バイオ事業大手のタカラバイオ株式会社 今後、注目されるのはタカラバイオが手掛ける遺伝子医療か?

2018年12月にキノコ生産大手の「雪国まいたけ」がタカラバイオ株式会社のキノコ事業を買収することを発表しました。タカラバイオのキノコ事業は「ホンシメジ」の国内シェアのほぼ100%を誇っています。 タカラバイオは、宝ホールディング株式会社(旧:寳酒造株式会社)の傘下の会社のひとつです。事業内容の柱は「バイオ産業支援、医食品バイオ事業、遺伝子医療」です。 医薬品バイオ事業ではキノコ事業と健康食品事業を展開しています。親会社の宝ホールディングスは、来年1月に健康食品事業も塩野義製薬の子会社に譲渡することを決定しています。 ※宝ホールディングス株式会社の傘下にはタカラバイオ以外に、「マザービジネスとして焼酎や清酒などでおなじみの宝酒造株式会社、海外へ和食文化を展開する宝酒造インターナショナル株式会社」などをはじめとして多くの会社があります。 医薬品バイオ事業を手放すことで「バイオ産業支援、遺伝子医療」に特化して事業を充実させることを目指しています。 [タカラバイオはどんな会社なの] タカラバイオは、1968年に旧寳酒造株式会社(現:宝ホールディング株式会社)のバイオテクノロジー(生物工学)事業としてスタート。工学研究用試薬「制限酵素」を発売、PCR法による遺伝子増幅システムの国内独占販売権を取得しています。 1993年に中国に海外拠点を設立し、以降、フランス、韓国、アメリカ、インド、スウェーデンに海外拠点を設立しています。 1995年に造血幹細胞への高効率遺伝子導入法「レトロネクチン法」を開発。2002年に寳酒造株式会社の分社化に伴いタカラバイオ株式会社が設立されました。 2004年に東京証券取引所マザーズに株式を上場、2016年に東京証券取引所マザーズから同市場第一部へ市場変更しました。 レトロネクチン法は、アメリカのインディアナ大学と共同開発したもので造血幹細胞などの血球系細胞へ効率よく遺伝子を導入する技術です。 遺伝子医療のひとつである患者さんのリンパ球を取り出して体外で治療用遺伝子を導入してふたたび患者さんに投与する遺伝子改変T細胞療法(Engineered Continue Reading ->

独自のビジネスモデルを展開するシンバイオ製薬 主力製品のトレアキシンとリゴセルチブとは

シンバイオ製薬株式会社の株価が5月に200円台につけてから150円台前後まで下落して低調が続いていましたが、10月に入って200円後半台で高騰、その後に200円台を割り下落、11月に200円台に戻して12月に入ってから再び200円台後半まで上がりました。現在は200円前後で推移しています。 株価の乱高下が激しいシンバイオ製薬は自社の開発拠点や工場を持たずに新薬を提供するビジネスモデルのバイオベンチャー企業です。どのような製薬会社なのかみていきましょう。 [シンバイオ製薬が展開するビジネスモデルとは] シンバイオ製薬は2005年設立、治療が困難とされるような「がん、血液、自己免疫疾患」をターゲットに自社開発や生産を行わずに、他社が開発中の新薬候補を導入して上市を目指すビジネスモデルに展開しています。 導入にさいしては、ターゲットとなる候補を海外ですでに承認されているものや薬効と安全性指標(プルーフ・オブ・コンセプト-POC-)をクリアしている新薬候補を世界中から探索します。これをシンバイオ製薬の吉田社長は「世界中が研究拠点」と述べています。 いままで対象となったものは約1200件に及びます。その中から厳しい導入判断をおこない最終候補となったのは10品目未満です。 導入されたものは臨床開発部隊が上市までの開発戦略を立案した上で治験をおこなっていきます。治験のプロセスの中でシンバイオ製薬がおもに行うのはデータ収集、解析、マネージメントで最短期間での上市を目指します。 現在、シンバイオ製薬の主力製品と展開しているのが「トレアキシン(ベンダムスチン)」です。 トレアキシンは、シンバイオ製薬がドイツのアステラスドイッチラント社から独占的開発、販売に関するライセンス契約を得たものです。日本以外に中国、韓国、台湾、シンガポールに関しての契約を取得しています。 シンバイオ製薬の資産状況は 資本金107億6千万円、総資産額42億5千万、自己資本27億円、有利子負債0円。2017年12月期の売上高は34億4千万円、経常利益は▲39億7千万円、今年度の予想売上高は42億円、経常利益▲30億4千万円です。時価総額は16,0億8800万円です。 直近5年間の売上高は右肩上がり、経常利益はマイナスが続いています。現在、2つのパイプラインを保持、さらに2品目まで増やしたうえで本格成長に向けた事業基盤の構築を目指しています。 [シンバイオ製薬の柱であるトレアキシン] -トレアキシンは血液がんの化学療法剤です- 「トレアキシン」は、2010年10月に「再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫」、2016年8月に「慢性リンパ性白血病」、2016年12月に「未治療低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫」が適応症として承認された化学療法剤です。 非ホジキンリンパ腫は悪性リンパ種のひとつです。リンパ球ががん化して無制限に増殖してさまざまな部位のリンパ節やリンパ組織に腫れやしこりを作ります。 一部のウィルスとの関連性があるものを除いて多くは原因不明の疾患です。治療は分子標的薬と化学療法剤を使った薬物療法、放射線療法、造血細胞移植などが行われます。 悪性リンパ種は、毎年10万人あたり約15人から20人程度が発症しているといわれ、患者数は約30000人程度といわれています。悪性リンパ種は、大きく「ホジキンリンパ腫(HL)」と「非ホジキンリンパ腫(NHL)」に分けられます。日本において患者数の90%は非ホジキンリンパ腫です。 非ホジキンリンパ腫はがん化するリンパ球の種類、リンパ腫の形、悪性度などに応じてさまざま種類に分けられます。低悪性度ホジキンリンパ腫は、初期治療によって寛解がすることが多い反面、再発を繰り返すことも多く完治する症例が少ないことが知られています。 ※トレアキシンが適応となる非ホジキンリンパ腫は「小リンパ球性リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、MALT関連節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫」です。 マントル細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫のひとつでリンパ節内のマントルという部分にあるリンパ球の中のB細胞ががん化したものです。 発症頻度は低く、悪性リンパ腫のなかでも3%程度です。月単位で病状が進行していき薬物療法で治癒をすることがむずかしく標準治療法は確立されていません。 トレアキシンは、がん細胞の中にあるDNAに結合することでがん細胞の複製反応を阻害してがん細胞死(アポトーシス)を引き起こしてがん細胞の増殖を抑制する効果があります。 抗CD20抗体医薬品である「リキツマシブ」もしくは「ガザイバ」と併用して用いられます。非ホジキンリンパ腫の標準療法のひとつとなっています。 ※抗CD20抗体医薬品とは「CD20」と結合してがん細胞を死滅させる効果がある分子標的剤です。CD20はB細胞上に存在するB細胞を活性化させる抗体です。悪性リンパ腫ではB細胞が活発に活動することでCD20が高度に出現し、がん化したB細胞の活性化や増殖などが促進されます。 トレアキシンは、2008年に日本における共同開発と販売に関するライセンス契約をエーザイと締結、販売はエーザイがおこなってきましたが、2020年にエーザイとの販売契約が終了予定で2021年からは自社販売へと切り替えます。 -トレアキシンの今後の方向性は- トレアキシンの適応範囲を広げるために、再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫について臨床試験第III相中、凍結乾燥剤である現在のトレアキシンを病院で溶かす必要がなく扱いやすいようにした新剤形RTD液剤を2021年上半期販売に向けて申請準備中、点滴投与時間が従来の60分から10分になる新剤形RI液剤の臨床試験II相が完了しています。 RI液剤については、いままでの承認されている適応疾患に加えて「再発・難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ種」も対象にしています。 ※びまん性大細胞型B細胞性リンパ種は、悪性リンパ腫の中で30%以上と患者数がもっとも多く中悪性度に属しており比較的進行が早いことが知られています。化学療法や放射線療法に対する反応よく治療効果が上がれば完治が望まれるといわれています。 トレアキシンについては、非ホジキンリンパ腫だけではなく進行性固形がんの臨床試験第I相開始、全身性エリトマドーデスの臨床試験準備中です。 [もうひとつのパイプラインのリゴセルチブ] シンバイオ製薬が持っているもうひとつパイプラインは、アメリカのオンコノバ社の「リゴセルチブ」の「骨髄異形成症候群(MDS)」の治療薬です。日本と韓国における独占的開発権および販売権を取得していて注射剤と経口剤の承認取得を目指しています。 オンコノバ社が注射剤における「再発性・難治性高リスク骨髄異形成症候群」を日本も参画して国際共同第III相試験を実施継続中、経口剤については病態によって準備中から臨床治験第I相準備中の段階です。 骨髄異形成症候群は、「赤血球、血小板、白血球」の血液細胞の大もとになる造血幹細胞の遺伝子が傷つき血球がうまく作れなくなる疾患です。原因は不明で血液細胞が減少することから貧血、感染症にかかりやすくなる、出血しやすいなどさまざまな症状があらわれます。 予後不良で急性骨髄性白血病に移行する場合があります。このことから前白血病状態と呼ばれることがあります。 国内での患者数は推定で約15000人程度と推測されていますが、ほかの病気や高齢が原因となる貧血などと判別がむずかしい場合があって見逃されている軽症者がいるだろうといわれています。 リゴセルチブは、がん関連遺伝子産物の作用を阻害することで、がん細胞の生存や増殖に必要な細胞内シグナルの伝達を抑制してがん細胞を死滅させる新たな作用機序を有する分子標的薬です。 骨髄異形成症候群に対する薬物治療は日本新薬の「ビダーザ」に限られています。臨床試験ではリゴサチブ経口剤とビダーザの併用療法で完全寛解が認められた症例が報告されています。 オンコノバ社の臨床試験結果をみながら注射剤については2019年度中に臨床試験完了を目指しています。将来的には固形がんへの適応を進める予定です。 シンバイオ製薬は、患者数が少なく専門性も高いために治療薬が限られているような「がん、血液、自己免疫疾患」の分野をターゲットにしています。ニーズは高いのですが大手製薬企業が採算性などの面から手を出しにくい空白領域といわれています。 また、パイプラインとなっているトレアキシンとリゴセルチブの対象疾患は高齢者に多くみられるもので、年々、患者数が増加しています。高齢者社会が加速している現代において重要なものになっていくと考えられます。 このような空白領域を埋めるような新しい治療薬が出てくることは病気に苦しんでいる患者さんにとってひとつの朗報になるのではないでしょうか。   Continue Reading ->

2018年12月上場予定のインターメディア事業の「ポート社」 展開している医師監修の「オンラインクリニック」とは

インターネットメディア事業を展開する「ポート株式会社」が2018年12月21日にあらたに上場します。ポート社は特定の領域に特化した「バーティカルメディア」を運営しています。 バーティカルメディアとは、バーティカルが「垂直」と意味をあらわすように特定なコンテンツに対して、ターゲットを明確にして特化することでより深い情報を提供するサービスのことで、専門的に細かなユーザーのニーズに応えるようしたものです。日本語では「特化型メディア」といいます。 おなじようなサービスで「キュレーションメディア」がありますが、キューレーションメディアは横断的に広く浅い情報をまとめという形で提供しているのに対して、それ以上に深い情報を知りたいというユーザーのニーズに応えたものがバーティカルメディアです。 ポート社が展開しているサービスは大きく3つのコンテンツをメインとしています。 [ポート社はどのような会社なの] ポート社は、2011年4月に人材採用支援事業を目的として「株式会社ソーシャルリクルーティング」として設立され、2015年に現社名へ商号変更しました。 ポート社は「世界中にアタリマエとシアワセを」というミッションのもとに、「あったらいいな」ではなく「なくてはならない」を創造することで社会課題を解決できる会社を目指し、インターネットメディア事業を展開しています。 その展開の方法は、ユーザーが日常生活の中で抱える悩みや疑問に対してノウハウを提供する仕組みになります。 常にユーザーが求める情報を提供することで、ユーザーとの関係性の構築やユーザーが求める情報を分析することで新たな情報の提供をしています。 ポート社は、これらを実現するために大きく3つのコンテンツを柱としています。 ◇キャリアパーク 就活、転職、雇用などを中心としたキャリア系情報サイト。ユーザーに対して就職や転職等に関するノウハウの提供、求人情報や就職・転職情報を掲載することでキャリア選択を支援しています。 ◇マネット お金に関するライフサポート型サイト。資産運用やローンなどユーザーが関心の高い分野を弁護士、ファイナンシャルプランナー、金融機関OBなどの専門家が監修。専門家の十分な監修を経た「増やす、借りる、貯める」などのノウハウの提供をおこなっています。 ◇オンラインクリニック 医師や看護師といった医療従事者と医療分野に詳しい弁護士が、正しい病気の知識の基礎知識から対処法や予防法まで誰にでもわかりやすく提供している医療情報サイト。 3つのコンテンツから派生するかたちで、以下の3つのサイトを運用しています。 ◇キャリアパックエージェント 新卒者を対象にした就活における書類選考や面接などの相談やアドバイスをおこなって個人ごとにマッチする企業紹介を行うことで就職できるようにサポート。 ◇ポートメディカル テレビ電話、メール、チャットを通じて医師の診療から薬の処方、決済、薬の配送までをカバーする遠隔診療メディア。 ◇ドクターズ・ダイエット スマホの専用アプリを利用して医師、管理栄養士、看護師、理学療法士などのチームがサポートしてユーザーのダイエットを目指します。ユーザー一人ごとにチームで対応。 展開しているコンテンツのひとつであるオンラインクリニックについて少し詳しくみていきましょう。 [ポート社が展開するオンラインクリニックとは] ネット上には、さまざまな医療情報が蔓延しています。以前、問題になった医療系情報サイトがありますよね。 オンラインクリニックが提供する医療記事の特徴は、記事の作成は医師もしくは看護師がおこない「官公庁、研究期間、教育機関、各種論文、学会発表」など信頼性の高くかつ最新ものから正確な医療情報を提供しています。記事ごとに医療情報の出典元も示されているので参考にすることが可能です。 医療情報以外にも、病気は普段の生活にも密接に関わっている考えから病気に関連した生活情報の提供もしています。 作成された記事は、記事作成者以外の医療従事者がチェックを行うとともに、医療従事者ではないメンバーが一般ユーザーの立場からわかりやすいかを検証、医療従事者が最終チェックを行ったうえで記事が公開されます。 正確でわかりやすい記事によって、ユーザーが健康な日々を送れるようにという思いが込められています。 医療の世界は日進月歩です。そのために、公開後も医療従事者が適宜修正や加筆をおこなって医療情報を最新のものに保つようにしています。 記事の中で使用されているイラストはすべてオリジナルで医療記事と同じように扱われています。 また、医学的な監修だけでなく弁護士によって、記事内容が医療関連法規に抵触していないかなど法律的な側面からもチェックされています。 オンラインクリニックでは、わたしたちの普段の生活に関わる生活習慣病などを中心として以下の項目について情報を絞った形で提供しています。 〇生活習慣病:高血圧、糖尿病、生活習慣病、高尿酸血症、禁煙 〇皮膚疾患:AGA(男性型脱毛症)、脱毛症、性感染症 記事はポイントとなる点をあげながら、そのポイントを説明する形で構成されていています。豊富なイラストを用いて見やすさを重視する形で作られています。 ひとつひとつの記事が長めの構成になっているのでじっくりと読むようになっています。特定の分野に特化した確度の高い記事ということから考えて必要なことでしょう。 記事以外に、「高血圧と脱毛症」については専門医師に質問することが可能です。専門医による非常に詳しい回答をえることができます。 ほかには、健康チックツールとして「心臓発作危険度チェック、脱毛症診断チェック、高血圧発症率チェック」を提供しています。チェックの出典の根拠があきらかで細かい入力項目になっていているので参考になるのではないでしょうか。 このように専門家の厳しい監修の中で作られているオンラインクリニックは、ネット上でさまざまな情報が錯綜している中で好ましいものといえるでしょう。今後はコンテンツ内の拡充が望まれるところですね。 ポート社の売上高、経常利益、時価総額は ポート社の平成30年度の売上高は19億3100万円、経常利益は▲1億3600万円です。平成31年度は売上高13億4800万円、経常利益は黒字に転じて2億3100万円と見込んでいます。経常利益は平成30年度まで4期連続の赤字でしたが、売上高は概ね右肩上がりに推移してきています。 平成30年度の総資産額は12億9100万円(純総資産額5億2000万円)、平成31年度の総資産額は14億6700万円(純総資産額7億1400万円)と見込んでいます。想定される時価総額は約160億円です。 Continue Reading ->

武田薬品工業がシャイア―社を合併へ 希少疾患の大手リーディングカンパニーである「シャイア―社」とは

2018年5月に、武田薬品工業はアイルランドの製薬会社大手の「シャイアー社」を買収することで合意したと発表、10月18日には、日本公正取引委員会から独占禁止法上問題ないとする承認を取得したと発表がありました。 武田薬品は、すでにアメリカと中国でも同様の承認を取得しています。残るヨーロッパについては、近々に当局の判断がでるとされています。今後は、12月5日の臨時株主総会での同意を得た上で正式な買収手続きがスタートする予定です。 武田薬品のシャイアー社の買収金額は約6兆8千億円という大型買収です。 今回の買収で、武田薬品のクリストフ・ウェバー社長兼CEOは「研究開発型グローバルバイオ医薬品企業のリーディングカンパニーとなることがビジョン」、「買収によって年間4000億円以上の研究開発投資可能になることで、売上高では世界の製薬企業のトップ10入りを果たせる」と説明しています。 ※現在、武田薬品の売上高は国内で1位、世界で16位です。 武田薬品が買収をすすめている「シャイア―社」はどのような会社なのでしょうか。 [シャイア―社とは] -シャイアー社は4人ではじめたベンチャー企業- シャイア―社の設立は1986年。創業者は4人ではじめたベンチャー企業です。最初に開発したのは骨粗鬆症の医薬品でした。 当初の本社はイギリスのベイジングストークはおかれていましたが、2008年にアイルランドのダブリンに移転。現在では世界各国で事業を展開、従業員数は23000人の大きな企業です。 シャイアーが得意としているのが希少疾患に関する医薬品の開発や製造です。その研究および開発能力は世界でもトップクラスの力を持っているといわれています。「自社販売、アウトライセンス、提携」の3つのチャンネルで事業を展開しています。 2017年12月度のシャイア―社の売上高は約1兆6500億円、純利益は約4600億円と急成長を遂げてきた会社です。武田薬品の2017年3月度の売上高は約1兆7300億円、当期純利益約1150億円です。武田薬品より大きな収益力を持っています。 -シャイアー社の歴史はM&A- ベンチャー企業であるシャイアー社が急成長を遂げていった原動力となったのが積極的なM&Aです。 シャイアー社がM&Aに費やした金額は主なものだけで6兆円を超えています。 最初の買収1997年で、アメリカの徐放性ドラッグデリバリー製品のファーマビン社とADHD治療薬のリッチウッド・ファーマシューティカル社を買収。 2000年代に入ってからは、ADHD治療薬のカナダのバイオケム・ファーマシューティカル社、リソソーム蓄積疾患治療薬を持つアメリカのトランスカリオティック・セラピーズ社、ADHD治療薬のアメリカのニューリバー・ファーマスーティカルズ社、遺伝性血管性浮腫治療薬のドイツのジェリニ社など設立から20年にわたって20社以上を傘下に収めています。 トランスカリオティック・セラピーズ社を買収したことで、生物学的製剤の開発へ進出して希少疾患の開発に注力するようになりました。 2013年には、慢性便秘治療薬のベルギーの消化器系創薬メーカー・モベティス社、培養皮膚を供給する再生細胞メーカーのアメリカのアドバンスド・バイオヒーリング社、輸血による鉄過剰治療薬を開発するアメリカのフェロキン・バイオサイエンス社、表皮水疱症など皮膚病治療の補充療法技術を持つアメリカのロータスティシューリペア社、眼科用バイオ医薬品会社のアメリカのSARコード・バイオサイエンス社、サイトメガロウイルスやC型肝炎ウイルス感染治療薬のアメリカのバイロファーマー社を1年間で一気に買収。 その後も、短腸症候群や副甲状腺機能低下症などの治療剤を手がけるアメリカのNPSファーマシューティカルズ、血液製剤大手であるアメリカのバクスアルタ社を次々と買収。「血液、免疫、腫瘍」といった治療分野への進出を遂げていいます。 シャイアー社は日本の拠点を2013年に設立、日本においてシャイア―社が展開している治療薬は「本態性血小板血症、ゴーシェ病、ADHD、遺伝性血管性浮腫、血友病A、血友病B、無ガンマグロブリン血症および重症感染症」です。 日本で展開している治療薬は一部のもので、日本で承認されていない治療薬、ほかの製薬メーカーへライセンス販売している治療薬など「消化器系疾患、精神神経系疾患、希少疾患、血漿分画製剤」にさまざまなラインナップを持っています。 -豊富なパイプラインを持つシャイアー社- シャイアー社は、第I相臨床試験から承認審査中のものまで含めると約40本の豊富なパイプラインを抱えています。パイプラインとは一言でいうと新薬候補の事で、多くのパイプラインを持っている会社が規模の大きさの指標になると言われています。 約40本のパイプラインのなかで、製品化が見込まれる第III相臨床試験以降のものだけで20本以上あります。それに対して武田製薬のパイプラインは35本で第III相臨床試験以降は14本となっています。 第I相臨床試験から第II相臨床試験のものとして「異染性白質ジストロフィー、ハンター症候群、副甲状腺機能低下症、緑内障、小細胞肺がん、慢性肺疾患、痙攣発作、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、非アルコール性脂肪性肝炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、膵がん」など。 第III相臨床試験以降ものとして「ハンター症候群、抗体関連拒絶反応、移植患者のサイトメガロウイルス感染症、好酸球性食道炎、成人短腸症候群、小児短腸症候群、感染性結膜炎、潰瘍性大腸炎、先天性血栓性血小板減少性紫斑病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロニューロパチー、小児一次免疫不全、慢性特発性便秘、ドライアイ、急性リンパ芽球性白血病、フォンヴィルブラント病」など。 普段は耳にしないような疾患も多く含まれていますよね。シャイア―社が「血液系希少疾患、神経系希少疾患、消化器系疾患、眼科系疾患」などに力を入れているのがわかります。武田製薬は「がん、消化器系疾患、神経精神系疾患」などに力を入れています。 [今後はどうなるの] 武田製薬の時価総額は約3兆6000億円です。武田製薬の時価総額の倍近い6兆8千億円でシャイアー社を買収するのはなかなか考えられる事ではありません。どのような利点が得られるのでしょうか。 武田製薬はシャイアー社を買収することによって、武田薬品が従来から力も入れていた消化器系疾患や神神経精神系疾患の領域が強化され、希少疾患や血漿分画製剤においてグローバルな規模のリーディングカンパニーとなることを目指しています。 シャイア―社の多くの製品化の期待ができるパイプラインを一挙に得られることは、新薬開発が抱える多額の開発費や製品化できないといったリスクの問題も一気に解決できることが考えられます。 シャイア―社が持っている販売網も併せて獲得することができ、武田製薬の販売網も大きく広がり、日本を拠点としたグローバル企業のひとつとして成長してくことが期待されています。 武田薬品のクリストフ・ウェバー社長兼CEOは「シャイアー社の高度に補完的なポートフォリオとパイプライン、さらには経験豊富な研究員が加わることで、強く当社の変革が加速します。統合後の会社は消化器系疾患領域、神経精神疾患領域、がん領域、希少疾患領域、血漿分画製剤におけるリーディングカンパニーとなり世界中の患者さんに利益がもたらされるでしょう」と述べています。 シャイアー社のスーザン・キルスビー会長は、「当社は、過去30年にわたり希少疾患治療のグローバルリーダーであり革新的な医薬品をお届けしてきました。今回の統合は、さらに強靭な豊富な研究開発パイプラインと世界各地に広範な拠点を有するバイオ医薬品企業誕生の一翼を担うことになります。社会の皆さんに最良の結果をもたらすものと確信しています」と述べています。 今回の買収については、武田製薬がシャイアー社の負債2兆円超を背負うことになること(シャイア―社の買収費用など含めた負債は合計で約6兆円になります)、希少疾患などといった分野の競争が激しいことや将来性はどうなのかなど不安材料があるといわれています。 武田薬品の社長兼CEOとシャイア―社会長の述べている通りに、今回の統合でさまざまな疾患で苦しんでいる患者さんに最良の結果や利益がもたらされることがもっとも望まれることではないでしょうか。今後の動きが注目されますよね。   Continue Reading ->