ファブリー病にたいする新たな経口治療薬 ミガーラスタット塩酸塩(商品名;ガラフォルドカプセル123mg)

ファブリー病は、国が難病指定しているライソゾーム病に分類される疾患であり、細胞内ライソゾーム(リソソーム)の酵素の欠損、活性低下により発症する先天性の代謝異常症です。治療法には、対症療法や酵素補充療法がありますが、今回、新しく経口投与可能な治療薬が日本で承認されました。

ファブリー病とは

ファブリー病は、細胞内ライソゾームの“α-ガラクトシダーゼ(α-Gal)”という加水分解酵素が遺伝的に欠損したり、活性が低下することで発症します。通常、α-Galは、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)など糖脂質を分解する働きを担っていますが、ファブリー病では、α-Galの活性が低下しているため、GL-3が十分に分解されずに全身のいたるところに蓄積し、さまざまな症状が発現します。


写真はイメージです。 photo by photo AC

症状は患者さんや年齢によっても異なりますが、主な症状として、幼・小児期から発現する手足の痛み(四肢疼痛)や汗をかきにくい(低汗症)、体温調節がうまくできないことによる体温上昇などがみられます。また、そのほかにも、赤紫色の発疹がみられる被角血管腫や聴力の低下、角膜の混濁、精神障害、下痢などの消化器症状、腎機能障害、心機能障害、脳血管障害などが発現することもあります。

なかには、四肢疼痛や低汗症などの典型的な症状はみられず、成人になってから心障害のみをみとめる心亜型や、腎障害のみの腎亜型の方もいます。

症状や程度は患者さんによって異なるため、治療では、患者さんの症状に合わせた対症療法が行われます。また、2004年からは酵素補充療法が導入されており、α-ガラクトシダーゼ活性を点滴で補うことにより、蓄積しているGL-3を分解し、症状の改善や進行を抑える治療法も行われています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

ファブリー病にたいする初めての経口製剤

対症療法の進歩や、酵素補充療法により予後の改善が期待されているファブリー病ですが、2018年3月、新たに経口製剤である「ミガーラスタット塩酸塩(商品名;ガラフォルドカプセル123mg)」の製造販売が承認されました。(アミカス・セラピューティクス株式会社 プレスリリースより)販売時期についてはまだ発表されていません。

“ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病”にたいして適応をもち、用法・用量は、“通常、16歳以上の患者にはミガーラスタットとして1回123mgを隔日経口投与する。なお、食事の前後2時間を避けて投与すること。”となっています。

ファブリー病では、特定のGLA遺伝子変異により、異常で不安定な高次構造をもつα-Gal Aが生成し、活性の低下からGL-3などの蓄積を引き起こすことがあります。ミガーラスタットは、α-Gal Aにたいする薬理学的シャペロン(他のタンパク質分子が正しい折りたたみをして機能を獲得するのを助ける)として作用する薬です。ライソゾーム内への輸送の正常化および本来の酵素の働きを活性化することで、蓄積したGL-3の分解を促進し、効果を発揮すると考えられています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

いままで日本では、ファブリー病の治療薬(酵素補充療法)として点滴静注剤が発売されていましたが、今回、シャペロン作用を持つ初めての経口薬が承認されました。

ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異をともなうファブリー病患者さんが対象とはなりますが、新しい選択肢となり、症状および予後の改善に貢献することが期待されています。

 

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