒトの細胞とは異なっています。このことから、爪白癬の治療に使用される抗真菌薬は、エルゴステロールに作用することにより、真菌に対して選択的に効果を発揮します。

爪白癬に適応をもつ抗真菌薬は、トリアゾール系とアリルアミン系があり、構造やエルゴステロール合成経路上の作用するところは異なるものの、どちらもエルゴステロールの合成を阻害し、真菌の増殖を抑制する薬です。

現在、トリアゾール系抗真菌薬では、経口薬のイトラコナゾール、外用製剤のエフィナコナゾール、高濃度ルリコナゾールが爪白癬に適応をもち、アリルアミン系では経口薬のテルビナフィンが使用可能となっています。

ガイドラインにおいては、基本的に内服療法による治療が推奨されていますが、既存の経口薬では肝障害や薬物相互作用などの問題があり、既往歴や併用薬、副作用の発現などを考慮して外用薬が使用される場合もあります。


写真はイメージです。 photo by pixabay

20年ぶりに承認された経口爪白癬治療薬

爪白癬治療薬にはいくつかの選択肢がありますが、2018年1月、20年ぶりとなる経口爪白癬治療薬「ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物(商品名;ネイリンカプセル100mg)」の製造販売が承認されました。「爪白癬」に適応をもち、用法・用量は、「通常、成人には1日1回1カプセル(ラブコナゾールとして100mg)を12週間経口投与する」となっています。

ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物は新規のトリアゾール系抗真菌薬で、強い抗真菌活性と広い抗真菌スペクトルが確認されているラブコナゾールのプロドラッグです。服用後、速やかに吸収され、ラブコナゾールに変換されたのち、真菌の細胞膜を構成するエルゴステロールの生合成を阻害します。

1日1回食事に関係なく服用できることから、患者さんが服用しやすく、高い服薬アドヒアランスを得られることが期待されています。

爪白癬患者さんを対象とした臨床試験では、投与開始48週後(12週服用した後、36週無治療で観察)の完全治癒率は本剤投与群で59.4%、プラセボ群で5.8%となり有意差がみられました。著効率(爪甲混濁部面積比の減少率が 60%以上)および有効率(爪甲混濁部面積比の減少率が 30%以上)についてもプラセボ群と比べて有意差がみられ、効果がみとめられました。

副作用は、患者さんの23.8%にみられ、おもにγ-GTP増加(15.8%)、ALT増加(8.9%)、AST増加(7.9%)、腹部不快感(4.0%)、血中Al-P増加(2.0%)がみとめられました。

また、トリアゾール系でありながら、CYP3A4  阻害作用が弱いとはされているものの、CYP3Aによりおもに代謝される薬(シンバスタチン、ミダゾラム)およびアゾール系抗真菌薬でINR上昇が報告されているワルファリンは併用注意となっています。


写真はイメージです。 photo by pixabay

爪白癬は身近な疾患であり、早期に適切な治療を受けることが大切です。今回、20年ぶりに新たな経口抗真菌薬が承認されたことにより、選択肢が増え、より患者さんにあった治療がうけられるようになることが期待されています。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました