むし歯の痛みって、いくつになっても嫌なものです。できれば、むし歯とは無縁に過ごしたい。そんな方にお勧めなのがシーラントです。
シーラントは、むし歯の予防法のひとつで、奥歯のむし歯を防ぐのに効果的です。けれど、シーラントなんて知〜らんよという方もいらっしゃることでしょう。
一般的にむし歯予防といえば、フッ素というイメージが先立ちますよね。シーラントはフッ素ほどに有名ではありません。
そこで、今回は奥歯のむし歯を予防するシーラントについて、わかりやすく解説します。
写真はイメージです。 photo by illust-ac
■小窩・裂溝う蝕
シーラントを理解する前に、小窩・裂溝う蝕とよばれるシーラントでの予防目的となるむし歯について理解しましょう。
○小窩・裂溝ってなに?
奥歯の咬合面とよばれる噛み合わせ面には、小さくて深いへこみや、複雑で細かい溝が実はたくさんあります。よくよく鏡で見てみると見えますね。
前者のへこみを小窩(しょうか)、後者の溝を裂溝(れっこう)とよんでいます。小窩や裂溝には、食べ物や細菌が入り込みやすいという特性があります。
ところが、一度入り込んだ食べ物や細菌は、小窩・裂溝の構造から、歯みがきで取り除くのはとても難しいのです。粘着性のあるキャラメルに限らず、スナック菓子やチョコレートが奥歯にべったりと付着して、歯ブラシでこすってもなかなかきれいに出来なかった経験ありませんか?
これは、食べ物が小窩・裂溝に入り込むからなのです。
つまり、小窩・裂溝は、その構造上、どうしてもむし歯が発生しやすいところになっているわけです。う蝕とはむし歯の正式名称ですね。小窩・裂溝う蝕とは、小窩・裂溝に生じたむし歯のことです。
○小窩・裂溝う蝕の特徴
小窩・裂溝う蝕は、それ以外の部分に生じるむし歯とは異なる特徴があります。
小窩・裂溝う蝕ができてしまうと、他のむし歯と同じく歯の表面に穴が開きますが、その穴は非常に小さい穴に留まっていることが大半で、穴そのものが広がっていくことは稀です。
穴は小さいのに、内部でむし歯が広がっていくのが、小窩・裂溝う蝕の特徴です。
そのために、むし歯になったことすら気がつかず、内側に開いた穴が大きくなり過ぎて表面を支えきれなくなり、ある日突然表面が崩れて大きな穴が開いて、初めてむし歯になっていたことに気がつくというようなことも珍しくありません。
つまり、小窩・裂溝う蝕は早い段階で気がつきにくいので、むし歯の発生そのものを防ぐことが勧められています。
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■シーラントとは
○シーラントってなに?
シーラントは、主に奥歯を対象にしたむし歯予防法です。
シーラントは、小窩・裂溝にコンポジットレジンと呼ばれるプラスチック製の材料、またはグラスアイオノマーセメントとよばれるセメント系の材料を詰めて、小窩・裂溝を塞ぐ処置です。
前歯であっても、裏側に深い溝や穴がある場合は、適応になる場合があります。
シーラントをすることで、歯みがきをしにくい小窩・裂溝を塞いで、食べ物や細菌が入り込むことを未然に防ぎ、凹凸の少ない歯みがきしやすい形にします。
そうなんです、シーラントは、それ自体がむし歯を予防してくれるのではないのです。奥歯を歯みがきしやすい形態に変えることで、食べ物を詰まりにくくして小窩・裂溝う蝕を防ぐのです。
シーラントをすることで、噛みにくくなったり、食べにくくなったりする心配はありませんので、大丈夫です。
もちろん、シーラントは、シーラントをした部分にしか効果が出ませんし、シーラントがむし歯を直接防いでくれるわけではありません。むし歯を防ぐためには、シーラントをした後も歯をきれいに磨かなければなりませんので、ていねいな歯みがきを心がけてください。
○シーラントの方法
シーラントをする前に、シーラントをしたい歯の咬合面を含め、全体をきれいに磨きます。汚れた上からしても、シーラントは歯にくっつきませんし、仮にくっついたとしても、むし歯の原因を閉じ込めてしまうことになるからです。
きれいになった後に、シーラントをします。
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シーラントの材料は、前述したようにコンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントの2種類があります。
コンポジットレジンなら接着剤を塗布してから埋めますが、グラスアイオノマーセメントは歯に直接くっつくので接着剤は不要です。接着剤が必要なので、時間が経てばコンポジットレジンは剥がれてしまうおそれがありますが、グラスアイオノマーセメントにはその心配はありません。
強度の点では、グラスアイオノマーセメントよりもコンポジットレジンの方が優れていますので、すり減ったりかけたりしにくいので長持ちしやすいです。
このように両者には一長一短があります。
シーラントの材料をコンポジットレジンにするか、グラスアイオノマーセメントにするかは、歯科医師が歯の状態などを考慮して決めます。
シーラントの対象となる歯の処置をすべて1日で完了することはほとんどありません。何回かにわけて行なうことが一般的です。
○シーラントの費用
シーラントは、初期う蝕早期充填処置として、保険診療の適応を受けています。
歯1本あたり自己負担が3割の場合、500円弱です。
■シーラントで防ごう小窩・裂溝う蝕
○子ども
シーラントは乳歯でも永久歯でもできます。
特に生えてきたばかりの乳歯や永久歯はとても弱く、むし歯になりやすいという特徴があります。
また、大人と違ってすり減っていないので、小窩・裂溝がより深いです。しかも歯みがきも、嫌がったりするとしっかりとできませんし、お口が小さいので特に上顎の奥歯は見えにくく、磨いたつもりでもしばしば咬合面にスナック菓子など食べ物がが詰まったままになったりします。
シーラントをして、奥歯の歯みがきをしやすくしておくことは、子どものむし歯を防ぐ点でおすすめです。
永久歯は、その後ずっと生え変わることがないので、むし歯にならないように守っていきたいものです。もちろん、乳歯ならむし歯になってもいいというわけではありません。乳歯がむし歯になると、後から生えてくる永久歯に悪影響が出ることもあるので、乳歯のむし歯もしっかり防ぎましょう。
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○大人
大人の場合、長年、咬み合わせていることで、永久歯は年々すり減ってきます。すると、歯の咬頭とよばれるとがった部分が低くなり、小窩・裂溝は相対的に浅くなっていきます。ですので、子どもほどに小窩・裂溝が深い人はあまりいません。
それでも、上顎の奥歯の咬合面など、奥歯の溝がしっかりと残っている人は多いです。
仕事が忙しくて歯みがきがおろそかになりがちになる、お酒を飲んで帰ってそのまま歯を磨かず寝てしまうなど、子どもとは違った理由でむし歯になりやすかったりします。
また、脳梗塞を起こした後、右もしくは左に半身麻痺が生じたりすると、麻痺が起こった部分の歯みがきが難しくなってしまいます。
大人でも、小窩・裂溝がしっかりと残っている人や、歯みがきをしにくい人は、シーラントをしてあらかじめ塞いでおいた方がいいでしょうね。
■フッ素との違いは?
最後に、むし歯予防で有名なフッ素についてお話しします。
○フッ素の効果
フッ素のむし歯予防効果は、3つあります。
①むし歯菌の活動抑制作用
むし歯の原因菌の活動を抑えて酸を作りにくくすることです。
②再石灰化作用
脱灰とよばれる酸によって歯の表面の構造が破壊されたところを治すことです。
③歯質強化作用
歯そのものを強くして酸によって溶かされにくくします。
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○フッ素が苦手なところ
フッ素は、歯全体をまんべんなくむし歯から守りますが、奥歯の咬合面の小窩・裂溝に食べ物や細菌が入り込むのを防ぐことは出来ません。いくらフッ素がむし歯を予防して歯を守るといっても、完全に防ぎきれるわけではありません。食べ物や細菌が入り込んだままになっていれば、むし歯を発生させてしまいます。
つまり、小窩・裂溝う蝕を防ぐのはフッ素だけでは荷が重いのです。
■まとめ
子どもでも大人でも、小窩・裂溝う蝕は起こります。どちらの年代であっても、小さな穴で内側で広がりやすいという特徴は共通しています。
歯に深い溝があるなら、シーラントをして塞いでおくと、歯みがきがしやすくなりますので、むし歯を予防しやすくなります。
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シーラントは、主に奥歯の咬合面のむし歯予防に効果的ですが、その他の部分には予防効果を発揮しません。
お口全体のむし歯をまんべんなく予防してくれるフッ素と上手に組み合わせることで、むし歯から歯を守っていきましょう。
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