神経の後遺症を残さないための小児糖尿病性ケトアシドーシスの治療 点滴の濃度と速度に治療効果の違いはあるのか

糖尿病性ケトアシドーシスという病気をご存知でしょうか。

Ⅰ型糖尿病のかたがなりやすい病気ではあるのですが、Ⅱ型糖尿病のかたでも清涼飲料水をよく飲む方は気をつけなければいけない病気ですね。

ご存知のかたも多いかもしれませんが、まず一度、糖尿病性ケトアシドーシスという病気を振り返ってみましょう。

糖尿病性ケトアシドーシスとは

糖尿病性ケトアシドーシスでは、糖を体内に吸収するインスリンという内分泌がなんらかの原因によって作用が減少して、体内のブドウ糖が分解されず、高血糖状態になります。

そのような状況でもエネルギーを作らなければならない身体は、糖のかわりに脂肪を分解してエネルギーを作り出します。この際に、つくりだされるケトン体が体内で増えて糖尿病性ケトアシドーシスという状況を引き起こします。

糖尿病性ケトアシドーシスの死亡率は、0.15~0.3%といわれていて、その原因の多くは脳の浮腫によるものとされています。

診断方法としては、血中の血糖値はどの程度か、血中・尿中のケトン体の有無、アシドーシスの程度をみます。

ケトアシドーシス治療の際の点滴はどうしたらいいか

ケトアシドーシスと診断されたら、治療になりますが、治療方法は、電解質の補正、インスリンの補充、アシドーシスの補正、脳の浮腫が疑われれば、脳浮腫改善薬の投与などとなります。

教科書などでもこのようにかいてありますが、実際の臨床現場においてどのように電解質を投与したらいいのでしょうか。

投与する点滴の速度は、はやければ早いほどいいのか、濃度はこければ濃いほうがいいのでしょうか。

そのような疑問を解消する研究として、

今回NEJMから小児の糖尿病性ケトアシドーシスで点滴の投与濃度、投与速度を比較した論文”Clinical trial of Fluid Infusion Rates for Pediatric Diabetic Ketoacidosis”が発表されました。

論文では、13施設、1255人の小児に投与した塩化ナトリウムの濃度と投与速度を比較して、神経学的な予後に違いはあったかどうかグラスゴーコーマスケールおよび臨床的な判断をもとに検討しています。

結果としては、塩化ナトリウムの投与濃度(0.45%または0.9%)と投与速度で治療後の神経学的な予後に違いを認めませんでした。


photo by pixabay

今回の研究からは、糖尿病性ケトアシドーシスをみとめたら、とりあえず、血中のカリウム濃度をみながら一定濃度の塩化ナトリウム水溶液を普通の速度で投与するのがよさそうですね。

医学では、当たり前に治療されている病気でもまだまだわかっていないことがたくさんありますし、わかっていることでもまた新たな研究で覆されることもあります。当サイトでは、このような新たな研究や知見を紹介していきます。

 

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