DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)説とは 概略と今後への課題

妊娠中の母親の栄養状態が、生まれた子供の成長後の疾患に強いかかわりがあることが知られていて、それをDOHaD説といいます。


写真はイメージです。 photo by pixabay

この説が提唱されるきっかけに、第2次世界大戦が関わっています。

 

オランダ飢饉をきっかけに

第2次世界大戦の終わりごろ、後退するドイツ軍の影響で交通路と食料の輸送が遮断され、また記録的な寒さが重なり、オランダでは、オランダ飢饉とよばれるひどい食糧難に陥りました。

住民の1日の摂取カロリーは、標準から半分から3分の1ほどに落ち込みました。

終戦とともに、食糧の供給は回復したものの、この飢饉を経験した母親から生まれた子供は、出生時の体重が小さく、成人後におこなわれた徴兵制度のための身体検査で肥満の割合が著しく高いことがあきらかになりました。

バーカー仮説へ

こうした経過をもとに、イギリスで、生まれたときに身体の小さい低出生体重児の追跡調査をおこなったところ、そうでない子どもにくらべて、高血圧、糖尿病、肥満、心臓の病気にかかりやすいことがわかりました。


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これらの研究から、低出生体重児では成人病リスクが高くなることがわかり、研究者の名前からバーカー仮説と呼ばれています。

原因としては、身体の小さいなか、少ない栄養をもとになんとか節約・倹約してうまれてきたものの、その後十分に栄養が取れるようになってくると余分な栄養を蓄積しやすくなり、成人病におちいりやすくなっているのではないかと考えられています。

日本における若年女性のエネルギー摂取の不足・過剰

日本でも20-30歳代の女性のBMIは一貫して減少を続けて言います。2013年に浜松市の妊婦におこなわれた研究では、妊婦の平均摂取エネルギーは、妊娠期間を通じて1日1600キロカロリーに満たず、厚生労働省の推奨摂取エネルギー量を大幅に下回っています。

日本人女性のやせ願望が、うまれてくる子どもに十分な栄養を与えられない環境を作っているのではないかと懸念されています。

またいっぽうで、妊娠時に糖尿病を合併した妊婦から生まれた子どもは、メタボリックシンドロームを発症するリスクが高くなる可能性が指摘されています。

先制医療で早期の介入を

生まれる前から、成人になる発達過程で、将来の病気が決まってくるのではないかと考え方に対して、それらの原因を解明して、早期から医療的な介入を行っていこうという考え方が最近注目されている「先制医療」です。


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「先制医療」を実現するためには、具体的にどのようなことが、疾患の原因になっているのか、そのメカニズムを解明し、どのように介入していくのか研究していくことが必要になってきます。

いままでの、病気になるまで待機する医療ではなく、新たな医療の形が提唱されつつあります。

 

 

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