尋常性乾癬、関節症性乾癬にたいするPDE4阻害薬 アプレミラスト(商品名;オテズラ)

乾癬は、皮膚や関節に症状のあらわれる慢性炎症性疾患です。最近は、治療の選択肢が広がってきており、2017年3月には、新しい機序の尋常性乾癬および関節症性乾癬治療薬が発売となりました。


写真はイメージです。 photo by photo AC

乾癬の症状と治療

乾癬は、病態により尋常性乾癬、関節症性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬の5つに分類されます。そのうち、尋常性乾癬は全乾癬患者さんの約9割、関節症性乾癬は3~10%をしめるといわれています。

原因については、明確には解明されていませんが、免疫の機能異常が関わっており、免疫異常をおこしやすい体質の人に、ストレス、乾燥などの外的因子や肥満、妊娠、糖尿病などの内的因子が合わさることで発症するのではないかと考えられています。

尋常性乾癬は、頭やひじ、ひざなどに出やすく、銀白色の皮膚の粉を伴った特徴的な紅斑がみられます。治療は通常、ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬をもちいた外用療法(局所療法)が行われます。また、症状に応じて、光線療法や免疫抑制剤、ビタミンA誘導体などの内服療法、生物学的製剤が選択される場合もあります。(詳しくはこちら

関節症性乾癬は、手や足の先に近い関節に炎症が発現しやすく、腫れや痛み、変形をともない、不可逆的な関節変形をきたすこともある疾患です。治療は、皮膚症状や関節症状の重症度により選択されますが、薬物療法が中心となり、抗リウマチ薬や生物学的製剤がもちいられます。(詳しくはこちら


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PDE4を阻害する新機序薬

乾癬にたいする治療法の選択肢は広がってきており、2017年3月には、新たにPDE4阻害薬である「アプレミラスト(商品名;オテズラ10mg,20mg,30mg)」が発売となりました。

「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」に適応をもち、「通常、成人には以下のとおり経口投与し、6日目以降は1回30mgを1日2回、朝夕に経口投与する」となっています。

漸増投与を行わないと、悪心や下痢、嘔吐などの発現率が高いことがわかっているため、投与開始時には注意が必要です。また、アプレミラストは、サリドマイドやレナリドミドなどの化学構造を構成しているフタルイミド基を含む化合物であり、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌となっています。

アプレミラストは、PDE4阻害作用を持つ、新しい機序の乾癬治療薬です。おもに炎症性細胞に分布しているPDE4を阻害することで細胞内のcAMPレベルを上昇させ、IL-17、TNF-α、IL-23などの炎症性サイトカインの発現を制御し、炎症反応を抑制します。

中等度から重度の尋常性乾癬および関節症性乾癬患者さんを対象とした国内後期第Ⅱ相臨床試験では、投与16週時のPASI75(ベースラインPASIスコアから75%以上の改善)が、アプレミラスト20mg投与群では23.5%、30mg投与群では28.2%、プラセボ群で7.1%となり、アプレミラストによる改善効果がみられました。

また、sPGA(医師による静的総合評価)も、20mg投与群で23.9%、30mg投与群29.6%、プラセボ群8.8%となり、有意差がみとめられました。海外における第Ⅲ相試験においても、同様に、アプレミラスト投与群で改善効果がみられています。

また、抗リウマチ薬による治療にも関わらず活動性をしめす関節症性乾癬患者さんを対象にした海外での第Ⅲ相試験では、投与16週時にプラセボに比べて圧痛や腫脹などの関節炎症状の改善が見られたことが報告されています。

国内臨床試験中、29.5%の患者さんに副作用がみられ、おもな副作用は、下痢4.6%、腹部不快感3.7%、鼻咽頭炎3.3%、軟便2.5%、乾癬2.1%、悪心1.7%でした。海外での臨床試験では、44.4%の患者さんに副作用がみとめられており、おもに悪心や下痢、頭痛、上気道感染、嘔吐、鼻咽頭炎、消化不良、上腹部痛が報告されています。


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今回、新しい機序の乾癬治療薬が発売になったことにより、さらに治療の選択肢がふえ、より多くの患者さんの症状改善につながることが期待されます。

 

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